主人公の
SNSやネットの中では繋がっていても、現実の距離のとり方が難しいと感じる人は多い。佐藤さんの作品には、どこか不器用な一面を持つ登場人物が描かれることが多い。そして、最後のページを読み終えたとき、その背中をそっと後押ししてくれる温かさが、そこにはある。『明るい夜に出かけて』は、『しゃべれども しゃべれども』『黄色い目の魚』『サマータイム』『一瞬の風になれ』などの代表作に続く、青春小説の傑作です!
また、「波」5月号にて、上橋菜穂子さんとの「作家生活三十周年記念対談 『原点』そして『これから』」が掲載されています。デビュー作『サマータイム』が生まれたエピソードなど、物語に籠めた思いを語っていただきました。
「守り人」シリーズほか多くの作品で大人気の上橋菜穂子さんは、今年で作家生活30周年を迎えました。デビュー作『精霊の木』が、ついに文庫化。発売からたちまち重版となりました。
この物語は、環境破壊のために地球が滅亡し、人類が移住した星を舞台に展開するSF小説です。ナイラ星に住むシン少年と従妹のリシアは、失われた〈
本書は、上橋さんのその後の作品に繋がる「萌芽」を感じる瑞々しい物語です。平成元年に出版された作品が、30年の時を経て令和元年に文庫化となりました。デビュー当時を振り返った文庫版あとがきも収録。
また、「波」5月号にて、佐藤多佳子さんとの「作家生活三十周年記念対談 『原点』そして『これから』」が掲載されています。物語との関わり、『精霊の木』が生まれるまで、そして今日に繋がる道のりを深く語り合っていただきました。
野間児童文芸賞、産経児童出版文化賞、国際アンデルセン賞、本屋大賞、医療小説大賞など多くの賞を受賞され、ファンタジー小説を代表する作家である上橋菜穂子さんの活躍から目が離せません。
![]() 垣谷美雨/著 『うちの子が結婚しないので』 ![]() |
その名も、垣谷美雨著『うちの子が結婚しないので』。
昨年、野村周平さん主演でドラマ化した『結婚相手は抽選で』や、23万部突破(今年1月時点)の『老後の資金がありません』、それに続きヒット中の『夫の墓には入りません』など、社会派エンターテイメント小説の旗手である、垣谷さんの文庫オリジナル最新刊です。
本作のテーマは「親婚活」。
それは、親同士が未婚の子供の身上書を持ち寄り、代理でお見合いをするもの。昨今話題のこの婚活に家族一丸となって挑む様を、アラサーの娘を持つ母・千賀子の視点から描きます。
60代目前の千賀子が自分たち夫婦の老後の準備を考えた時、まず不安になったのが娘の将来でした。28歳独身、彼氏がいた気配もありません。女性向けアパレル会社に勤務し疲労困憊で帰宅する毎日で、出会いの機会もなかなかないようです。
千賀子と夫のフクちゃんが娘に結婚を望むのは、世間体などではなく、「自分たちが亡くなった後に不安で孤独な人生を送らないでほしい」という一心から。娘を説得し、千賀子一家は親婚活を始めます。
しかし、そこで待ち受けていたのは想像を超える衝撃でした。
外見や年齢、学歴、職業、年収など、容赦なく「条件」で値踏みされ、時に娘の全人格が否定されるようなサバイバル婚活に、一喜一憂しながら挑みます。
果たして、娘の良縁は見つかるのか――。結婚とは、家族とは、今の世の幸せとは、親が子供のためにできることとは。現代に問いかける小説です!
