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新連作 古井由吉「雛の春」
第32回 三島由紀夫賞発表

新潮 2019年7月号

(毎月7日発行)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2019/06/07

発売日 2019/06/07
JANコード 4910049010792
定価 947円(税込)

雛の春新連作】/古井由吉
旧正月の手術も済んで、病室の白い天井の静まりに、泣き叫ぶ幼女と人の千のつぶやきが響く。移ろう日々をながめる文学の新しき深度。
覚えていること[一二〇枚]/黒川 創
渦中にあっては「世界戦争」という認識はない。戦闘は、各々の国国の利害の下にあった。
タイマイ異聞古川真人
海亀タイマイを見つけた女」の話が、知人から知人たちへ伝わっていく。語りの根源としての異聞。
井戸瀬戸内寂聴
タクナ松浦寿輝
プリニウス(五十九)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
漂流(五)/町田 康
チェロ湖(六)/いしいしんじ
ヒロヒト(九)/高橋源一郎
ビッグ・スヌーズ(十八)/矢作俊彦
荒れ野にて(四十三)/重松 清

【第32回 三島由紀夫賞発表】
【受賞作】いかれころ(一部掲載)/三国美千子
【選評】辻原 登/高村 薫/川上弘美/町田 康/平野啓一郎
■受賞記念エッセイ/三国美千子
■「いかれころ」論/古谷利裕
■■ 新連載リレーコラム ■■
Passage――街の気分と思考
ファントム・オブ・ユース長島有里枝
甲州街道はもう春なのさ吉本ばなな
水戸学の世界地図【連載再開】/片山杜秀
日本の近代を準備した徳川御三家の過激思想。その真実を解き明かす話題の論考、完結へ!
小林旭という旅(前篇)/福田和也
八十歳にして全国巡業を続ける稀代のスターに「日本」を読む。文芸批評の自在の変奏。
先崎彰容への公開質問状安藤礼二
保田與重郎の文学(十)/前田英樹
これは小説ではない(十四)/佐々木 敦
地上に星座をつくる石川直樹
第七十五回・おもてなしの夜
見えない音、聴こえない絵(一七五)/大竹伸朗
■■ 新潮 ■■
◆パーティーの列のクリネックス/鈴木涼美
◆プロパガンダから遠く離れて/辻田真佐憲
◆すべては種子島から/木下眞穂
◆逍遙学派的劇作術/小田尚稔
■■ 本 ■■
◆羽田圭介『ポルシェ太郎』/阿部公彦
◆島田雅彦『人類最年長』/佐久間文子
◆山極寿一+小川洋子『ゴリラの森、言葉の海』/平松洋子
◆田中慎弥『ひよこ太陽』/日和聡子
第52回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹

この号の誌面

立ち読み

編集長から

八億の事――
古井由吉氏の新連作

古井由吉氏の新連作第一回「雛の春」は、老作家が入院した二〇一九年の立春の日に始まる。麻酔からさめると、手術は順調に済んだらしい。夜の暗い病室で、作家はただ天井を眺めている。そのとき、静まった廊下に声が響く。泣き叫ぶ幼児のような老女の声。妄言めいた年老いた男の声。それらの声に作家は耳を澄ませながら、「人は一夜の内にも八億の事を思う」という仏典の言葉を思い出す。「すべて由なき繰り言のようでも、千にひとつ、あるいは千全体でひとつ、おのれの生涯の実相に触れているのかもしれない」と思う。人の精神に湧き続ける「八億の事」を捉える――それが古井氏の文学ではないか。入院から始まった昼と夜の繰り返しの間、氏は敗戦の年の記憶をたどり、若き日の金沢の雪道を歩み直し、さらには音、匂い、光といった形をもたぬものの感触を原稿に招き寄せ、三月十一日が過ぎた春先にひとまず筆を擱く。日本語による文芸の極限を示す連作がついに始まった。

新潮編集長 矢野 優

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

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