ホーム > 書籍詳細:瀬戸内寂聴全集 〔第十八巻〕〈長篇14〉

21世紀の読者に向けて自らが精選した決定版全集。 

瀬戸内寂聴全集 〔第十八巻〕〈長篇14〉

瀬戸内寂聴/著

6,480円(税込)

本の仕様

発売日:2002/09/10

読み仮名 セトウチジャクチョウゼンシュウ18チョウヘン14
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 瀬戸内寂聴全集
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 492ページ
ISBN 978-4-10-646418-8
C-CODE 0393
ジャンル 全集・選書
定価 6,480円

徳島、京都、練馬、目白、中野、本郷……著者の生きてきた場所を辿った自伝的な連作小説「場所」。釈迦に二十五年間仕え、入滅に至る最後の旅にも供をしたアーナンダの視点をもって、出家以来何度も書こうと試みてきた釈迦の生涯の物語を、本全集のために書下ろしとして完成させた新作長篇小説「釈迦」を収録した。全巻完結。

著者プロフィール

瀬戸内寂聴 セトウチ・ジャクチョウ

1922(大正11)年、徳島生れ。東京女子大学卒。1957(昭和32)年「女子大生・曲愛玲(チュイアイリン)」で新潮社同人雑誌賞受賞。1961年『田村俊子』で田村俊子賞、1963年『夏の終り』で女流文学賞を受賞。1973年11月14日平泉中尊寺で得度。法名寂聴(旧名晴美)。1992(平成4)年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、1996年『白道』で芸術選奨、2001年『場所』で野間文芸賞、2011年に『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。著書に『比叡』『かの子撩乱』『美は乱調にあり』『青鞜』『現代語訳源氏物語』『秘花』『爛』『わかれ』『いのち』など多数。2002年『瀬戸内寂聴全集』が完結。2006年、文化勲章を受章。

目次

場所
釈迦
解説 瀬戸内寂聴

解題

インタビュー/対談/エッセイ

生まれ変わっても小説家になりたい

瀬戸内寂聴

『瀬戸内寂聴全集』完結記念インタビュー

――「瀬戸内寂聴全集」全二十巻が、最終回配本の第十八巻をもって完結いたしました。完結を迎えていまのお気持ちは?

 毎月一巻ずつの刊行ですから一年九ヶ月かかったのですが、早かったですね。無我夢中だったのであっという間でした。今は「これだけの作品を、よく書いたなあ(笑)」というのが正直な感想です。書下ろしの小説がなかなか書けなくて、これを収録する第十八巻を最後の配本にしていただきましたが、もう出ないんじゃないかと周りを心配させましたから、とにかくこの巻が出てよかった、これが一番うれしいんです。書き終わったときはうれしくて飛び跳ねちゃいましたよ(笑)。
 各巻に自分で「解説」を書いたのは毎月連載をしていたようなものですが、結構楽しんで書きました。これだけの量の小説ですから、誰かに頼んだら読んでもらうのも大変だったでしょうけれど、自分の小説はもう頭に入っていますから、書いた当時の事などをふり返るのが面白かった。読みながら自分で「なかなか上手いじゃないの」(笑)なんて結構愉しんで書いてきました。

――「場所」(第十八巻収録)は解説から生まれたのですね。

 はじめ「場所」は全集の私解説のつもりで書き始めたんです。ところが第二回を書いたあたりで手応えを感じて、解説としてでなく、小説にしたいと思って方法を改めたんです。一年をかけて自分の住んだ、あるいは忘れたくない場所を巡って連載を続けて、本にまとめました。それで新たに解説を書かなければいけなかったのですが、ちっとも苦にならなかった。この「場所」で思いがけなく野間文芸賞をいただいて、ありがたかったです。
「釈迦」を書きあげて、八月にテレビの仕事で半月北京へ行って、「いずこより」で描いた当時住んでいた場所や記憶にある土地を歩いて来ました。こんなに変化の激しい中国で、これまで何度行ってもわからなかった大切な場所がまだ残っていてびっくりしました。「場所」を連載中は北京へ行けなかったので、改めて「場所・北京篇」が書けそうです。

――全巻をふり返って、とくに印象深い巻はどれでしょうか。

 私は第四巻(短篇2)の時代で変化があったんですよ。だいたい四十三歳頃から四、五年の間の作品ですけれど、いくつも同時に連載したり、がむしゃらに書いていたんです。私生活でもゴタゴタがあって大変でしたけれど、この間は自分が小説家としても意識的に変わった時で、非常に印象が強いのです。一篇一篇書いていた情景や人知れぬいろんなことが思い出されます。「龍燈祭」とか「さざなみ」「公園にて」「墓の見える道」などの作品は、どれもすぐに思い出が蘇ってくる好きな作品です。「蘭を焼く」で、自分の小説が変えられたと思いました。

