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クトゥルー、暗黒神話はここから始まる


 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト──1890年、米国ロードアイランド州プロヴィデンスに生を受けた小説家です。ホラー好きで彼の名を知らぬ者はいないでしょう。しかし、生前、彼の作品を読んだ人は僅かでした。「ウィアード・テールズ」「アメイジング・ストーリーズ」などのパルプ・マガジンに寄稿。唯一上梓した『インスマスの影』は200部しか出まわらなかったそうです。評価を得ることなく、46歳の若さで逝去。彼の存在が歴史の波に呑みこまれなかったのは、ひとえにその物語の魔力ゆえ。ラヴクラフトの創造した壮大な宇宙観に基づく小説群は"クトゥルー神話"と名付けられ、世界中のクリエイターが継承。さまざまな貌をした"子孫"が今日も誕生しています。

 H・P・ラヴクラフト、南條竹則編訳『インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―』。怪談・ホラーにも造詣が深い英文学者にして小説家の南條竹則氏が、新潮文庫のために中短篇を選び抜き、時間をかけて、新訳を行いました。クトゥルー神話を愛する方々にも、ラヴクラフト未経験の方にも、自信を持ってお勧めできる1冊です。

「あの古いバスに乗ったらいいかもしれないよ」彼は幾分ためらいながら言った。「もっとも、ここいらじゃあんまり評判が良くないがね。インスマスを通って行くんだ――あの町のことは聞いただろう――」(「インスマスの影」より)

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2019年08月15日   今月の1冊
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