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希代のストーリー・テラーによる壮大なサーガ開幕(新潮文庫編集部 T・N)



 Yonda?Mailを読んでくださっている皆さま、こんにちは。

 今日ご紹介するのは、イギリスの作家、いやストーリー・テラーであるジェフリー・アーチャーの壮大なサーガ『時のみぞ知る―クリフトン年代記 第1部―』です。

 アーチャーといえばコン・ゲームの名作『百万ドルをとり返せ!』などのミステリ系の作品を思い浮かべる方も多いと思います。しかし、もうひとつ忘れてはならないのが、まったく異なる境遇の主人公二人の生涯を描いた『ケインとアベル』に代表されるような長編小説です。アーチャーはこのような小説をサーガとよんでおり、日本で言えば、大河ドラマのようなものです。熱心なアーチャー・ファンは、このサーガこそが彼の王道である、と断言する方も多いのです。そしてこの作品は、畢生の最高傑作と自信を持ってお勧めできます!

 舞台は1920年代、イングランド南西部のブリストルという港町です。そこに労働者階級のクリフトン家と貴族のバリントン家という、普通なら階級の違いから交錯することのない両家が、なんとも奇妙な運命の巡り合わせで……。


 この作品の主人公は、ハリー・クリフトンという少年です。彼の将来の夢はサッカー選手か世界を旅する船乗りになることでした。しかし、彼は意外な才能に恵まれ、進学校にすすむことになったのですが、労働者階級ということで富裕層の御曹司から再三のいじめを受けます。やがて名家出身のジャイルズ・バリントンという親友を得て大いに助けられます。
 とはいってもハリーの学校生活は波乱に満ちたものです。さらに彼には厳しい真実が次々と明らかになっていきます。英雄として戦死したと教わった父の本当の姿。ウェイトレスとして働く母メイジーの暗い過去。師と崇める謎の男ジャック・ターが背負う傷。伯父スタンの許しがたい行為。そして少年が大人への扉を開けてゆく中、ついに直面することになる驚愕の事実とは?

 はじめにアーチャーは作家ではなくストーリー・テラーと書きましたが、これもアーチャー本人が言っていることです。この本の「訳者あとがき」に面白い話が載っていますのでご紹介いたします。

〔『百万ドルをとり返せ!』につづく第二作、『大統領に知らせますか?』の成功のあと、アーチャーは毎朝鏡に向かって、「ジェフリー、きみは三作目が勝負だぞ。そしてどのみちスコット・フィッツジェラルドのようにはなれっこないだろう。彼は作家だったが、きみはストーリー・テラーに過ぎない」と自戒の言葉をつぶやくのが常だったそうですが、彼がいかに偉大なストーリー・テラーであるかは(よしんば作家でないとしても)、その後の作品群を見れば疑いの余地はないでしょう〕

 アーチャーはストーリー・テリング、つまり“物語を語る”ことに非常にこだわっています。言うなれば、物語を聞く側(読者)が絶対に飽きないように様々な工夫をこらして小説を書いているのです。彼の本が全てベストセラーになり、全世界の売上が4億冊、というのも納得ですね。

 ここでアーチャー・ファンである応援団の声をお聞きください。

「時がつなぐ、人と人との運命。壮大な因果……。小説とは、こんなにも面白いものだったのかと、あらためて思い出させてくれる作品だ」
――作家・幸田真音

「この本を手に取ったら確実に寝不足になる」
――衆議院議員・河野太郎

「いくつもの人生が絡み合う大河のうねりは激しく、先の読めない展開に振り回されて楽しんだ。そして下巻のラスト1行が危険だ。今すぐに第2部を読みたくなる」
――文芸評論家・古山裕樹

「二家族の数奇な歴史を鮮やかにつむぎ出す物語のロンド。アーチャーのサーガが帰ってきた!」
――コラムニスト・香山二三郎

「簡潔な語り口、場面展開のはやさで読者の興味を引きつけるテクニックはさすがというしかなく、ページをめくりながら何度もこれぞアーチャーの真骨頂、と思った」
――ライター・瀧井朝世

「畢生の大作として、天才ストーリー・テラーの新たな代表作となるのは、間違いないところだろう」
――ミステリ・コラムニスト 三橋曉

 最後になりますが、タイトルに「クリフトン年代記 第1部」と入っているからには、当然ですが続きがあります。アーチャーは当初3部作を予定して書いていたそうですが、筆がのって5部作からなる本当に壮大なサーガになるようです。本国イギリスでは、すでに3部まで刊行されていて、いずれも全英1位のベストセラーだそうです。日本では第2部を9月末、第3部を来年2月末に刊行予定です。こちらもどうぞお楽しみに!

 この作品の特設ホームページを作りましたので、そちらも覗いてみてください。アドレスはこちらです。//www.shinchosha.co.jp/wadainohon/216133/

(新潮文庫編集部 T・N)

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2013年05月10日   今月の1冊
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