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2019年3月7日の朝日新聞に「平成の30冊」が発表され、村上春樹さんのインタビューが載りました。
1位に『1Q84』、10位に『ねじまき鳥クロニクル』――3部作の大長編が2作ランクインしていますが、村上さんは平成の30年間を振り返りつつ、真摯にインタビューに答えています。
「......深層意識の中に入って行き、出入り口を見つける。『ねじまき鳥』で初めて出てきた「壁抜け」は、小説的な想像力を解き放ち、物語の起爆装置になりました」
Seek&Find、地下迷路、そして壁抜け......村上ワールドを知る読者なら、その魅力はよくご存じだと思います。
今回文庫化された『騎士団長殺し』(文庫版:第1部・2019年3月1日刊、第2部・4月1日刊)は、屋根裏に隠された一枚の絵から始まり、「壁抜け」を想起させる物語が展開しています。
『騎士団長殺し』は2018年秋に英訳と仏訳が出たばかりで、今年2月『海辺のカフカ』の舞台上演に合わせてパリを訪れた村上さんは、当地で学生とのトーク・イベントを行い、大きな注目を集めました。
400字詰めに換算すると2000枚以上の大長編なので、今回、日本の文庫版では第1部と第2部をそれぞれ上下に分けて4分冊に編集し、読みやすくしました。
また、各巻の装幀は写真をもとにしたカバーデザインで、舞台になった小説世界をヴィヴィッドに感じていただけるようになっています。『1Q84』同様、単行本とはひと味違うカバーデザインをお楽しみください。
小社の雑誌「波」には、俳優の高橋一生さんの4000字にわたる魅力的な書評エッセイが掲載され、村上ファンも髙橋ファンも必読の文章となっています。
高橋さんは、「単行本を読んだのが小説の主人公と同じ36歳。読み始めてすぐ、これは僕の物語ではないか」と感じたそうです。
また同誌には、『大家さんと僕』の矢部太郎さんが、『騎士団長殺し』に触発されて描いたウィットに富んだマンガも収録されています。
傷つき失われた魂が出会い、厳しい試練をくぐり抜けて救われる『騎士団長殺し』の世界は、そのまま現代を生きる「私たちの物語」でもあります。『ノルウェイの森』以来となる一人称で描いた長編を読み直すことの意味はそこにあると思っています。
全国の書店には、文庫化に当たって高橋一生さん、矢部太郎さん、綾瀬はるかさんからメッセージをいただいたPOPを陳列しています。
またBEAMSと新潮文庫がコラボしたオリジナルデザインのサコッシュがなんと1000名様に当たるプレゼント企画もあります。
応募方法などは、第1部〔上〕の帯裏をぜひご覧ください。
サコッシュにとても可愛いペンギンのイラストが描かれています。でも、なぜペンギン? その理由は、小説の中に!
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応仁の乱前夜、幕府が弱体化し混迷を極める京の町。天涯孤独の少年、才蔵は、二人のならず者に出会い、彼らから生きる術を学んでいく――。
本作『室町無頼』は、これまで歴史時代小説であまり描かれることのなかった「室町時代」を舞台に描かれた画期的な作品です。
ヒーロー無き世の中だからこそ、民衆が主役になれ、秩序無き時代だからこそ、何が起こるかわからないエキサイティングさがある。著者の垣根涼介氏は、呉座勇一氏の『応仁の乱』がブームになる以前からこの時代に目をつけ、徹底的に調べた史実を下敷きに、極上の歴史エンタテインメントを書き上げました。
史実にも登場する二人の魅力的なはぐれ者、骨皮道賢と蓮田兵衛の奇妙な友情、才蔵が棒術の達人になるために経験する過酷な修業、民衆の思いがひとつになる血湧き肉躍る蜂起など、娯楽小説としての読みどころが満載の本作。しかしながら根底に流れるテーマは「混迷の世に、人はどう生きるか」という、現代人の悩みに通じるものです。
それは、垣根さんが手がけたリストラ請負人の活躍を描く「君たちに明日はない」シリーズにも通じるものがあります。主人公の村上は、さまざまな企業のリストラに立ち会い、サラリーマンが会社という拠り所を失った時の選択を目にしてきました。
室町という時代もまた、主君という拠り所を失った牢人たちが、自らの選択と自らの能力でサバイブすることを求められた時代でした。生きぬくために自分の能力を磨く才蔵、幕府の手下ながら自分で選択する道賢、組織に属さず常識を信じない兵衛。私たち読者にこの三人の無頼がとてもまぶしく感じられるのは、彼らが現代人にとっても理想的な生き方を見せてくれているからなのでは、と感じてしまいます。
エンタメでありながら自らの人生を鑑みるきっかけをくれる傑作です。垣根さんご本人がつづる本作への思いも、ぜひお読みくださいませ。
[→]垣根涼介ホームページ