新潮文庫メールマガジン アーカイブス
今月の1冊






窓の魚』(左)『白いしるし』(右)

 先日、第152回直木賞を西加奈子さん『サラバ!』が受賞しました。

 ピースの又吉直樹さん、歌手の椎名林檎さんはじめ芸能界でもファンが多い西さん、今回の受賞作はデビュー10周年を記念した力作でした。

 テヘラン生まれ大阪育ちという異色の経歴を持ち、ユーモアや言語のセンスが抜群。選考委員のなかには「村上春樹をほうふつさせる」という意見も出たほどだとか。
 作品によって読み味が全く異なる点が西作品の魅力でもありますが、今回は新潮文庫で読める二作をご紹介。

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2015年01月20日   今月の1冊

@バンチ!」コミックス(新潮社)で累計170万部突破の人気コミックス『ウロボロス―警察ヲ裁クハ我ニアリ―』(神崎裕也作)のドラマ化が決定。生田斗真さん、小栗旬さんを始め、ヒロインには上野樹里さん、ほかレギュラー共演に吉田鋼太郎さん、滝藤賢一さんなど豪華キャストの発表で注目を集めています。

 新潮文庫nexでは、小説『ウロボロス ORIGINAL NOVEL』イクオ篇・タツヤ篇(杉江松恋著、神崎裕也原作)を刊行いたします。
 ドラマ同様に新宿署時代を舞台にした、完全オリジナルストーリーです。
 ふたりが「金時計の男」に繋がる情報を求めてもぐりこんだ先で起きた殺人事件。イクオが現場で目撃した少女は、いったい何者なのか……?
 イクオ篇では警察小説として、殺人事件と現場となった組織と少女の謎に迫る。タツヤ篇では、同じ事件を発端にヤクザ同士の争いと殺人が発生。竜哉が容疑者にされ、組から破門されて追われるバイオレンス・サスペンスになっており、同時進行するふたつの物語が、意外な形で1つに結ばれる、まさに“ウロボロス”な2冊で、ドラマスタート前にウロボロスワールドの予習がオススメです!!

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2014年12月10日   今月の1冊



映画「花宵道中」公式サイト

 宮木あや子さんの第5回R-18文学賞受賞作『花宵道中』(新潮文庫)が豊島圭介監督で映画化、11月8日からテアトル新宿ほか全国で公開されています。

 吉原遊女の純愛を描くこの作品でヒロイン・朝霧を演じるのは、安達祐実。相手役の淵上泰史(GoogleのCMで子どもたちと踊っていましたね!)、妹女郎役の小篠恵奈ほか、友近、高岡早紀、津田寛治と個性派の俳優陣が脇を固めます。

 写真集『私生活』を撮影したカメラマンと「再婚間近」と報じられ“私生活”も話題の安達さんですが、この映画では体を張った「オールヌード」に初挑戦。女優としての新境地を開いた妖艶すぎる「濡れ場」も見どころです!




花宵道中
宮木あや子

どんな男に抱かれても、心が疼いたことはない。誰かに惚れる弱さなど、とっくに捨てた筈だった。あの日、あんたに逢うまでは――初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……儚く残酷な宿命の中で、自分の道に花咲かせ散っていった遊女たち。江戸末期の新吉原を舞台に綴られる、官能純愛絵巻。R-18文学賞受賞作。

ISBN:978-4-10-128571-9 発売日:2009/08/28

文学賞 映画化

693円(定価) 購入



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2014年11月10日   今月の1冊



 宮部みゆきさんの最大にして最高の現代ミステリー『ソロモンの偽証』[全6冊]が3ヶ月連続で刊行中です。第I部は、発売一週間で増刷決定。この秋一番の話題作となっています。「第II部 決意(上・下)」は9月末発売。「第III部 法廷(上・下)」は10月末に発売です。

 クリスマス未明に転落死したひとりの中学生。彼の死は、殺人か、自殺か――。謎の死は疑念を呼び、やがて学校は悪意で満たされていきます。目撃者を名乗る匿名の告発状。マスコミによる一方的な報道。大人の都合に翻弄される生徒たちは、真実を求め、ある決断を下します。それは「学校内裁判」という伝説の始まりでした――。

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2014年09月10日   今月の1冊

 塩野七生さんの大作『ローマ人の物語』の続編とも言うべき『ローマ亡き後の地中海世界』。その単行本が刊行されたのは2008年12月(上巻、文庫版での1・2巻に相当)、そして2009年1月(下巻、文庫版3・4巻)のこと。

 ローマ帝国が健在だった時代、地中海は「内海」であり、交通路ともいえる存在でした。ところが西ローマ帝国が滅亡すると、地中海の制海権を握ったのはイスラム化した北アフリカの海賊になります。人々をつなげる穏やかな海だったのが、人々を分断する戦争の舞台になってしまったのです。本作ではヨーロッパのキリスト教連合国が北アフリカの海賊、そしてその海賊を海軍として吸収したオスマントルコ帝国との対立が描かれます。

 刊行当時はインド洋ソマリア沖での海賊行為が飛躍的に増え、日本籍船の被害もさかんに報道された時期でもあります。2009年3月からは海上自衛隊が対策のために現地での活動を開始、現在も約600人の隊員が護衛艦2隻とP3C哨戒機2機で警戒に当たっています。いま自分が編集している作品と現代のニュース報道とが呼応するのに、とても驚いたのをよく憶えています。

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2014年08月11日   今月の1冊