この街は最低で最高だ──。日本一の歓楽街・歌舞伎町。そこで濃密に生きる人々に迫った深淵を覗くルポルタージュ。
「この街には欲望を満たすものが全て揃っている」これは著者の本橋信宏さんが本文の中で、そして担当編集者と歌舞伎町を巡っているときにも発した言葉です。「全て」という言葉に誇張を感じるかもしれませんが、その疑念は本作を読むうちに払拭されます。それほどまでに魅惑的でカオスで常識外の出来事が日常茶飯事で起こる街なのです。
本作は歌舞伎町という場所の成り立ちから、現在のトレンドまで、歴史を押さえながら、街を揺るがした大きな事件や深い闇に迫っていきます。44人もの死者を出した〈歌舞伎町ビル火災〉や未解決の〈歌舞伎町ディスコ殺人事件〉の裏側、抜け出せない違法カジノの実態、悪の代名詞となった「ぼったくりバー」の帝王の正体、かつて運び屋として捕まり、現在は暴力団に昼間店を貸しているスナックのママ、胸に代紋を入れた十代の少年ヤクザのその後、日本最大のホストクラブ密集地帯でしのぎを削るホストの本音、ヒットマンとして潜伏した現役ヤクザの生活、喧嘩に明け暮れた元ホストの人生、密売された無修正裏DVDの秘密、客が吸い寄せられる美しいキャバクラ嬢のリアル......。簡単には知ることのできないアンダーグラウンドの世界を全て知ることが出来る一冊になりました。
また新潮文庫では同じ「アンダーグラウンド」シリーズである『上野アンダーグラウンド』を刊行中です。動物園や美術館などの文化的で華やかなイメージとは裏腹に、その数百メートル先にはカオスで魔境ともいえるべき土地が眠っていました。こちらもぜひ合わせてお楽しみください。
2026年05月15日 今月の1冊

































