「満」のひじき・高菜 (お惣菜パン) ――めいっぱいの具


川村: うわあ、めいっぱいひじきが入っている。このパンは食べていて気持ちいいですね。
ひの: 例えるなら「メシパン」という感じですね。どちらかというと、具の方がパン生地よりも多めに入っています。
川村: これ、一緒に入っているコーンもひじき味になっているのがいい。
ひの: メシパンは、男性でも好きな方が多い。おにぎりみたいな感覚なんだと思います。
川村: 高菜もジャコが効いていて美味しい。こういうパンってもともと日本にあったんですか?
ひの: いえ、一般的ではありませんでした。三軒茶屋にある「濱田家」という「満」の姉妹店がはしりです。10年くらい前ですね。
かち: みんな具にしっかり味がついているんですよね。白パンの生地はご飯っぽい感じで。フランスの人が食べたらどんな反応をするでしょう? 
川村: パンだとは思わないのではないでしょうか。別の食べ物でしょうね。そもそも、おかずとパンをこんな風に組み合わせる発想がないと思いますよ。フランス人にとってのパンは、日本人にとってのご飯のような存在、と思いがちですが、ちょっと違うと思う。日本だったらご飯がすすむおかず、「飯の友」っていう発想があるじゃないですか。それにカレーやら丼やらもある。もちろんパンがすすむという理由で豚のリエットとか、「パンの友」はあるけれど、パンにあわせた料理という発想はないと思うんです。むしろ、パンは「口直し」という存在に近いと思います。箸休めというか、おしんこ的な存在。
ひの: 『パリのパン屋さん』に取り上げられていた、6区の「Bread & Roses(ブレッド・アンド・ローズィズ)」のオーナーは、お惣菜とパンの組み合わせを考えていると書いてありましたね。イートインもあって。でもそれはとても珍しいことなんですね。
川村: そうなんです。「Bread & Roses」は、イートインに出すパンも料理にあわせて変える。フランスではかなり特殊なお店ですね。逆に、初めて日本を訪れたフランス人が驚くのが、クロワッサン・サンドイッチの存在。
ひの: えー、そうなんですか?! クロワッサンはサンドイッチにしちゃダメ! ってこと?
かち: クロワッサンは朝ごはんに、とか決まっているのかしら?
川村: うーん、ヴィエノワズリー(バターや砂糖入りのパン類。*ヴィエノワズリーとそれ以外のパンについては、『パリのパン屋さん』8~9頁「パンの種類」を参照)だから、そのまま食べる感覚なのでは。たまにカマンベールを挟んで食べる人はいますけれど。サンドイッチにするという発想は日本ならでは。日本のパンやパンの食べ方で、フランス由来と思われているけれど、実はそうではないものって結構あるんですよ。
小麦と酵母 満
本店:東京都新宿区住吉町8-10 ライオンズマンション市谷102 TEL:03-5367-4007
ecute品川店:東京都港区高輪3-26-27 ecute品川1F TEL:03-5420-5678
www.hamada-ya.jp








1974年、東京生まれ。大学卒業後、渡仏。1999年、パリの料理学校“Le Cordon Bleu”(ル・コルドン・ブルー)に入学。2001年、料理・製菓・パン課程修了。主に日本の女性誌・旅行誌で、フランスおよびパリの食にまつわる記事の執筆・取材コーディネートを手掛ける。また、自身でもフランスと日本の食材をつかった独自の料理研究をすすめている。著書に、『パリのビストロ手帖』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)。


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1999年にスタートしたパンサークル。以来、200回以上のイベントを開催。パン屋さん巡りやイベント開催を通して、「パンと人をつなぐ」をテーマに活動中。

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ハード系お食事パンからお惣菜パン、昔ながらの菓子パンまでなんでも大好きな“雑食系パン好き”。学生時代、初めてのパリ訪問で朝食に食べたクロワッサンとカフェオレには感動! 忘れられないパンの一つ。




ずっと変わらず好きなのはラスク。バリバリ、がりがりという食感が好きで、自称ラスク大臣。パリは何度か訪れていますが、地元の人のまねをして、お店を出たらすぐにバゲットにかぶりつくのが毎回の楽しみ。


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