筒井康隆「ニューシネマ「バブルの塔」」
アンケート特集 平成の終焉――何が生まれ何が消えたのか
新潮 2019年5月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2019/04/05 |
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JANコード | 4910049010594 |
定価 | 特別定価998円(税込) |
◆ニューシネマ「バブルの塔」/筒井康隆
おお私の想像力と創造力にあふれる残虐性と残虐行為! 巨匠が放つ平成最後の超傑作!
◆人生は驚きに充ちている[一〇〇枚]/中原昌也
私は、この地味な会議室で、あの神秘的な体験を文芸作品に昇華させなければならない......。
◆蜜の静かに流れる場所[一〇〇枚]/黒川 創
大学の友人だった言語聴覚士の女と通信社記者の男。五十代になって交差する二人の人生。
◆FICTION 02 楽園/山下澄人
◆サーカス/瀬戸内寂聴
◆ヴィル=ダヴレー/松浦寿輝
◆プリニウス(四)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆漂流(四)/町田 康
◆チェロ湖(四)/いしいしんじ
◆ビッグ・スヌーズ(十六)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(四十一)/重松 清
【アンケート特集】
平成の終焉――何が生まれ何が消えたのか
◆谷川俊太郎▪私的なファクト
◆水村美苗▪完全な絶望はありえない
◆会田 誠▪平成という時代はありません
◆西川美和▪フィルム/デジタル
◆竹内 洋▪「ほとけの◯◯教授」に「上から目線」
◆川本三郎▪アナログ人間の困惑
◆平野啓一郎▪時代の「自分探し」
◆最果タヒ▪よそよそしい平成
◆小澤 實▪はがきからメールへ
◆本谷有希子▪以前/以後
◆エリイ(Chim↑Pom)▪幽霊のような自主規制
◆高村 薫▪饒舌と沈黙
◆中村文則▪愚かさの再生産と、言葉の変容
◆上田岳弘▪「昭和」の余熱、あるいはピボットの足場としての
◆高樹のぶ子▪謝罪と沈黙
◆三宅 唱▪撮影現場は生き物
◆蓮實重彥▪「元号」などというものは適当に無視しておけばよい
◆岡田利規▪この国の外が持つ意味の変容
◆長野まゆみ▪紙の本を読む「読者」
◆ブレイディみかこ▪さっさとデフレを終わらせろ
◆辻原 登▪熊野の神木
◆町屋良平▪よろこびのTikTok
◆桐野夏生▪人の死が生まれ、私という人間が消えた
◆福田和也▪清水志郎/澤口知之
◆小山田浩子▪そう思った自分こそ駄目じゃないか
◆野田秀樹▪私の中に生まれた新しい罪悪感
平成ベストテン
◆山根貞男▪映画
◆椹木野衣▪アート
◆和久田頼男▪演劇
◆片山杜秀▪クラシック
◆佐々木 敦▪Jポップ
◆五十嵐太郎▪建築
■■ 発掘原稿 ■■
三島由紀夫 現代青年論 “弱い父親”への反逆
『仮面の告白』『金閣寺』等で青年を描いた三島が死の前年に青年の変容と不変を説く。
解説・斎藤理生
◆ベンヤミンのメキシコ学――運命的暴力と翻訳/山城むつみ
若き思想家はなぜその絵文書を読もうとしたのか。暴力批判と翻訳論を繋ぐ広大な可能性。
〈追悼ドナルド・キーン〉
◆「日本」について質問された人/平野啓一郎
◆昨日の戦地から、ずっと。/尾崎真理子
〈追悼 高橋英夫〉
◆批評の正統に殉じて/菅野昭正
◆保田與重郎の文学(八)/前田英樹
◆これは小説ではない(十二)/佐々木 敦
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第七十三回・花粉症と船酔い
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一七三回・壁と歯
■■ 新潮 ■■
◆「文芸誌→デジタル本」のご報告/青木淳悟
◆迷児のココロ/O JUN
◆人生、棒を振る/田中祐子
◆現在地/尹 雄大
■■ 本 ■■
◆谷崎由依『藁の王』/雛倉さりえ
◆四方田犬彦『すべての鳥を放つ』/谷崎由依
◆大前粟生『私と鰐と妹の部屋』福尾 匠
第52回《新潮新人賞》応募規定 新選考委員発表
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
この号の誌面
立ち読み
編集長から
平成の終焉――何が生まれ何が消えたのか
◎「平成」が終わる。バブル景気の絶頂と崩壊から始まり、千年紀末をまたいだ時代の終わりに、約30名の作家やアーティストに問いを投げかけた。アンケート特集「平成の終焉――何が生まれ何が消えたのか」。たとえば水村美苗氏は《平成が終わろうとする今、私のなかで消えたものは、「希望」である》と言う。だが同時に、完全な絶望がありえないことは希望であり、《翌日に何が起こるかわからない不確実性》ゆえに自らは書き続ける、と言う。多くの回答から感じるのは、平成年間を肯定できず、かといって新時代に希望をもてない宙吊りの感覚だ。優れた創作者たちの切実な言葉から時代精神が見えてくる◎筒井康隆「ニューシネマ「バブルの塔」」は作家生活60年に迫る作家の新たな頂点と言いたい文学の冒険にして傑作。さらに中原昌也「人生は驚きに充ちている」(100枚)、黒川創「蜜の静かに流れる場所」(100枚)など、創作も充実した本号は平成年間最後の号となる。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。