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今月の表紙の筆蹟はアムステルダム在住の作家、トーン・テレヘンさん。
トーン・テレヘン、長山さき訳『ハリネズミの願い』

波 2016年7月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/06/28

発売日 2016/06/28
JANコード 4910068230768
定価 102円(税込)


[蓮實重彦『伯爵夫人』刊行記念特集]
筒井康隆/情欲と戦争
黒田夏子/危険な感情教育
瀬川昌久/随想 『伯爵夫人』の時代と私のかかわり
[宮本 輝『長流の畔―流転の海 第八部―』刊行記念特集]
【対談】押切もえ×宮本 輝/執筆35年の大河長篇で描く、人間の幸福と命。
川西政明/「死と失敗と挫折」を乗り越えて行く人間の姿
[近藤史恵『スティグマータ』刊行記念特集]
【インタビュー】近藤史恵/選手たちの持つ悲哀と色気
黒田硫黄/イントゥ・ザ・プロトン
いしいしんじ『海と山のピアノ』
井上荒野/ほんものの豊穣

松居沙夜『恋から始まったビョーキ―私は強迫性障害です―』
最相葉月/“わかっちゃいるけど”、強迫性障害

芦沢 央『許されようとは思いません』
池上冬樹/驚きに満ちて感動もある傑作サスペンス
北方謙三『いまそこにいる君は―十字路が見える―』
【インタビュー】北方謙三が訊く! 本当に「見たい」映画を見つける5つの方法
加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫)
佐藤 優/未来を生きる力を授ける見事な近現代史講義

山田優、石井勇人『亡国の密約―TPPはなぜ歪められたのか―』
御厨 貴/日米交渉を再現する圧巻のノンフィクション

互 盛央『日本国民であるために―民主主義を考える四つの問い―』(新潮選書)
辻原 登/予想だにしなかった思考と行為の地平

榎本睦郎『笑って付き合う認知症』
鹿子裕文/ぼける前に読んでおきたい実用の書

鈴木大介『脳が壊れた』
鈴木大介/脳が壊れたルポライター

宮田律『オリエント世界はなぜ崩壊したか―異形化する「イスラム」と忘れられた「共存」の叡智―』
大倉眞一郎/想像力を刺激する“凝縮”の歴史

天久聖一/編『挫折を経て、猫は丸くなった。―書き出し小説名作集―』
山里亮太/ずっとしがんでいられる面白さ

新潮ムック『NEW WORLD―「新日本プロレスワールド」公式ブック―』
三田佐代子/彼らが光であるならば
[末盛千枝子『「私」を受け容れて生きる―父と母の娘―』刊行特別対談]
国谷裕子×末盛千枝子/困難から逃げずに生きるとは
[『ひとり飲む、京都』文庫化記念スペシャル・トーク]
太田和彦×いつもの同行者/僕らはこんな(に)酒を呑んできた
【中綴じ広告】トーン・テレヘン、長山さき訳『ハリネズミの願い』
コラム
考える人―谷川さんの「語り」の魅力

畠中恵『しゃばけ』
宮崎香蓮/新潮文庫で歩く日本の町

三橋曉の海外エンタ三つ巴

とんぼの本編集室だより

連載
ジェーン・スー/生きるとか死ぬとか父親とか 第5回
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第4回
大澤真幸/山崎豊子の〈男〉 第5回
津村記久子/やりなおし世界文学 第26回
森 功/暗黒事件史 日本を変えた犯罪者たち 第6回
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第16回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第76回
堀本裕樹、穂村弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第35回
木皿 泉/カゲロボ日記 第27回
佐藤賢一/遺訓 第7回
ミランダ・ジュライ(岸本佐知子訳)/最初の悪い男 第4回

編集室だより  新潮社の新刊案内  編集長から  カット 水上多摩江

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟はアムステルダム在住の作家、トーン・テレヘンさん

◇表紙の筆蹟はアムステルダム在住の作家、トーン・テレヘンさん。「『いいよ』とハリネズミは言って紅茶をいれた」と書かれています。読み終えた時、誰にでもいいから無性に語りたくなるような、ひとにはずっと黙っていたいような、得も言われぬ不思議な心持ちになる『ハリネズミの願い』からの一節です。この傑作の詳細は中綴じの特集ページをご覧下さい。テレヘンさんは、どうぶつを主人公にした話を五十冊以上書き続け、オランダで最も敬愛されている作家の由。また表紙のイラストはやはり同書より、祖敷大輔さんです。
◇巻頭は先日、三島賞を受賞した蓮實重彦さんの『伯爵夫人』をめぐって。話題の〈新鋭作家〉による、頽廃的なまでに優美で豪奢な長篇小説については本文をお読み頂くとして、受賞の夜の記者会見についてちょっと書いてみます。あの場の司会を務めていた僕は、決定した受賞者の名を選考会場からLINEで知らされた時、慄然としました。かつて「凡庸さ」や「紋切型」についてさんざん論じてきたあの批評家に対して、今夜は小説家としてであれ、居並ぶ記者の方々の前でどう口火を切ればよいのか途方にくれたのです。翌々日の朝日新聞天声人語で報じられたやりとりは冒頭が削られていましたが、度胸を決めて「まず凡庸な質問で恐縮ですが、三島賞受賞の報を受けてのご心境を伺わせて下さい」と訊ねると、受賞者はややあって一言、「ご心境はという質問ですが、ご心境という言葉はわたくしの中に存在しておりませんので答えません」。さすが『表層批評宣言』の作者!と内心快哉をあげ、ニヤニヤしながら正面を向くと、予想に反して記者席の空気はもう固まっていました。そこから先の展開は報道やネットに譲ります。あとで知人の記者は「若い記者たちが蓮實さんの芸風を知らなかったみたいで度肝抜かれて」とボヤいておりました。けれど僕は、会見後すぐに映画好きの後輩二人から「最高でしたねえ」と羨ましがられたのです。彼らは〈芸風〉をよく知っていました。

新潮社ホームページ情報
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◎新シリーズ「村上柴田翻訳堂」刊行中!
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バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。