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【新春読み切り特集】宇江佐真理/恩田 陸/垣根涼介/角田光代/今野 敏/さだまさし/朱川湊人/曽野綾子/千早 茜/諸田玲子

小説新潮 2012年1月号

(毎月22日発売)

特別定価1,047円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2011/12/21

発売日 2011/12/21
JANコード 4910047010121
定価 特別定価1,047円(税込)

年の初めのためしとて──

休みが近づいてくると、日頃できなかったあれこれについて、「この機会に」と計画を練りがちである。だが、そうそう思い通りには進まない。特に正月休みは、大掃除や年始参りなどに追われ、「結局何もできなかった」で終わることも多い。本好きであれば、買い込んでおいた本がそのまま積ん読になってしまった、という苦い経験が一度や二度はあるはずである。
時間のあるときに大著を、というのももちろん素晴らしいことだが、中短編の読み切りを、炬燵にあたりながら、あるいは寝る前に、一編ずつゆっくりと読み進めていくのも、なかなか乙な冬の夜の過ごし方ではないか。
そこに新しい出会いを提供するのが小説雑誌の使命であり、二〇一二年もなるべく沢山の発見をお届けしたいと期している。

◆宇江佐真理/落ち葉踏み締める 古手屋喜十 為事覚え
――弟を捨てろ――身勝手な母親の言葉に、少年が選んだのは

◆恩田 陸/火星の運河
――運河を船で漂う。別の船に横たわる女。ここは地球なのか……

◆垣根涼介/リヴ・フォー・トゥデイ 君たちに明日はないPART4
――高一で牛丼屋のバイトを始め、17歳で店長に。この男、何者だ?

◆角田光代/いつかの一歩
――本当に始めたんだ。居酒屋を。料理をしなかった、あの昔の恋人が

◆今野 敏/訓練 隠蔽捜査外伝
――武装訓練を課せられた畠山。一日目にして挫折感を味わうが……

◆さだまさし/遍路道・同行三人 空蝉風土記
――霊場・星ヶ森で遭遇した謎の老人は、音に聞く雲の仙人なのか?

◆朱川湊人/バタークリームと三億円
――ずっと心から消えないあの女の影。心の隙間に入り込んだのは

◆曽野綾子/天山の小さな春
――数千キロに及ぶ旅の果てに待っていた、いたましい物語とは

◆千早 茜/てがた
――大した付合いはなかった。なのに死んでからその存在が濃くなる

◆諸田玲子/新春の客 お鳥見女房
――穏やかな新年を迎える矢島家。が、遠来の客がもたらしたのは

新連載スタート

◆乙川優三郎/脊梁山脈
――著者が初めて描いた戦後の風景とは。待望かつ渾身の連載開始!

◆畠中 恵/ろくでなしの船箪笥 しゃばけ
――若だんなの元に届いた一枚の木札。誰かが助けを求めている!?

連載第二回

◆近藤史恵/キアズマ
――入部せざるを得なくなった自転車部。正樹が受けた手荒い洗礼は

◆田口ランディ/サンカーラ――この世の断片をたぐり寄せて
――なぜ私は旅するのか――。津波の映像が記憶の欠片を呼び覚ます

◆真山 仁/沈黙の代償
――農薬の恐怖は、放射能以上――。代田の発言が波紋を呼ぶ

◆米澤穂信/リカーシブル
――ここはただの寂れた街だ。余所者に知らせない秘密があるなんて

連載エッセイ
阿刀田 高/源氏物語を知っていますか
北村 薫/うた合わせ
柴門ふみ/大人の恋力
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
嶽本野ばら/地嶽八景亡者戯
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

連載ノンフィクション
大崎善生/赦しの鬼 団鬼六の生涯
高橋秀実/僕たちのセオリー 実録・開成高校硬式野球部

好評連載小説
赤川次郎/月光の誘惑
浅田次郎/赤猫異聞
飯嶋和一/星夜航行
井上荒野/ほろびぬ姫
大沢在昌/冬芽の人
熊谷達也/海峡の絆
柴田よしき/貯められない小銭IV 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
葉室 麟/春風伝――高杉晋作・萩花の詩
坂東眞砂子/Hidden times
藤田宜永/風屋敷の告白 還暦探偵
本多孝好/魔術師の視線
山本一力/べんけい飛脚

第八回「新潮エンターテインメント大賞」募集要項
次号予告/編集後記

編集長から

新年を彩る十の読み切り
 お正月休みと言ってまず思い浮かぶのは何だろう。子供の頃なら、書き初めとかお年玉になるかもしれない。大人になると、年末年始は、休みではあるけれども大掃除や年賀状作りで慌ただしいばかりで、大して休めない期間の代名詞に替わってしまう気がする。
 それでも、年末になるとその正月休みを心待ちにして、「あれもしよう、これもしよう」と思いがちだ。その計画を練るのが、実は一番楽しい。
 今年の話題作を読もうとか、この機会に大長編を、という気合いで買った本が、そのまま手つかずで旧正月を迎えたことはないだろうか。その代わり、というわけではないが、この年末年始は、少しまとまった時間があれば読み切れる、中短編を楽しんでみてはどうだろう。長くとも短くとも、「一つの物語」という意味では皆同じ。
 十本の読み切りで彩られた新年号が、あなたの側に届きますように。


小説新潮編集長 新井久幸

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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