ひの: |
こんがりパンだパンクラブでは、毎月テーマパンを決めて試食会をしているのですが、これは、「焼きそばパン」がテーマのとき、一番人気だったもの。丸の内の「みんなのぱんや」で売っています。 |
川村: |
とってもジューシーですね。ぱさぱさしていない。焼きそばパンはもともとすっごく好きなんですが、とっても美味しい。 |
かち: |
焼きそばパンってふつうノドにつっかえる感じがあるんですが、これはすごく食べやすい。味がしっかり目なので飽きずに最後まで食べられますし。 |
ひの: |
以前、雑誌でフランス人が焼きそばパンを食べるという企画があって、炭水化物に炭水化物をあわせるなんてありえないという感想でした(笑)。やはりこういうのも…… |
川村: |
日本ならではでしょう。フランス人は、炭水化物に対する愛着があまりない気がします。パスタも美味しくないし。……でも食事にあわせてジャガイモはたくさん食べますね。『パリのビストロ手帖』でもいかにフランスのジャガイモが美味しいかを書きました。種類は豊富ですし、最近オープンの若手シェフの人気店はそうでもないですが、大体いつでもどこでも料理に添えられて出てくる。日本人にとってのご飯にあたる存在って、パンではなくて、ジャガイモかもしれない。ちなみにお米は野菜的存在ではないかな。添え物のひとつ。料理にお米があっても、パンは必ず出てきますね。 |
ひの: |
ジャガイモと米の立場が日本と逆なんですね。そういえば、旅行で行ったトルコでもピラフのお米があるのに、パンが出てくるのがすごく不思議で。 |
川村: |
そう。イタリアンでも、パスタを頼んでもパンは出てくる。それは、最後にお皿のソースをぬぐうためにあるのではないかと……。料理に合わせるという感じではない。何なんでしょうね、パンの存在って。 |
ひの: |
箸休めというのはすごく分かりやすいです。 |
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ひの: |
この焼きそばパンを売っている「みんなのぱんや」のお客さんはおじさま中心(笑)。同じビルの1階にある「VIRON」(バゲットが有名な、主にフランス系のパンを売る店)と同じ会社が経営しているなんて知らない人も多いと思います。店構えも全然違うし。 |
かち: |
こちらは高校の売店のよう。 |
川村: |
どうして、そんな両極な2店をやっているのでしょう? |
ひの: |
社長さんが仰るには、バゲットやクロワッサンを焼くことはできても、アンパンが上手につくれないという職人さんって意外と多いそうなんです。でも日本のパン屋さんとしては両方つくれないとダメだから、職人さんを育てる意味もあって、出店したそうです。ゆくゆくはいま働いている職人さんも独立していくのではないでしょうか。 |
川村: |
なるほど。 |
ひの: |
『パリのパン屋さん』のなかのコラム「パン屋さんの1日」でも、さまざまな職人さんが出てきて面白かった。特に折込生地の職人、トゥーリエの存在が気になりました。 |
川村: |
いまはすごく少なくなっているんですよ。パン屋さん自ら、うちにはトゥーリエがいるって宣伝するほど。 |
ひの: |
専門職ですよね。日本では聞いたことがない。日本にもパイルームがあるお店はあるけれど。 |
川村: |
『パリのパン屋さん』で取り上げた店のなかでは「Julien(ジュリアン)」「Du Pain et des Idées(デュ・パン・エ・デ・ジデ)」なんかにはトゥーリエがいます。「Pain de Sucre(パン・ドゥ・シュークル)」のシェフが教えてくれたのですが、パティシエというのは、お菓子屋という意味ではなく、「生地を焼く資格のある人の店」のことを指したそうです。だから昔のパティシエは、甘いものに限らず、パテアンクルート(パイにパテを入れたもの)とか料理のパイもつくっていた。で、そこで働いていた人たちがトゥーリエだそうです。 |