新潮文庫メールマガジン アーカイブス
今月の1冊



 Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。

 このたび刊行された宮部みゆきさんの新潮文庫『英雄の書』は、アニメでもおなじみの『ブレイブ・ストーリー』に連なる壮大なダーク・ファンタジーです。『ブレイブ・ストーリー』では男の子が主人公でしたが、こちらは小学5年生の女の子・森崎友理子が主人公。

 ある日、兄の大樹が同級生を殺傷し、行方をくらましてしまう。あの人気者のお兄ちゃんが人を刺すなんて……信じられない現実に直面し、友理子は途方に暮れる。そんな矢先、彼女は兄の部屋で赤い本の囁き声を聞いたのです。
 死んだ大叔父の別荘から、兄によって持ち出されたその本は言う。あらゆる物語の源泉である〈無名の地〉に封印されていた〈英雄〉を、兄・大樹が召還してしまった。そして、もっとも美しく尊い物語である〈英雄〉と表裏一体をなす、〈黄衣の王〉に大樹は取り憑かれ、そのせいで事件を起こしたと。

 こう書いてしまうと、何やら難しい用語が多くて読みにくい本のような気がするかもしれませんが、決してそんなことはありません。絶妙のストーリーテリングに導かれ物語の世界へ入り込むと、いつの間にかページを繰る手が止まらなくなっているのです。

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2012年07月10日   今月の1冊

 Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。

 たとえば10年前のテレビと最新のテレビが同じ値段で売られていたら、皆さんはどちらを選びますか?
 たぶんお尋ねするまでもなく、最新の製品を選びますよね。家電に限らず、商品の機能やデザインは日進月歩していますから。

 では本の場合はどうでしょう。「昔の小説より今の小説の方が必ず優れている」とは言えません。あるいは「今のノンフィクションの方が、昔のものより真相を衝いている」とも言い切れません。むしろ時代を超え、多くの読者に吟味され残っていること自体、良作の証ではないでしょうか。

 しかし、いざ書店で棚の前に立つと、平積みされた最新作と比べ、棚に並ぶ既刊本には手を伸ばしにくいのが現実です。タイトルと著者名だけで作品の良さは計りかねます。既刊本へ手を伸ばすには、何らかの「きっかけ」が必要ではないでしょうか。

 ところが特定の既刊本が全国の書店から一斉になくなり、注文が殺到することがあるのです。そういうときに原因を調べると、テレビ番組でその本が取り上げられているケースが往々にしてあります。

 果たしてどのような番組をきっかけに既刊本は再び注目を浴びるのか。新潮文庫の事例をご紹介したいと思います。

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2012年06月11日   今月の1冊


 Yonda?Mail購読者の皆さん。ゴールデン・ウィークは、満喫されましたでしょうか。東京では新緑が目映く、ハナミズキが満開です。これから見頃の花を愛で、思いのほか広い日本をたまにはじっくり旅してみるのもいいものです。そんな気持ちを誘う小説『ロスト・トレイン』(中村弦)をご紹介します。

「日本のどこかに、誰も知らない廃線跡がある。それを最初から最後までたどると、ある奇跡が起こる」。主人公の牧村は、奥多摩の廃線跡で出会った鉄道マニアの平間老人と、世代を超えて酒を酌み交わす仲になる。だが、吉祥寺の居酒屋〈ぷらっとほーむ〉で、まぼろしの廃線跡の話をしてほどなく、老人は消息を絶ってしまう。牧村は、彼を慕う〈テツ〉仲間の菜月と共に、その足跡を追って東北へと向かう。そこで、二人が見たものとは──。

 2008年、『天使の歩廊―ある建築家をめぐる物語―』で、「日本ファンタジーノベル大賞」大賞を受賞、デビューした中村弦さんの2作目となります。

 この小説は、次々に違う貌を見せる不思議な物語です。あらすじにも記したとおり、鉄道マニアの25歳の若者と62歳の老人との出会いから始まる。〈テツ〉でなければ置いてきぼりを食らうのではないかと躊躇するが、さにあらず。オタクの琴線をくすぐるキーワードをちりばめながらも、世代を超えた人間同士の繋がりに進んでいく。

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2012年05月10日   今月の1冊



 Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。

 Google検索ボックスに“なつめろ”と入力したら、検索候補に“懐メロ 90年代”と出てびっくりしました。90年代ってついこないだのように思っていたのに。世間的にはもう懐メロなのですね。まさに十年一昔。

 しかし10年、20年と時が過ぎても価値を減ずることなく、それどころか新たな世代をも魅了する懐メロもあると思うのです。たとえば昨年、海外から人気に火がついた、由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」のように。

 80年代から90年代初頭のいわゆるバブルの時代、華やかな世相を背景に数多くのヒット曲が生まれました。それらの中でもひときわ輝きを放つ名曲を生み出し、時代を駆け抜けた一人のミュージシャンがいます。

 その名は尾崎豊。30、40代の方にはいまさら説明する必要もないスーパースターでしょう。「I LOVE YOU」「OH MY LITTLE GIRL」「卒業」などの名曲は、今なお多くの日本人の心を捉えて離さない、まさに永遠のスタンダードです。

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2012年04月10日   今月の1冊


 Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。

 突然ですが、皆さんは政治家に興味がありますか?

 たぶん大多数の人が自分とは無縁、まるで違う世界の住人のように思っているのではないでしょうか。そもそも選挙期間以外にご尊顔を拝見する機会もなく、普段は何をしているのかさっぱり? ましてやその秘書やスタッフにおいてをや、という感じではないですか。

 今月ご紹介する『アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿―』の主人公佐倉聖くんは、その政治の世界に身を置く大学生です。彼が中学生の弟を養うため仕えているのは、引退してもなお政界に大きな影響力を持つ大堂剛。未だに多くの政治家の後見人を務める大堂の下には、ありとあらゆる難問珍問が持ち込まれます。
 そのトラブルシューターとしていろんな選挙区へ派遣されるのが、弱冠21歳の主人公佐倉聖くん。だから彼の視界には、政治家やその秘書、事務所のスタッフ、ボランティアなど、私たちがよく知らない政治の世界の住人たちが映っているのです。

 海千山千の政界の住人を手玉に取り、次々と難題を解決する佐倉聖くんの活躍は本編のお楽しみ。ということで、『アコギなのかリッパなのか』に描かれた政治の世界について、著者の畠中恵さんにお伺いしてみました。

――『アコギなのかリッパなのか』をお書きになる前から、そもそも政治家や政治の世界に興味をお持ちだったのでしょうか。

畠中:政治に興味津々ということは、ありませんでした。
このお話のきっかけになったのは、近所で行われていた、地方選挙かな、と思います。
選挙期間中は、近くの商店街に選挙事務所が出来、旗を持った人達が、練り歩いてました。沢山の選挙カーも、窓の下を通って行きます。
ですが、選挙が終わると次の選挙まで、「はて、国政ではなし、何をしているのかな?」 私にはよく分かりませんでした。その疑問が、発端でしょうか。

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2012年03月12日   今月の1冊