Yonda? Mail購読者のみなさん、こんにちは!
突然ですが、みなさんには人に言えない秘密や趣味はありますか? 12月新刊『自縄自縛の私』は蛭田亜紗子さんがR-18文学賞大賞を受賞した表題作を始め、ちょっと変わった趣味や性癖を持つギリギリの女の子たちを描いた短編集です。
表題作の「自縄自縛の私」は竹中直人監督で2013年2月全国公開の映画化が決定! 今大注目の一作です。主人公は上司の理不尽さに耐えながら、真面目に働くごくごく普通のOL。ですが家ではひとり、ボールギャグと呼ばれる猿轡をはめて、アイマスクを着け、自らの身体を麻縄で縛り上げ、しばしの快楽に浸ります。
……ぎゃー変態女、気持ち悪っ! とここまで読んで思った方、本書を読んでみてください。日々のストレスに押しつぶされそうな自分を保とうと必死で、とっても健気な女の子の気持ちが、胸にじんわり沁みてきます。エロティックなのにいやらしくない、突拍子もない設定なのに何故か共感を呼ぶ――不思議な作品に仕上がっています。
さて、全6編あるこの作品。他のお話の女の子たちの、ちょっと人には言えない秘密も、少しご紹介しましょう。
・使用済みコンドームを冷凍庫にコレクションしている女の子
・キツキツのラバースーツを着用するのが唯一の愉しみな女の子
どうですか? ちょっと刺激的すぎますか?
もっと甘酸っぱいお話も入っていますよ。例えば今回文庫書き下ろしで加えられた「渡瀬はいい子だよ」。主人公は初恋と性の目覚めに悩む女子高生。しかもクラスの女の子たちの手紙やポーチの中をこっそり漁る癖が収まりません。他人の物を盗み見てちょっとドキドキした経験や、初恋のかっこわるさを思い出しながら読める、素敵な作品です。
「自縄自縛の私」がR-18文学賞大賞を受賞した際、選考委員をされていた角田光代さんは「体があるからこその快楽と、その体という入れ物がもたらす不自由さ、という矛盾が、この小説にしか描き出せない孤独感となって、かなしいほど切実に伝わってくる。」と評しました。
そう、孤独感! この本に出てくる主人公たちはみんな、不器用で健気で愛しい。そしてどこか孤独感を抱えています。きっとそれは誰でも抱えている気持ち――だからこそ、こんなに刺激的なお話たちなのに共感を覚える作品に仕上がっているのかもしれません。
しかし! この本のエロさも切なさもこんなもんじゃありません。是非、本書を手にとって味わいつくしてください。