「やまいだれの歌」(前篇・150枚)/西村賢太
新潮 2013年10月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2013/09/06 |
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JANコード | 4910049011034 |
定価 | 996円(税込) |
・満月の道(二十)/宮本 輝
文学渡世三十年/島田雅彦+佐伯一麦
悪はどこから来るのか/綿矢りさ+佐藤 優
――ファッション批評のアクチュアリティ
・思い出の『プロ野球?殺人事件!』/青木淳悟
・森浩一先生のこと/黒川 創
・エッセイなんて書きたくない/松波太郎
・ビーチに行かない沖縄の旅/宮沢章夫
・本谷有希子『自分を好きになる方法』/阿部公彦
・津村記久子『これからお祈りにいきます』/池田雄一
・吉田修一『愛に乱暴』/木村友祐
編集長から

◎今年デビュー三十周年を迎えた島田雅彦氏と氏の一年後にデビューした佐伯一麦氏に語り合っていただいた。作品ごとに多様なキャラクターに憑依し、血肉を与えてきた島田氏に対し、一貫して「私」を書き続けてきた佐伯氏は、しかし、いくら書いても煮詰まることはないと言う。なぜか? 最大の他者は自分なのだ、と氏は語る。さらに私小説作家としての出発点はゴッホの自画像なのだ、とも。そう、生涯を通じて多数の自画像を残したゴッホは鏡に映った複数の鏡像=他者を描き続けた◎西村賢太氏が代表作「苦役列車」とつながる、氏最大の長篇「疒(やまいだれ)の歌」(前篇・150枚)を発表。中卒後の三年半を無為に過ごした敗北感に駆られ、十九歳の主人公は「負の流れ」を変えるために辿り着いた横浜の場末で、途方に暮れる。そこに描かれた私小説作家の若き日の姿もまた、氏の天分としての異形の鏡に映った鏡像であり、虚構の命が存分に吹き込まれている。

バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。