【創作】村上春樹「夏帆とシロアリの女王」
第57回 新潮新人賞発表
新潮 2025年11月号
(毎月7日発行)
| 発売日 | 2025/10/07 |
|---|---|
| JANコード | 4910049011157 |
| 定価 | 1,200円(税込) |
【創作】
◆夏帆とシロアリの女王──〈夏帆〉その3(150枚)/村上春樹
知らないうちに身体が何ものかに乗っ取られている──夏帆は浦和の実家で、変貌した母親と対峙する。派手になった服装と、見え隠れするモーターサイクルの男。前二作を継ぎ、物語はさらに世界の奥深くへ。
◆第57回 新潮新人賞発表
【受賞作】赤いベスト(140枚)/内田ミチル
「家にね、赤いベストの女がおるって言うんよ」。ウォーキングに集まる老人を脅かす、真偽不明の噂話。不穏な空気が流れる広島の町で、自らももう若くはない跡野は、しばらく前に姿を消した認知症の母を想う。
◆[受賞者インタビュー]方言を使い、自分から離れたところへ
【受賞作】あなたが走ったことないような坂道(90枚)/有賀未来
星瑤は香港生まれで、中国籍で、日本語しか話せない。ママの顔は知らないし、親友への想いは恋にも似ている。言葉にできないものばかり抱えて彼女は生きる──清新な文体で駆け抜ける、若者のすべて。
◆[受賞者インタビュー]目を逸らさずに「痛み」を書く
【選評】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹
【掌篇】
◆列車と刑罰/筒井康隆
【連載小説】
◆マキノ(第2回)/高村 薫
齢六十にして姓を変えた彼は、滋賀マキノにある古家を相続し、警察の定年退職後に東京から移り住んだ。
◆その後の桜(第3回)/村田喜代子
夜の海岸の引き潮。魚のいない海。海の砂漠。皆既月食。大自然の中で、生と死が表裏のように反転する。
第33回 萩原朔太郎賞発表
【受賞作】暗闇に手をひらく/大崎清夏
【選評】杉本真維子/日和聡子/松浦寿輝/三浦雅士/和合亮一
第24回 小林秀雄賞発表
【受賞作】荷風の昭和 《前篇》関東大震災から日米開戦まで 《後篇》偏奇館焼亡から最期の日まで/川本三郎
【選評】片山杜秀/國分功一郎/関川夏央/堀江敏幸/養老孟司
【対談】
◆小説の神さまに会いにいく/角田光代×小川洋子
悩みを預けるようにして書く。創作と信仰、旅、混沌。同時代を歩んできた二人が互いの核に触れる初対談。
【評論】
◆祭りの後で──ポスト大阪・関西万博の建築を考える/藤村龍至
権力の丹下健三と反権力の磯崎新を止揚する第三の道は可能か。未来の果てに浮かび上がる「超都市」の姿。
【リレーコラム 街の気分と思考】
◆回転する〈彼女〉の肖像/石沢麻依
◆110Vの天使/ハラサオリ
【新潮】
◆世界一のサッカークラブを作る/井筒陸也
◆謎解きの答えから始まった「鏡の向こうのシェイクスピア」シリーズ/江戸 馨
◆現代アート的/松田将英
◆ぴかぴか/松森モヘー
【書評委員による 私の書棚の現在地】
◆上野千鶴子・山内マリコ『地方女子たちの選択』/高瀬隼子
◆小山田浩子『作文』/小池水音
【本】
◆綿矢りさ『激しく煌めく短い命』/大前粟生
◆大竹伸朗『絵の音』/佐藤厚志
◆渡邊英理『到来する女たち──石牟礼道子・中村きい子・森崎和江の思想文学』/竹中優子
◆ジョゼ・サラマーゴ『修道院覚書──バルタザールとブリムンダ』(木下眞穂 訳)/豊崎由美
【連載評論】
◆雅とまねび──日本クラシック音楽史(第11回)/片山杜秀
◆独りの椅子──石垣りんのために(第17回)/梯 久美子
◆小林秀雄(第122回)/大澤信亮
【連載小説】
◆山吹散るか ほろほろと(第4回)/辻原 登
◆マイネームイズフューチャー(第7回)/千葉雅也
◆湾(第17回)/宮本 輝
◆荒れ野にて(第91回・完)/重松 清
第58回新潮新人賞 応募規定
執筆者紹介
この号の誌面
立ち読み
編集長から
第57回新潮新人賞決定
対談 角田光代×小川洋子
「小説の神さまに会いにいく」
◎第57回新潮新人賞が、内田ミチル「赤いベスト」と有賀未来「あなたが走ったことないような坂道」に決定した。広島が舞台の内田作品は、認知症を抱える母を失踪させてしまった高齢女性の視点で展開する。彼女は平然と嘘をつき、時に読者をも煙に巻くものの、虚言の理由は示されない。豊かな方言と共に地方都市の現実を活写した、不気味な読後感を残す一篇だ。有賀作品は読点を多用した文体で、香港にルーツを持つ女子高生・星瑤の日常を綴っていく。星瑤は血の繋がらない両親や友人なおとの関係に悩み、自らのアイデンティティと向き合うが、独特の語りのリズムが、ありふれた問いを唯一無二のものへ昇華している◎同時期に「海燕」でデビューし、キャリアを重ねてきた角田光代氏と小川洋子氏の初対談では、角田氏の新刊『神さまショッピング』を紐解きながら、小説と祈ることの因果が考察された。信仰の有無に拘らず、書くこととは自分の一部を超越的な存在に預ける行為なのかもしれない。
編集長・杉山達哉
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。












































