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「侍らしさ」が通用しない時代に、侍たちはいかに生きたか。

 時代小説といえば、剣の達人や武士道の世界というのがお決まりのイメージ。でも、 本当に「侍らしい侍」なんていたのでしょうか? じつは江戸の中期は、剣に生きる 人生など過去の価値観となっていました。「武士の一分」よりも、藩政改革や財政立 て直しを要求され、武士の筋目を通さんとすれば、組織に縛られ裏切られ、挙句に身 をやつして用心棒で生計を立てる侍も出てきます。

 直木賞作家・青山文平さんは、 そんな時代を「型通りの生き方が通用しなくなった時代」と捉えています。 「侍らしさ」など全く頼りにならない時代に、侍たちはいかに、自身の人生を掴み取ったか。 青山さんは、「正解」などない人生の岐路と、それぞれの決断を描いていきます。

 友を斬れという重い藩命を受けた男を描く表題作をはじめ、 行き倒れの侍を介抱したことから劇的な結末を迎える「三筋界隈」や、 城内の苛めで出仕できなくなった若侍が再生する「夏の日」など、いまの私たちの隣にいても 不思議でない侍たちの息づかいが伝わる傑作六篇です。

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2017年05月15日   お知らせ / 今月の1冊
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