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白洲正子全集 第六巻

白洲正子/著

6,270円(税込)

発売日:2001/12/10

書誌情報

読み仮名 シラスマサコゼンシュウ06
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 白洲正子全集
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 520ページ
ISBN 978-4-10-646606-9
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 6,270円

日本文化の美しさを教えてくれた“語り部”の全貌を明らかにする、初の全集。

平家物語の世界、その様々な登場人物の生のきらめきと哀しみを華麗な筆さばきで現出させた「旅宿の花」、近江を舞台に、壮大な古代の物語を訪ねる「近江山河抄」など、気迫を感じさせる諸作。

目次
旅宿の花――謡曲平家物語
まえがき 平家物語と謡曲
野べの草 妓王・妓女
仏の原 仏御前
鬼界ヶ島の流人 俊寛僧都
あづまの花 熊野
鵺 源三位頼政
嵯峨野の月 小督の局
倶利伽羅落し 木曾義仲
粟津ヶ原の露 今井兼平・巴御前
帰郷 斎藤別当実盛
恋の音取 左中将清経
箙の梅 梶原源太景季
旅宿の花 薩摩守忠度
青山の琵琶 但馬守経正
青葉の笛 無官大夫敦盛
王朝の美女 小宰相の局
須磨の埋れ木 武蔵守知章
千手の前 三位中将重衡
藤戸の渡り 佐々木三郎盛綱
八島の合戦 九郎判官義経
正尊の起請文 土佐坊昌俊
船弁慶 新中納言知盛
碇かずき 新中納言知盛
日向の勾当 悪七兵衛景清
観音の利生 主馬八郎左衛門盛久
平家最後の人 六代御前
みちのくの悲話 佐藤嗣信・忠信
大原御幸 建礼門院
近江山河抄
近江路
逢坂越
大津の京
紫香楽の宮
日枝の山道
比良の暮雪
あかねさす 紫野
沖つ島山
鈴鹿の流れ星
伊吹の荒ぶる神
立木観音から田上山へ
回峰行その後
エッセイ 一九七四―一九七五
乱世に開いた花
神々のふるさと
花を活ける
古都のこころ
解説・解題

書評

波 2002年11月号より 「白洲正子全集」の魅力  「白洲正子全集」

青柳恵介

個人全集を読む楽しみは、その代表的な述作に混じった小篇を読み、この人はこんなことも考えたり感じていたのかと、些細かもしれないけれども思わぬ発見をするところにある。
たとえば「白洲正子全集」第十四巻には文字通り「ささやかな発見」という短いエッセイがあり、そこにこんな話が書かれている。十歳の頃、学習院の遠足でお浜離宮に出かけ、少女正子は沖行く蒸気船を眺め「お前はえらいよ、西郷さんだよ、蒸気ははしるよ、オナラは臭いよ」と歌ったという。そんなことはすっかり忘れていたが、それから七十年以上が経って白洲正子は友人に、「わたしはその歌に一生救われたのよ。それだけに頼って生きてこられたの」と言われてキョトンとする。友人は、わがままな亭主の勝手なふるまいに接する度に「お前はえらいよ、西郷さんだよ」と歌って気を紛らかしていたらしい。八十六歳の白洲正子は「考えてみればとるにもたらぬ話だが、案外とるにもたらぬささやかなものの中に人生にとって大事なことがかくされている場合は多い」と書いている。
もちろん、こんな話は『白洲正子自伝』には出て来ない。子供の頃の思い出と言えば、無口で不機嫌で自閉症に近かったと『自伝』には記している。しかし、一方では大きな声で「蒸気ははしるよ、オナラは臭いよ」と歌って友達を笑わせる、何か彼女の生涯を貫いて発散した天衣無縫の明るさのようなものが感じられるだろう。彼女自身が気づいていない己の気質を「ささやかな発見」と呼んでいるように思われる。長生きをした人の全集ならでは味わえぬ読書の醍醐味である。
全集は歌で言えば私家集に相当する。一首の名歌が生れるまでに、いかに沢山の類歌がよまれ、モチーフを温める過程を必要としたか、それは私家集を読む者の共通した感慨であろう。全集も同じだ。
「白洲正子全集」には何度も繰り返し語られる話題がいくつもある。小学校に上る前、母親と共に維新前に大久保利通が逼塞していた京都の暗い家で暮したこと、結婚してまだ間もない頃に初めて大和の聖林寺を訪れ、そこで眺めた十一面観音のこと、苦労して手に入れた高価な紅志野の香炉を手放したときのこと、青山二郎と初めて出会ったときのこと、並べられた盃の値をつけてみろと小林秀雄に迫られたときのこと、そして西国巡礼の経験。あげて行けばまだまだあるが、それらの経験を、一つの器物をあちらから眺め、こちらから眺め、そして光の強弱を調整して眺めるが如く、白洲正子は繰り返し語っている。
一人の人間が一つのモチーフを生涯の中でどのように温めるか、言わばそれこそが作家の秘密であろう。その秘密に接近しようとすれば、全集を読むことから始める以外に道はない。

(あおやぎ・けいすけ 白洲正子全集編集委員)

▼「白洲正子全集」全十四巻/別巻一は、発売中

著者プロフィール

白洲正子

シラス・マサコ

(1910-1998)1910年東京生まれ。幼い頃より能を学び、14歳で女性として初めて能舞台に立ち、米国留学へ。1928年帰国、翌年白洲次郎(1902〜1985)と結婚。古典文学、工芸、骨董、自然などについて随筆を執筆。『能面』『かくれ里』『日本のたくみ』『西行』など著書多数。1998年没。

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