新潮文庫メールマガジン アーカイブス
今月の1冊


 ゲームファンならおそらく誰しもが知っているであろう、天才ゲームクリエイター、小島秀夫。名前を知らない人も「メタルギア」「メタルギア ソリッド」というゲームタイトルを聞いてピンと来る人は多いはず。このゲームシリーズの立ち上げは、彼がコナミに入社した2年目の仕事とのことで、実に恐れいります。
 独立して最初のタイトルである「DEATH STRANDING」の発売は11月8日で、今年一番の注目作であることは間違いありません。(11月28日には、新潮文庫nexでそのノベライズ版も発売されます)
 そんな小島秀夫氏のたぐいまれなる創作力の根源は一体どこにあるのでしょう。
 本書を紐解けば、彼がどれだけ本を愛し、本屋へ通うことを日課とし、自分とは違うフィールドで戦うクリエイターたちの創作物を尊敬しているかがひしひしと伝わります。このように創作物を愛する人だからこそ、才能の頂に登ったのかと感動することひとしおです。現在の本好きの人はもちろん、かつて本好きだった人、仕事の忙しさや生活に追われて「何かを楽しむ」ということの素晴らしさを忘れてしまったような気がする人......。是非、本書で天才の発する熱量に触れてみてはいかがでしょうか。  音楽家、俳優と様々なジャンルで活躍する星野源氏との対談も巻末に掲載しています。

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2019年11月15日   今月の1冊


 TBSラジオ「問わず語りの松之丞」や、テレビ朝日系列「松之丞カレンの反省だ!」などメディアで最近よく見る神田松之丞さん。聞けば、嵐の松本潤さん、ジブリの鈴木敏夫プロデューサー、シンガーソングライターの椎名林檎さんなど、ファンを公言する著名人もたくさんいるそう。
 毒舌冴えわたるキャラクターもさることながら、一級品の話芸で快進撃を続け、未来の人間国宝との呼び声も高い講談師です。

「講談ってよくわからない」そんな方がほとんどだと思います。
 しかし「古典芸能ってつまらなさそう......」そんな人たちが松之丞さんをきっかけに、講談の沼にはまっています。

 かつて、落語を凌ぐほどの人気を誇った講談は、落語が架空のストーリーを語るエンタテイメント小説なら、実際に起きた事件などを題材に語るノンフィクションもの、といった説明をされることの多い話芸。
 一見地味にも見えるこの講談に今、異変が起きています。松之丞さんの出演される公演はチケットが軒並み即日完売。誇張なく、いま、最もチケットが取れない人なのです。

 前座→二ツ目→真打と昇進していくなか、二ツ目にしてここまで登りつめた彼の半生を自ら語り、杉江松恋さんがまとめたのが新潮文庫より発売中の『絶滅危惧職、講談師を生きる』です。
 ほかでは語られなかった生い立ちのこと、思春期のこと、古典芸能との出会い、そしてなぜ滅びかけの芸に惹かれ、神田松鯉への入門を決めたのか――。
 天才の光と闇が詰まった本書を読めば、新しいことを成し遂げる者の尋常ならざるたくらみと志にしびれます。
 来たる2020年2月11日に、真打へのスピード昇進、および「神田伯山」という大名跡を襲名することが決まった松之丞さん。長い講談の歴史のなかでこれがいかに重要な出来事なのか、長井好弘さんの寄稿も収録した文庫は、真打昇進への覚悟溢れる一冊です。

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2019年11月15日   今月の1冊


 何をバカな質問を、と思われた方も多いでしょうが、ある調査によると今や20代女性の半数以上が「忠臣蔵」を知らないと答えたそうです。10代となると男性でも認知度が3割を切るそうで(10代女子は2割以下!)、「え!? そうなの!?」と思われた方、年齢がバレますね。
 今の若者は教養がない! などという話ではないのです。「忠臣蔵」はかつては毎年のように新作映画や舞台、ドラマが公開されていた"日本人なら知らぬ者はない"年末エンタテインメントの大定番でしたが、なにせここ何年も新作がありません。若い人が知らないのも無理はないのです。
 登場人物が多いため、きらびやかなスター勢揃いの豪華な作品が作りやすいものの、ストーリーは知り尽くされています。新味を出すのが難しいですから、新作が出ないのも無理はない......と思いきや。
 この年末には大作映画が登場します。その切り口とは、

 ――「忠臣蔵」で仇討ちした人たちはお金、どうしてたの?

