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その美しい男の正体を、決して知ろうとしてはいけない。あなたも戻れなくなるのだから──。


「芦花公園」という作家をご存じでしょうか。
 正体も性別も不明のまま2021年にデビューするやいなや、令和のホラー界を騒がす鬼才として次々と新作を発表。静かな筆致で人間の奥底を抉る作風は、いま最も注目すべき新世代ホラーと言えるでしょう。

 芦花公園さんの作品には、読者の記憶に強く残る人物が数多く登場しますが、本作『食べると死ぬ花』に現れる久根ニコライもまた、そのひとりです。
 最愛の息子を喪った母親。義母のいじめに耐える妻。取り返しのつかない罪を犯した男。
 そんな絶望を抱く人々の前に、ニコライはふいに姿を現します。そして不思議な品物を差し出し、ひとつの「救い」を与えるのです。それらを使えば、運命を変え、願いを叶え、喪ったものを取り戻すことができる、と──。

 本書は、ある家族をめぐる連作ホラーミステリなのですが、一話ごとに独立して楽しめる物語でありながら、読み進めるうちに奇妙な違和感が積み重なります。そして最後に、散りばめられていた謎がひとつに結びついた瞬間、それまで見えていた世界がまったく違う姿を現します。

 それは奇蹟なのか、それとも呪いか。

 更に、今回の文庫化に際し、60ページを超える最終章「診断の鍵」を書き下ろし収録いたしました。単行本刊行時から作品世界に惹かれていた読者の方はもちろん、芦花公園作品を初めて読む方にもおすすめしたい一冊です。
 すべての謎が繋がるとき、あなたの前に久根ニコライは姿を現す。人間の欲望を抉り出す、極上のホラーミステリを、どうぞご堪能ください。

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2026年06月15日   今月の1冊
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