――全集ならではの構成も魅力です。

 良寛、一遍、西行という三人の出家者の生涯をそれぞれ描いた第十七巻の「手毬」「花に問え」「白道」は私なりに仏教者を書いた作品群ですから、これらを一冊で読めるのはお買い得だと思いますよ(笑)。それから第十二巻「美は乱調にあり」「諧調は偽りなり」も、若い人には社会主義って面白いんだ、と新鮮に思ってもらえるようでうれしいです。「田村俊子」や「かの子撩乱」、「遠い声」の管野須賀子や「余白の春」の金子文子、「青鞜」の平塚らいてう達の伝記小説も是非若い方に読んでもらいたい。普通の生活からはみ出す情熱を持った女たちに、私は魅力を感じるんです。また第一巻で初めて私のデビュー作「女子大生・曲愛玲」や、文壇から冷たい扱いを受けた「花芯」を読んだ方からも、こんなに面白い作品だったとは知らなかったと手紙をくれますので、全集が出て、若い読者が出来てよかったと感慨深いです。

――秋山駿氏の月報、横尾忠則氏の手による装幀も格別です。

 普通の全集のように毎月いろんな方が月報にお書きになるのではなくて、秋山駿さんに二十巻通して「瀬戸内寂聴論」を書いていただけて光栄でした。毎月自分でも楽しみでしたし、あとで一冊の本でじっくりと読みたいですね。
 横尾忠則さんの真っ赤な装幀が素晴らしかったでしょう。「赤は瀬戸内さんの情熱の色だよ」って、いい赤を選んでくれました。二十冊並ぶと迫力があって壮観です。本の中のオリジナルの絵も素晴らしくて、読者にも喜んでいただけたと思います。

――書下ろし新作「釈迦」について聞かせて下さい。

 釈迦という題材をいかに面白く読ませるか、親しみやすく身近に感じさせるか、という自分なりの工夫をしました。釈迦に二十五年仕えた侍者アーナンダの視点から描くことにした時、ようやく書けると思いました。また、女性がたくさん登場しますが、例えばアーナンダのお母さんという人は経典にはないけれど、どうしてもああいう人が浮かんできて消すことが出来なかった。釈迦が何故あれほど女を嫌ったか、ということについても自分なりの解釈を提示したんです。また経典では悪人とされているデーヴァダッタの人物像を、私なりの見方で描くのも勇気が必要でしたが、あくまで私の小説「釈迦」を書いたのだと考えています。
 苦しかったけれど、今だから書けたのだと思います。釈迦の最後の旅は八十歳の時です。私も今年八十歳になったから、書いていても非常に納得がいくところがありました。二千五百年前の八十歳は、今だったら百二十歳位の感じだったかもしれないけれど、やはり八十年という歳月が私に「釈迦を書ける」という自信をもたらしました。これまで何度も書き始めたのですが、たちまち書けなくなっていました。やっぱり機が熟すのに歳月がかかったのでしょう。
 釈迦の歩いた道はもうインドへ十二回くらい行って辿っているので書けたと思います。釈迦の生まれた場所も、悟りを開いた場所も、竹林精舎も祇園精舎も涅槃の地もすべて訪れて、そこに立ちました。頭だけではわからないことがたくさんあります。インドへ行っている時は、釈迦を書くためになどと考えたこともありませんでしたけど、あの旅がすべてこの「釈迦」に結びついていたのでしょう。このテーマで書きかけるたび、その雑誌がつぶれる、ということが二度ありましたから、構想から数えるともう二十年。この歳月があってこそ書けたんですよ。

――書下ろしという形式は二十五年前の「比叡」以来です。

 書下ろしは苦手なんです。連載だと前へどんどん進めるけれど、書下ろしだと手元に原稿が溜まっているから、どうしても初めから読み返しては直して、また直して、と前へ進めないんですよ。今度は全集のゴールという目標があったからがんばったの。もう書下ろしは嫌(笑)。でもその苦労の跡が見えないくらいするすると読んでもらえたらうれしいわ。

――全集が完結して次への意欲が湧いていらしたのでは。

『源氏物語』が出たときにもう死んでもいいと思って、全集が出るのが決まったとき、この刊行が終わるまでは……と思った。完結して、もう書くことなんてないわ、と思っていたけれど、やっぱり次に書きたいものが出てくる。泉の水は汲むほど湧いてくるように、頭を空っぽにすると、また出てくる。作家なんて本当はこんなに割の悪い仕事はない。書くことが好きでないとできませんよ。書き終わったときの、あの喜びがなんとも言えないんです。書いている間は他のことは何も出来ない、風呂にも入りたくない。毛穴が広がって書きたいことが出ていってしまうような気になる。人と話もしたくない。だから孤独に強く耐えられる人でないと小説家になれないでしょうね。でも私は生まれ変わっても、小説家になりたいわ。小説家になって後悔はしていません。
 ただ、この全集にはまだまだ入れたい作品がたくさんありましたねぇ。随筆ももっと読んでもらいたかったし、心残りが色々あるんです。何といっても五十年で十万枚余りの原稿用紙に書いてきたんですから。死んだら、もう次の全集は出してくれないでしょうね(笑)。

(せとうち・じゃくちょう 作家)
波 2002年10月号より

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