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今月の表紙の筆蹟はノンフィクション作家の高野秀行さん。
[高野秀行『謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉―』刊行記念特集]

波 2016年5月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/04/27

発売日 2016/04/27
JANコード 4910068230560
定価 102円(税込)

[吉本ばなな『イヤシノウタ』刊行記念インタビュー]

エトガル・ケレット、秋元孝文『あの素晴らしき七年』
西 加奈子/勇気の書

三崎亜記『ニセモノの妻』
大矢博子/滑稽で厄介で、そして愛おしき伴侶

[北村 薫『うた合わせ 北村薫の百人一首』刊行記念特集]
佐伯裕子/百首を這いめぐる触手
【座談会】北村 薫×藤原龍一郎×穂村 弘/短歌というミステリーの謎とき

神田茜『オレンジシルク』
吉野万理子/虚構と真実のミルフィーユ

初瀬 礼『シスト』
香山二三郎/今そこにあるパンデミックの恐怖

[高野秀行『謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉―』刊行記念特集]

藤沢 周『サラバンド・サラバンダ』
若松英輔/物語だけが照らし出してくれる場所

安田菜津紀 『君とまた、あの場所へ―シリア難民の明日―』
高橋源一郎/安田さんが「あの場所」へ行った理由

青山文平『半席』
青山文平/“フルスペックの人間”を描きたい

[松田青子『ロマンティックあげない』刊行記念インタビュー]

橋本陽介『日本語の謎を解く―最新言語学Q&A―』(新潮選書)
高野秀行/言語オタクも納得の痛快本

高田文夫『私だけが知っている 金言・笑言・名言録』
高田文夫/“笑言”こそ笑いの現場の“証言”

藻谷浩介『和の国富論』
宇都宮浄人/市場経済の狭間のしなやかな生業

橘 玲『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』(新潮新書)
藤沢数希/愉快に読めた「理不尽な真実」

成毛 眞『これが「買い」だ―私のキュレーション術―』
麻木久仁子/面白く生きていける本

松沢呉一『闇の女たち―消えゆく日本人街娼の記録―』(新潮文庫)
花房観音/闇の中の自由という光

木村藤子『幸せの「気づき」相談』
新潮社 企画編集部/予約殺到の人生相談が、読めます

室谷克実『韓国は裏切る』(新潮新書)
室谷克実/「おかしな国」の根源

[『暗幕のゲルニカ』刊行記念トークショー]

コラム
考える人─「でも」に込めた意味

夏目漱石『三四郎』
宮崎香蓮/新潮文庫で歩く日本の町

三橋曉の海外エンタ三つ巴

とんぼの本編集室だより


連載
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第14回
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第33回
津村記久子/やりなおし世界文学 第24回
ミランダ・ジュライ(岸本佐知子訳)/最初の悪い男 第2回
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第2回
大澤真幸/山崎豊子の〈男〉 第3回
佐藤賢一/遺訓 第5回
森 功/暗黒事件史 日本を変えた犯罪者たち 第4回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第74回
ジェーン・スー/生きるとか死ぬとか父親とか 第3回
木皿 泉/カゲロボ日記 第25回

編集室だより  新潮社の新刊案内  編集長から  カット 水上多摩江

編集長から

今月の表紙の筆蹟はノンフィクション作家の高野秀行さん

◇今月の表紙の筆蹟は、ノンフィクション作家の高野秀行さんです。地球に存在する謎の真相を追い求めて、辺境や危険地帯に飛び込むことも厭わず、『謎の独立国家ソマリランド』『幻獣ムベンべを追え』『イスラム飲酒紀行』などの著作をものしてきた高野さんが今回挑んだテーマは何と納豆。様々な取材で分け入ったアジアの奥地で美味しい納豆と衝撃的な出会いをした高野さんは、その正体を解き明かすために三年にも及ぶ探訪の旅を敢行し、納豆の起源に迫る画期的なルポルタージュを書き上げました。「納豆を見れば、民族の歴史や文化がわかる」と高野さんは語りますが、アジアには呼び名や形状は異なれど、菌で発酵させた匂い立つ大豆たちが各地に息づいています。共通しているのは山の民の食べ物であること。それに気づいた高野さんは、アジア納豆を「辺境食」と定義づけました。表紙の写真はミャンマーの少数民族シャン族が暮らす州都タウンジーで撮影した一枚で、女性ガイドが手にしているのはシャン族の主食ともいうべき納豆「トナオ」を調理した一品です。
渡辺淳一さんの三回忌を迎える今年、「純文学・大衆文学の枠を超えた、人間心理に深く迫る豊潤な物語性を持った小説作品を顕彰」する渡辺淳一文学賞が創設されましたが、第一回受賞作に川上未映子さん『あこがれ』(小社刊)が選ばれました。昨秋に刊行されたこの作品は、発売直後から「人生の核心を覗かせながらも、明日もがんばってみようかな、と思わせる優しい視線に満ちている」(中原かおり氏、「産経新聞」十一月十五日)、「この作者にしか紡ぎ出せない清冽で切実な感情が宿っている」(佐々木敦氏、「日本経済新聞」十一月二十二日)などの好評を得て版を重ねてきましたが、さらなる栄誉に輝きました。小学生の少年と少女の二人の視点で、この年代なればこそ抱く「あこがれ」の存在への揺れ動く思いが綴られていきますが、その瑞々しく繊細な文章をぜひご堪能いただきたいと思います。

新潮社ホームページ情報
http://www.shinchosha.co.jp/
◎吉本ばなな『イヤシノウタ』特設サイト
http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/383411/

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。