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畠中恵さんにお聞きしました


 Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。

 突然ですが、皆さんは政治家に興味がありますか?

 たぶん大多数の人が自分とは無縁、まるで違う世界の住人のように思っているのではないでしょうか。そもそも選挙期間以外にご尊顔を拝見する機会もなく、普段は何をしているのかさっぱり? ましてやその秘書やスタッフにおいてをや、という感じではないですか。

 今月ご紹介する『アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿―』の主人公佐倉聖くんは、その政治の世界に身を置く大学生です。彼が中学生の弟を養うため仕えているのは、引退してもなお政界に大きな影響力を持つ大堂剛。未だに多くの政治家の後見人を務める大堂の下には、ありとあらゆる難問珍問が持ち込まれます。
 そのトラブルシューターとしていろんな選挙区へ派遣されるのが、弱冠21歳の主人公佐倉聖くん。だから彼の視界には、政治家やその秘書、事務所のスタッフ、ボランティアなど、私たちがよく知らない政治の世界の住人たちが映っているのです。

 海千山千の政界の住人を手玉に取り、次々と難題を解決する佐倉聖くんの活躍は本編のお楽しみ。ということで、『アコギなのかリッパなのか』に描かれた政治の世界について、著者の畠中恵さんにお伺いしてみました。

――『アコギなのかリッパなのか』をお書きになる前から、そもそも政治家や政治の世界に興味をお持ちだったのでしょうか。

畠中:政治に興味津々ということは、ありませんでした。
このお話のきっかけになったのは、近所で行われていた、地方選挙かな、と思います。
選挙期間中は、近くの商店街に選挙事務所が出来、旗を持った人達が、練り歩いてました。沢山の選挙カーも、窓の下を通って行きます。
ですが、選挙が終わると次の選挙まで、「はて、国政ではなし、何をしているのかな?」 私にはよく分かりませんでした。その疑問が、発端でしょうか。

――リアルな議員事務所の内情が描かれていますが、やはりどこかの事務所を取材なさったのでしょうか?

畠中:議員事務所の中や、あれこれは、小説ですので、私が設定したものです。
資料本や議員関係者の方のホームページなどを、参考にさせて頂いております。
取材は、東京都議会議員、高木けい氏の事務所へ、伺った事があります。
議員は不在、事務所にいた方が、お話をして下さいました。

――取材してびっくりしたこと、あるいは感心なさったことなどございますでしょうか。

畠中:書くにあたり、できたらより身近な地方議員さんの事務所を取材したかったのですが、議員さんの知り合いなどおらず、どこへ行ったらよいか、分からない。
そんな時、高木議員の事務所に伺ったのは、実は一番私の家から近い所に、当時、事務所を構えておいでだったからで。
連絡先も知らなかったので、突然お邪魔したのですが、あれこれお話を聞かせて下さいました。
感謝でございます。

――取材なさったことで、政治や政治に携わる人々に対する見方が変わったということはございますでしょうか。

畠中:本当に、忙しそうだなと。でも、何でそのことが、有権者に伝わって来ないのかなと。
やはり、地方の議員さん達が、具体的に何をなさっているか、ご存じない方は、多いのではと思いました。

――『アコギなのかリッパなのか』を読むと政治家も愛すべき妖怪のように思えます。「しゃばけ」の世界と何か共通点はございますでしょうか。

畠中:いや、妖怪と言われましても……。確かに妖の世界でも、現実の政治の世界でも、色々大変な事は、あると思いますが。
政治家さんも、妖みたいに影の中に逃げる技が欲しいと、思われる時が、あるかもしれませんね。

――「しゃばけ」シリーズをお書きになるときと、現代物をお書きになるときでは、何か違う感覚なのでしょうか。それとも変わらないのでしょうか。

畠中:江戸時代のお話と、現代物のお話では、言葉が一番違うような。
時代物を書くときは、その時代で既に使われていた言葉か、チェックしつつ書くことが、多々あります。
反対に現代物の時は、時代物に引っ張られて、古くさい言い回しにならないように、気を付けてはいるのですが。

 畠中さん、ご協力ありがとうございました。

しゃばけ」シリーズの著者が描く新時代のユーモア・ミステリー『アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿―』。これまで「政治」に無関心だったあなたを変えるかもしれない一冊です。

畠中恵 ハタケナカ・メグミ

高知生まれ、名古屋育ち。名古屋造形芸術短期大学ビジュアルデザインコース・イラスト科卒。2001年『しゃばけ』で第13回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビュー。ほかに『ぬしさまへ』『ねこのばば』『おまけのこ』『うそうそ』『ちんぷんかん』『いっちばん』『ころころろ』『ゆんでめて』『やなりいなり』『ひなこまち』『たぶんねこ』『すえずえ』『なりたい』『おおあたり』『とるとだす』『むすびつき』『てんげんつう』『いちねんかん』『もういちど』『こいごころ』『いつまで』、ビジュアルストーリーブック『みぃつけた』(以上『しゃばけ』シリーズ、新潮社)、『ちょちょら』『けさくしゃ』(新潮社)、『猫君』(集英社)、『あしたの華姫』(KADOKAWA)、『御坊日々』(朝日新聞出版)、『忍びの副業(上)・(下)』(講談社)、『おやごころ』(文藝春秋)、エッセイ集『つくも神さん、お茶ください』(新潮社)などの著作がある。

畠中恵「しゃばけ」新潮社公式サイト

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2012年03月12日   今月の1冊
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