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特集:糸し糸しと言ふ心 2011年の戀愛小説

小説新潮 2011年2月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/01/22

発売日 2011/01/22
JANコード 4910047010213
定価 943円(税込)

【特集:糸し糸しと言ふ心 2011年の戀愛小説】

高校の一年先輩に、旧字でノートを取っている人がいた。びっしりと書かれた、何だかさっぱり分からない字を見たそのカルチャーショックが、初めて「旧字体」を意識した瞬間だったと思う。読めないのが悔しくて色々調べたものの、自分では遣わない文字だったから、すぐに忘れてしまった。
それでも、「糸し糸しと言う心」という呪文のようなフレーズは、いまだに覚えている。〈恋〉の旧字体〈戀〉を覚えるための語呂なのだが、初めて知ったときは、上手い言い方があったものだと心底感心した。
誰かを愛しいと恋うる気持ちを恋愛と呼ぶことは、今も昔も変わらない。生活を取り巻く環境や気持ちを伝える手段は違っても、未来永劫変わらないであろう根源的な感情を示したくて、こんなタイトルを付けてみた。

◆谷村志穂/ストーブ
――独りの年越しだったはずが、突然帰郷した弟。彼が見つけた死亡記事には

◆宮木あや子/ろくでなし
――男は組の若頭だった。流されるように、私は男の用意した部屋に引っ越した

◆窪 美澄/平熱セ氏三十六度二分
――兄貴とみひろが結婚する。わかっていたことだけれど、俺は悪酔いした……

◆吉野万理子/ひかるコンプレックス
――見知らぬ女たちから手紙を渡される剛志。宛名の「ひかる様」って、誰?

◆千早 茜/あとかた
――男と会う夜の闇は肌に柔らかい。しかし朝の光は、目の裏をざらざらと擦る

◆柴門ふみ/大人の恋力 特別版
――今年もパワフルな大人の恋愛事情。新年早々に訪れた、夫婦の危機とは

【「しゃばけ」新シリーズ開始】

◆畠中 恵/こいしくて
――若だんなの暮らす界隈で、妙な病が流行り始めた。お医者も匙を投げるその大病とは? 長崎屋特製・小豆粥のレシピ付き!

【12ヶ月連続 総天然色付録】しゃばけ花札

【連載エッセイ・コラム】
酒井順子/徒然草REMIX
佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
沢木耕太郎/ブーメランのように ポーカー・フェース

【江戸のもてなし】
巻頭グラビア/福田 浩・松下幸子
連載エッセイ/松井今朝子

【新連載スタート】

◆橋本 紡/ハチミツ
――母親も違えば性格も違う三姉妹。外では色々あるけれど、今日も一緒に「いただきます!」――悩み多き女子ライフを描く待望長篇

【好評読み切りシリーズ】

◆北村 薫/象の鼻 飲めば都
――人妻となった都に仲間たちが開いてくれた宴は、めでたき御酒の御趣向なり

◆大崎 梢/あの日の場所へ ふたつめの庭
――優しかったお兄ちゃんはどこへ? 秘密を解く鍵は、あの日なくした手紙に

【冬の時代小説三昧】

◆宇江佐真理/小春の一件 古手屋喜十 為事覚え
――良縁を引き当てたけなげな娘。なぜか浮かない表情に、喜十の不審は膨らんで

◆諸田玲子/福寿草 お鳥見女房
――行方知れずの久太郎に、心を痛める珠世だが、今度は秋に大変なことが

◆安住洋子/照葉 小石川診療余話
――父は最期に何を思ったのか…姉が持参した遺品を前に淳之祐の心は揺れる

【好評連載小説】
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
石田衣良/明日のマーチ
大沢在昌/冬芽の人
今野 敏/転迷 隠蔽捜査4
佐々木 譲/警官の条件
小路幸也/荻窪 小助川医院
白川 道/神様が降りてくる
楡 周平/虚空の冠
原田マハ/夢をみた J'ai reve
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚

第七回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
第二三回「日本ファンタジーノベル大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

糸し糸しと言ふ心
 突然だけれども、「戀愛」をすっと読めるだろうか(文字化けになっちゃってたらごめんなさい)。
 この字面を迷いなく「れんあい」と読めるのは、ある世代以上の方に限られるだろう。恋、の旧字体である。
 今はほとんど見掛けないし、画数が多くてゴツイ雰囲気があるから、字だけでなく、恋愛の実態そのものも、一時代前という印象を受けるかもしれない。この「戀」を、漢字を覚えるための語呂として解体したものが、この文章のタイトルであり、2月号の特集タイトルでもあるのだが、初めて聞いたとき、上手い言い回しだと感心すると同時に、「なんだ、今も昔も何も変わってないじゃないか」と思った。
 何時の世も人が恋愛小説を読むのは、この「変わらなさ」故。今回の特集でも、その喜怒哀楽の普遍性は実感できると思う。
 今現在恋愛中の人も、そうでない人も、自分はどうだろう、あるいは自分はどうだったろうか、とそんなことを考えながら読んでいただければ幸いである。


小説新潮編集長 新井久幸

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