ひの: |
『パリのパン屋さん』を読んでいてもう一つ気づくのは、いかにパリのパン屋さんが地元と密着した存在かってことでした。お店の人も毎日常連さんがきて、あれね、って感じなんでしょうね? |
川村: |
ええ、最近はフランスも高齢化社会で、一日のうち、会話をするのがパン屋だけっていうお年寄りもいるそうです。朝と夕、2回ずつ買いに来るおじいちゃん、おばあちゃんもいる。そんな地域の人との繋がりを大切にしたいと言っていたパン屋さんもいました。 |
ひの: |
最近は日本でも対面式のお店が増えたようです。でも緊張してしまう人もいるみたい。特に男性とかは。 |
かち: |
つくり手としては、きちんとパンの種類も食べ方も説明したいし、お客さんが求めているものも知りたい。そんな思いから、対面式にしたっていうお話をよく聞きますけれどね。 |
ひの: |
フランス人はパン屋さんめぐりってしないんですよね? 日本では全国をかけめぐっておいしいパンを探す人が結構いるんですけれど。 |
川村: |
聞いたことがないです。『パリのパン屋さん』の掲載店のなかで、わざわざ徒歩圏外から、乗り物にのって来るお客さんがいる店は「Du Pain et des Idées(デュ・パン・エ・デ・ジデ)」「Des Gâteaux et du Pain(デ・ガトー・エ・デュ・パン)」「Pain de Sucre(パン・ドゥ・シュークル)」ぐらいですね。「Du Pain et des Idées」は、フランス人でもパン・デ・ザミっていうパンをわざわざ買いに来るお客さんが結構いる。これは本当に美味しくって、私のなかではパリで一番魅力的なパンです。お二人は『パリのパン屋さん』のなかで行ったことがあるお店はありますか? |
かち: |
何軒か。モンマルトルの「Maison Laurent(メゾン・ローラン)」には、入ったんだけれど買わなかったんです。なんとなく買いにくい雰囲気で……。この本を読んでバゲットを買えばよかった……と後悔(笑)。次回こそ。 |
ひの: |
各お店紹介についていた、「メモ」の部分もとてもよかった。かなり率直に書いてあって。このお店のクロワッサンはムラがあるとか(笑)。 |
川村: |
メモ欄には実体験を盛り込みました。お店によっては、入るお店を間違えたかと思うほど、味が変わることがあるんですよ。外見も質感も同じなのに。敢えてかって思うほど……。 |
ひの: |
いい時に行きたい(笑)。 |
川村: |
そうなんです。それぞれのパン屋さんの個性を満喫するには予備知識というかちょっとした注意が必要かなと思って、メモを入れました。パリのパン屋さんって基本的に地元の人のもので、通ってこそ分かる部分もあるので。今回の本では「パン屋」そのものの持つ雰囲気やそこから見えるパリの暮らしそのものを一番伝えたかったんです。 |
ひの: |
それはすごく伝わってきました。川村さんが「まえがき」に書いていた通り、お店出たらパクリッというのをやりたくって。パリでは本当に道端で食べている人がいますよね。 |
川村: |
まあマナー違反らしいですけど。フランスのお母さんが、赤ちゃんに一番よく与えるのがバゲットの端っこなんです。溶けにくくって、長くしゃぶっていられるから。ちっちゃい頃からそうやって育っているから、パン屋さん出たらパンを食べるっていうのが普通なのかな(笑)。
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かち: |
なんて、贅沢。そうやって育つと全然違うでしょうね。だって粉だけですごく豊かな味がするんですものね。 |
川村: |
そうですね。それは日本と違うかも。 |
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川村: |
でも、今日、あらためて日本のパンの進化は本当にすごい、と思いました。中でもお惣菜パンのような日本発祥のパンは、大切にその味を守っていってほしいです。 |
ひの: |
今日、召し上がったもののなかで特に気に入ったものはありますか? |
川村: |
どれもすごく美味しかったですが、特に自分で買いに行きたいなあと思うのは、「ひじき」と「カレーパン」。次点は「やきそばドッグ」。「豆パン」は地味なんだけど、思い返したら、じわじわとまた食べたくなるかもしれません。 |
ひの&かち: |
なるほど、そう来ましたか。やはりボリューミイなものがお好きですね。今度私たちがパリに行ったら、美味しい楽しみ方を是非教えてくださいね。 |
川村: |
もちろんです。今日は美味しい思いが出来て楽しかったです。ありがとうございました! |