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山本周五郎賞・日本推理作家協会賞の二冠に輝いた『果断』に続く、シリーズ第三弾!

  • テレビ化隠蔽捜査(2014年1月放映)

疑心―隠蔽捜査3―

今野敏/著

1,650円(税込)

本の仕様

発売日:2009/03/19

読み仮名 ギシンインペイソウサ03
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 334ページ
ISBN 978-4-10-300253-6
C-CODE 0093
ジャンル ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
定価 1,650円

息子の不祥事で大森署署長に左遷されたキャリアの竜崎伸也。異例の任命で、米大統領訪日の方面警備本部長になった彼のもとに飛び込んできたのは、大統領機の到着する羽田空港でのテロ情報だった。警視庁から派遣されてきた美貌の女性キャリア、空港封鎖を主張するシークレットサービス……。虚々実々の警備本部で、竜崎の心は揺れる。

著者プロフィール

今野敏 コンノ・ビン

1955(昭和30)年北海道生れ。上智大学在学中の1978年に「怪物が街にやってくる」で問題小説新人賞を受賞。レコード会社勤務を経て、執筆に専念する。2006(平成18)年、『隠蔽捜査』で吉川英治文学新人賞を、2008年、『果断 隠蔽捜査2』で山本周五郎賞と日本推理作家協会賞を受賞する。2017年、「隠蔽捜査」シリーズで吉川英治文庫賞を受賞。さまざまなタイプのエンターテインメントを手がけているが、警察小説の書き手としての評価も高い。『イコン』『リオ 警視庁強行犯係・樋口顕』『同期』『サーベル警視庁』『回帰 警視庁強行犯係・樋口顕』『棲月 隠蔽捜査7』『任侠浴場』『エムエス 継続捜査ゼミ2』など著書多数。

インタビュー/対談/エッセイ

快感原則を求めて

今野敏

――警察小説は、今野さんにとって、どんな位置をしめているのでしょうか?

今野 最初の小説の『ジャズ水滸伝』もそうですが、僕の小説には、登場人物が集団で動くというものが多いんですね。僕は、絶対的なヒーローよりも、組織対個人のかかわりとか、組織対組織の政治とかに興味があるのです。スーパーマンより、戦隊ものですね。そういうところを考えると、僕が組織で動く警察小説を書くようになったのは、必然かもしれません。

――では、「隠蔽捜査」シリーズは如何でしょうか?

今野 このシリーズが今まで書いてきた作品の中で特別だとすれば、キャラクターをうまく立てられたという点です。でも、竜崎というキャラクターは、僕にとって全く新しいタイプというわけではありません。このような人物は、今までも脇役として何度か作品に登場しています。ただ、このシリーズでは、刑事部長の伊丹のような周囲の人物を右往左往させることで、竜崎の性格を際立たせることができました。そこがうまくいったので、竜崎という個人のキャラクターもうまく立ったし、集団としての面白さも書けたと思います。
『隠蔽捜査』は、最初はシリーズになるなんて思っていませんでした。単に、官僚小説を書こうと思っていただけです。そして、主人公は警察官僚ではなくて、どこの官僚でもよかった。たまたま、警察のことを知っていたので警察を舞台にしたわけです。官僚小説として、『隠蔽捜査』で書きたかったのは、本音と建前を使い分けるのではなく、あくまでも建前で仕事をしていくという理想的な官僚の姿です。そうしたら、竜崎という、キャラクターの立った人物像が浮かびあがってきた。それで、2作目の『果断』も、ということになったのです。

――今野さんが、影響を受けた作家、よくお読みになった作家はどなたですか?

今野 中学校の頃よく読んでいたのは、北杜夫さんの作品です。おしゃれでユーモアがあって、医者でありながら作家といったところとかもふくめて、とても好きでした。この前、中学校時代に書いたノートを見つけたのですが、そこに書かれていた文章は、もろに北さんの影響をうけていました。そういった意味では、僕の根っ子には北さんの影響があるのかもしれません。
 その後は、やはり筒井康隆さんです。それから眉村卓さん、田中光二さん、平井和正さんといった方々のSFをよく読みました。

――SF好きだったんですね。

今野 ええ、デビューの時までは、好きなのはミステリーというよりは、SFだったのです。むしろミステリーは、プロになってから、勉強したという感じなんですよ。
 ミステリーというのは密室とかトリックとかがあって、必ず謎解きがなければいけないと思い込んでいたんです。デビュー10年目で、最初に書いた警察小説が、「安積警部補シリーズ」なんですが、書いたときには、この作品をミステリーと思っていなかったぐらいですから。僕にとって警察小説は、むしろミステリーとは、かけ離れた物語かもしれませんね。どちらかというと時代小説に近いという感覚かもしれません。時代小説には、色々な武将が色々な思いを持って行動するといった、一種の組織小説の側面がありますからね。そして、捕物帖は、刑事小説。日本で長い間、刑事小説が生まれなかったのは、池波正太郎さんの「鬼平犯科帳」シリーズがあったからだと思います。このシリーズで、読者が充足してしまっていたんで、他の小説は必要なかったんですね。

――今野さんが作品をお書きになるとき、特に意識なさっている点はありますか?

今野 そうですね、ラストをどうするかは、いつも意識して書いています。
 先日、小説教室に通っている人たちの作品を読む機会があったのですが、この人たちとは決定的に違うな、と思うところがありました。僕は、作品を書くときに、読んだときに何が気持いいのかという快感原則を探して書いています。これは、多分、自分自身が、小説を気持ちよく読みたいからなんですね。自分が読んだとき、ハッピーエンドじゃないといやなんです。
 ところが、小説教室の素人の人たちは、小説を読む気持ち良さより、問題意識を先にもってきてしまう。そうすると、作品が、偽悪的になったり、嫌な感じになったりする。そうすると、物語が重くなり、ラストが暗くなってしまうんですよ。僕は、作品を書くときには、どうやったら読者に、暗く重たいテーマでも気持ち良く読んでもらえるかということを、すごく意識しています。素人の人の作品を読んで、そこが、エンターテインメント作家として、この人たちと決定的に違うところだと改めて感じました。
 ただ、誤解がないように言っておきたいのですが、ロマン・ノワール、いわゆる暗黒小説が、小説として駄目だということではありません。でも、僕の作家としての役割は違うんですね。これまで、色々なジャンルの小説を書いてきましたが、作家としてそこだけは譲れないところです。気持ちよく読めるという、この部分がなくなってしまったら、今野敏ではないといってもいいぐらいな、僕にとって大事な部分だと思っています。

――今回の『疑心―隠蔽捜査3―』は、アメリカ大統領訪日の方面警備本部長を命じられた竜崎が、警察庁から派遣されてきた、秘書役の女性キャリアに心を動かされるという、読者にとっては、驚きの展開になっていますが?

今野 今回はちょっとした冒険をしてみました。どんなに頭が切れても優秀なキャリアでも、人間ですから、恋をすると愚かになる。その愚かさをちょっとみせたかったんです。第4作目ではきちっとした竜崎になるので、読者の皆さんはご安心ください(笑)。
 次作のストーリーは、どうなるか全く考えていませんが、とりあえず、また大森署が舞台になると思います。

(こんの・びん 作家)
波 2009年4月号より

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