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【春の時代小説特大号】花のお江戸の満開の下

小説新潮 2011年4月号

(毎月22日発売)

特別定価1,047円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/03/22

発売日 2011/03/22
JANコード 4910047010411
定価 特別定価1,047円(税込)

【春の時代小説特大号】花のお江戸の満開の下

春が巡るたび、日本というのは凄い国だなと感じる。至る所で、桜が咲き誇るからだ。美しい眺めが味わえるのは、おそらく二週間程度。一年三六五日のうち、たった二週間。けれど、その僅かな期間の喜びのため、日本中に桜が植えられ、皆開花を心待ちにする。「桜前線」という言葉さえある国なのだ。不勉強にして知らなかったが、我々がよく眼にする桜・ソメイヨシノは一代雑種で、種子では増えないらしい。挿木や接木でしか広まらないから、つまりは総て初代のクローンということになる。起源は諸説あるが、江戸の中期から末期。ならば、我々が見ている桜は、江戸の人々が見ていた桜と同じなのだ、と言ったら強弁が過ぎるだろうか。
周りの風景は変わっても、満開の枝越しに仰ぐ空は江戸の昔と変わらない。今年の春は、そんなふうに桜を見上げてみたいと思っている。

◆志水辰夫/おなご道 蓬莱屋帳外控
――磔覚悟の道行き。しかも仙造がお伴する奥方は、ただ者じゃなかった!

◆加藤 廣/冥土の茶席 井戸茶碗「柴田」由来記
――落城を前に茶の湯で契る勝家お市。信長下賜の名器に茶々の将来を託して

◆諸田玲子/白暁 お鳥見女房
――相変わらず、久太郎の行方は知れないまま。珠世や恵以の焦燥は募る……

◆安住洋子/春告鳥 小石川診療余話 最終話
――淳之祐の前で最期の時を迎える仙蔵は、父と共に死んだはずの男だった

◆西條奈加/春の幽霊
――若旦那の手腕で「鱗や」の評判はうなぎ上り。だがそこに影をおとす人物が

◆田牧大和/始まりの織部
――えびす屋は何故に盗賊一味になったのか。陰で笑うのは役立たずの厄介者?

◆新城カズマ/持ち逃げ有楽
――謀叛の炎が上がる京都から脱出した信長の弟・織田長益。何処に向かう?

【連載第二回】

◆浅田次郎/赤猫異聞
――繁松が斬首される寸前、牢屋敷に火事を告げる半鐘が鳴り渡った

【好評読み切り連作】

◆北村 薫/ウィスキーキャット 飲めば都 最終話
――酒飲みの転落人生を目にした都さん。自分は安心と思ったその時!

◆重松 清/春がいっぱい かわいげ 最終話
――最近、ゴエモン二世の様子がおかしい。何でもないといいのだけど

◆畠中 恵/からかみなり しゃばけ
――通町に剣呑な雷が鳴り響く中、旦那様が行方不明になったって!?

【連載エッセイ・コラム】
柴門ふみ/大人の恋力
酒井順子/徒然草REMIX
佐藤 優/落日の帝国 私のイギリス物語
沢木耕太郎/ゆびきりげんまん ポーカー・フェース
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

【時代小説新連載】

◆葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩――
――維新の革命児はいかにして生まれたか? その少年時代の日々

◆蜂谷 涼/鬼の捨て子
――種痘の普及に命をかける怪物のような医者と、彼をめぐる二人の女

【江戸のもてなし】
――様々な日記や記録をもとに、江戸の宴会を再現する好評連載
巻頭グラビア/福田 浩・松下幸子
連載エッセイ/松井今朝子

【新連載】

◆阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
――世界に誇る日本文学の最高傑作を知る旅へ、最良のガイドとともに

【新シリーズスタート】

◆垣根涼介/勝ち逃げの女――君たちに明日はない PART4
――リストラ請負人・真介。やれやれ、今度の相手は「スッチー」ですか

【12ヶ月連続 総天然色付録〈アンコール〉】
しゃばけ花札 化粧箱

【好評連載小説】
荒山 徹/蓋島伝――長宗我部元親秘録
飯嶋和一/星夜航行
池井戸 潤/鋼のアリス
石田衣良/明日のマーチ 最終回
大沢在昌/冬芽の人
今野 敏/転迷 隠蔽捜査4
小路幸也/荻窪 小助川医院
白川 道/神様が降りてくる
楡 周平/虚空の冠
橋本 紡/ハチミツ
原田マハ/夢をみた J'ai reve
宮部みゆき/ソロモンの偽証
山本一力/べんけい飛脚

第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
第二三回「日本ファンタジーノベル大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

花のお江戸の満開の下
 花粉症を患って三十年近くになる。春が近づくと、「ああ、また花粉の季節か」と憂鬱にはなっても、待ちわびる気持ちは失せて久しい。それでも、桜の花を見ると心浮き立ってしまうのは、日本人のDNAのなせる業なのだろうか。
 満開の期間は短く、それとて風雨で一瞬にして散る。葉には毛虫もたかる手間のかかる木だというのに、僅かな開花を楽しむため、日本人は至る所に桜を植えてきた。きちんと定められているわけではないのに、桜を国花だと思っている人も多い。
 きっと、ずっと以前からそうだったのだろう。江戸時代の人も、こうやって春の桜を心待ちにしていたんだろうな、と思ったら、急に親近感が湧いてきて、今回の特集には「花のお江戸の満開の下」というタイトルを付けた。
 読み切り七本に加え、新連載が三本(うち二本は時代物)という特大号で、一足早い春の喜びをお届けする。


小説新潮編集長 新井久幸

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 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

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