『このホラーがすごい! 2024年版』(宝島社)国内編の第1位を獲得した、小田雅久仁さんの『禍』が文庫になりました。目、耳、鼻、口など、身体のパーツをモチーフにした7つの短編が収録されています。怪奇小説の新しい領域に踏み込んだ傑作です。
小田雅久仁さんは2009年、『増大派に告ぐ』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2013年、『本にだって雄と雌があります』でTwitter文学賞国内編第1位に輝きました。2022年に『残月記』で吉川英治文学新人賞、翌年に日本SF大賞を受賞。『禍』はそれらに続く4冊目の単著となり、2024年『このホラーがすごい! 2024年版』国内編で第1位を獲得しました(同点1位は背筋さんの『近畿地方のある場所について』)。寡作ながらすべてが傑作で、どれもが高い評価を得ています。文庫版の巻末に収録されている大森望さんの解説も、以下のように始まります。
まったく、寡作にもほどがある。
たいていの小田雅久仁ファンは、ためいきと一緒にそうつぶやいているのではないか。日本ファンタジーノベル大賞を受賞したデビュー作『増大派に告ぐ』の刊行は二〇〇九年十一月。それから十六年以上も経つというのに、単著の数はわずかに四冊。いくらなんでも少なすぎる。現役の日本人作家でトップレベルのヴィジョナリーであり、圧倒的な文章力を誇るファンタジストである以上、その才能をもうちょっと世間に知らしめる努力をしてもバチは当たらないんじゃないか。
......と愚痴を言いたくなるほど本が出ないにもかかわらず、小田雅久仁の名が忘れられることなくいまも熱心に読まれつづけ、新刊が出るたびになんらかの賞に輝いていることを思うと、日本の出版界もまだまだ捨てたもんじゃないと言うべきかもしれない。(『禍』解説より)
『禍』は、1編ごとに異なる身体のパーツをモチーフにした怪奇小説集です。
「食書」では口、「耳もぐり」では耳、「喪色記」では目、「柔らかなところへ帰る」では肉(贅肉)、「農場」では鼻、「髪禍」では髪の毛、「裸婦と裸夫」では肌。人体の部位から驚くような奇想が生み出され、まだ見ぬ世界へと読者をいざないます。
怖く、恐ろしいのはもちろんのこと、人生を踏み外し、どこにも行き場がなくなってしまった人物が、新しい世界へと旅立っていく、それは身震いするような恐怖であると同時に、恍惚でもある。恐るべき奥行きを備えています。小田さんが見い出し、そして完璧な形で描き出した、怪奇小説の未踏領域に、ぜひご来臨ください。

































