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宮部みゆきさん、西加奈子さん 強力推薦! 職場で揺れ動く私たちの心を映す、共感あふれる小説集

 新潮文庫初登場、芥川賞作家・津村記久子さんの『とにかくうちに帰ります』は、毎日の仕事に味気なさを感じる人たちにこそ読んで欲しい、共感にあふれた職場小説集です。

 好人物の職場の男性に、大切な私物の万年筆を持ち出された、女性事務員の心のもやもやを描く「職場の作法」や、南米のマイナーフィギュアスケート選手の動向を、並々ならぬ関心をもって追い続ける同僚の心のうちを思う「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」など、描かれる職場の人間模様には、勤め人なら必ず思い当たる場面があるはずです。

 

 表題作の『とにかくうちに帰ります』は、豪雨に見舞われた沿岸の埋め立て地に建つ事業所が舞台。最寄りの駅まで歩けば30分はかかる通勤路は、くるぶしまで水に浸かり、横殴りの雨は激しく吹き付けやむ気配もありません。バスも電車もストップし、陸の孤島と化した職場から、それでも帰宅を試みようと会社員たちは涙ぐましい努力を続けます。

 不安にかられて早仕舞いのコンビニでやたらと食料を買い出す人、見知らぬ小学生にずぶ濡れのまま離婚危機にある自分の境遇を打ち明ける人など。無味乾燥な仕事に日々すりへっていく人々の心をよぎる様々な思いは、びっくりするほど鮮やかで、読み進むほどに、私たちの意識の底にあるものを気付かせてくれるようです。

 本作品集に、宮部みゆきさんは「読み進むうちに雨の冷たさも人の優しさも身に染みてくるという逸品。もう可笑しくて楽しくて、大好き」と、最大級の賛辞を寄せて下さり、文庫解説の西加奈子さんも「私たちのささやかで、でもとても大切な日常に光を当ててくれる小説です」と作品への深い愛情を述べていらっしゃいます。

 心をざわつかせてはすぐに消える一瞬を絶妙に積み重ね、私たちを励ましてくれる「あるある! いるいる!」的物語を心ゆくまでお楽しみ下さい!


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2015年10月15日   お知らせ
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