 前置きが長くなりましたが、それが『決算!忠臣蔵』です。主演は堤真一にナインティナインの岡村隆史。豪華俳優陣は 映画HP をご覧頂くとして、切り口も斬新ですが、全編関西弁の忠臣蔵は異色です。脚本を書いた中村義洋監督自ら筆を執り、今月、新潮文庫より小説版が刊行されました。
 御存知の方には不要の説明ですが、史実で言う「赤穂事件」は1701年(元禄14年)、江戸城・松の廊下で赤穂藩・浅野内匠頭(たくみのかみ)が高家筆頭・吉良上野介(きら・こうずけのすけ)に斬りつけるという刃傷沙汰が発端。ここから始まる事件を美談に仕立てたのが歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」です。
 この事件、吉良にはなんのお咎めもありませんでしたが、幕府が下した処分は浅野内匠頭は切腹、赤穂藩は御取り潰しというもの。「喧嘩両成敗」じゃなかったの? お家再興も却下? それはあんまりでは? と立ち上がった浅野家の家臣だった大石内蔵助(くらのすけ)以下、浪人47人が年も押し詰まった12月14日、雪が降りしきる中、吉良上野介を討って主君の仇を討ち、彼ら自身は粛々と切腹して果てました――この筋立てが日本人のハートを鷲づかみにしたのでした。
 しかし――お金はどうしてたんだ?
 という点に着目したのが東大史料編纂所の山本博文教授。『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書)という本を著したのですが、これを原作としたのが『決算! 忠臣蔵』というわけです。つまり、史実をかっちりと踏まえ、その上で、エンタテインメントに仕上げたのが本作というわけです。
 考えてみるまでもなく、討ち入るには刀や槍や鎖帷子が必要です。その費用は? 情報収集のためには目標の近辺に家を借りなければなりません。家賃がかかります。赤穂から江戸に行くには旅費だって必要です。そもそも、主家の御取り潰しから討ち入りまでの1年9ヶ月、生活費はどうしていたんでしょう。
 赤穂藩の家老だった大石内蔵助(堤真一が演じます)がすべてを束ねなければなりませんでした。お金の管理をしていたのは勘定方の矢頭長助です(岡村隆史が演じます)。彼らが実際にやったことと、その心労とは。予算内で仇討ちは果たせるのか?
 映画は11月22日公開予定です。
 映画の前に読んでも後に読んでも大丈夫、愉快でありながら、日本人としての魂が揺さぶられる一冊になっています。

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2019年10月15日   今月の1冊

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 18年ぶりのシリーズ新作長編が、ついに発売となりました。これまで公式サイトより配信する、「新作の第一稿が届きました」「発売日決定」「プロモーションビデオ完成」「タイトル発表」「書影公開」「カウントダウン開始」「見本完成!」......その他イベントのお知らせ等々、告知の度に注目を集めてきました。全国の書店ではカウントダウン・キャンペーンで盛り上り、オンライン書店Amazonでは予約注文が上位独占のなか、いよいよ10月12日(土)の全国一斉発売を迎えました。
 そして、新たなニュースで更に話題騒然! 『白銀の墟 玄の月』全四巻、二冊ずつ2ヶ月連続発売に続き、2020年には〈オリジナル短編集〉を刊行することが発表されました。
 そして、今回の新刊刊行記念〈全員プレゼント〉は、なんと、その中の一話が「先に読める!」 というもの。18年待ち続けたファンにとって、驚きと嬉しいニュースとなったことと思います。
 新作は、行方不明の麒麟が戴国に漸く還り、消息を絶ったままの王の行方を捜す怒濤の物語です。息を呑み読み進めるなか、次の短編集の「舞台は何処?」「登場人物は誰?」と思いを馳せてお待ちいただけますように。情報は公式サイトにて随時発表いたします。公式サイトはこちらから。「短編集」も、ご期待ください! 
 2020年も、「十二国記」から目が離せません。 新刊刊行記念〈全員プレゼント〉の詳細は、「十二国記」応募サイトでご確認ください(締切:2019年12月末日)。

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2019年10月15日   今月の1冊


 9月には主演・横浜流星で『いなくなれ、群青』が映画化され、 さらに、シリーズ累計部数が100万部を突破した階段島シリーズ。
 同作の著者である河野裕が描く新たな物語「架見崎」シリーズが、ここに開幕です!

 ある日、高校生の香屋歩の元に届いた謎の手紙。そこには「あなたは架見崎の住民になる権利を得ました」と書かれていた。架見崎? 誰も知らない街からの 招待状は、香屋と幼馴染の秋穂栞を思わぬ場所へと導いていく......。
 戦争。領土。そして、能力者。死と涙と隣り合わせの青春を描く、リーダビリティ抜群の青春エンターテインメント!

 第2巻は10月末、第3巻は12月末に刊行予定です!

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2019年09月15日   今月の1冊