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その筒井氏の文庫最新刊『聖痕』が12月新刊で登場です。あまりの美貌ゆえ、5歳のときに暴漢にペニスを切り取られた主人公の葉月貴夫の半生と、人類が破滅へと向かう今という時代を重ね合わせながら、小説技術の粋を尽して書き上げた現代の「黙示録」ともいうべき作品です。『旅のラゴス』と通底する、筒井氏ならではの文明批評論的内容を含んだ魅力あふれるストーリーが展開します。
『聖痕』は、その特異な主人公の生い立ちもあって、朝日新聞に連載された時からセンセーショナルな話題を呼びましたが、文庫版のカバーは連載時に掲載された長男の画家・筒井伸輔氏の絵を使った装丁です。また、巻末に収録されている東浩紀氏の解説は、筒井氏自身も驚いたほど作品に対する深い洞察に満ちた素晴らしい評論で、ファン必読の筒井康隆論といえるでしょう。この解説執筆が機縁となり、11月29日には東京・五反田の東氏が主宰するイベントスペース「ゲンロンカフェ」で筒井氏と東氏の対談も予定されています。
さて、筒井ファンに朗報があります。新潮文庫では『聖痕』を含む12月新刊刊行と同時に年末年始フェアを展開しますが、その中で長らく手に出来なかった筒井作品の『おれに関する噂』と『エロチック街道』を復刊する予定です。『おれに関する噂』は、平凡なサラリーマンが突然、テレビや新聞、週刊誌に騒ぎ立てられる珍騒動を描いた表題作の他、読者を黒い笑いと狂気に誘う11編を収録した伝説的といっていい短編集です。この春、丸善ジュンク堂チェーンで限定復刊したものですが、大好評につき全国の書店向けに本格復刊を決定しました。
また、『エロチック街道』は裸の美女の案内で奇妙な洞窟の温泉を滑り落ちるエロチックな夢を映し出す表題作の他、幻想小説、言語実験、ナンセンス、パロディ、純文学にいたるまで変幻自在の18編を収録した筒井ワールド全開の短編集です。さらに、翌月以降も、ショートショート傑作集『くたばれPTA』の復刊や、あらたなオリジナル自選傑作短編集の刊行を予定。書店店頭を筒井色で染め上げようという計画です。
そして、待望の最新作長編『モナドの領域』の単行本が12月3日に発売されます。文芸誌「新潮」10月号に330枚の書下ろしを一挙掲載。読書界の話題をさらい、「新潮」が異例の増刷を決めた「最後の長編にして、最高傑作」(筒井氏)が、読者の強い要望でスピード単行本化。今年の出版界の掉尾を飾る大事件といえるでしょう。今年の年末年始は、どっぷりと筒井ワールドに浸ってみてはどうでしょうか。