小山田浩子「穴」(160枚)
新潮 2013年9月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2013/08/07 |
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JANコード | 4910049010938 |
定価 | 996円(税込) |
・満月の道(十九)/宮本 輝
・Hさんへの返信/大森立嗣
・ヴェネツィア黄金期のある出版人のこと/柴田光滋
◇動物は必ず教えてくれる/小川洋子+岸本佐知子
――平野啓一郎論
・青山七恵『快楽』/江南亜美子
・西村賢太『歪んだ忌日』/小山田浩子
・島田雅彦『ニッチを探して』/重松 清
・玄侑宗久『光の山』/清水良典
・高橋源一郎『銀河鉄道の彼方に』/滝口悠生
・大竹伸朗『ビ』/都築響一
・綿矢りさ『大地のゲーム』/松永美穂
編集長から
◎古井由吉氏の小説にとって、「辻」や「路地」は特別な場所である。そこではたえず過去と現在、死者と生者がすれちがい、記憶と認識が一陣の風のように吹き抜ける。だが氏にとり、別の根源的な場所がある。そう思ったのは、古井氏が小誌に書き継いだ連作短篇の最終回「机の四隅」(本号掲載)を読んでのことだった。その場所とは氏の「机」だ◎四十数年前に「この売文の業に迷いこんだ際に、いつまで続けられるか知れないが、それにしても長く続いてくれなくては困る」と「転業のけじめ」に入手した仕事場の机に向かい、古井氏は日本文学の最前線を切り拓いてきた。夜明けの目覚めに、まだ机に向かっている体感があるという。街から酔ってもどっても、我ならぬ我が机に向かっているともいう◎「机の四隅」もまた、その机と古井氏の精神が滲み合う界面に見事に立ち上がった。連作は完結するが、机は在り続け、古井氏は作品世界を更新し続けるだろう。
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。