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「教室」が遠くなった今だから読んでほしい 「あとがき」も収録。名作アンソロジー。


「教室で出会った重松清」という不思議なサブタイトルに、首をひねった方も多いかもしれません。本書は、教科書や問題集にたびたび登場する、つまり「教室で出会った」、著者の小説を集めたアンソロジー。それで、このサブタイトルが付いた、というわけです。
 なかでも表題作「カレーライス」は、小学五年生の教科書に使われている超有名作品です。小中高生から若いおとなの皆さんのなかには、「ああ、あのお話ね」と思い出す人も大勢いることでしょう。そのほかにも、文庫初収録の「あいつの年賀状」や、思わず涙がこぼれる「バスに乗って」など、教育現場ではおなじみの名作を九編収録しています。
 そして今回、ぜひお読みいただきたいのは、著者による「あとがき」です。以下に一部を抜粋します。
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 本書の編集作業は、二〇二〇年の春に進められた。
 教室に入ることのできない春だった。(中略)「教室で出会った」という副題が、こんなにも重い意味を持ってしまうとは、桜の花芽が目覚めた一月頃には思いも寄らなかった。
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 この「あとがき」は、二〇二〇年の四月に書かれました。大学で教えている著者にとっても、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は甚大なものでした。キャンパスが封鎖され、会えないままに卒業していった学生たち、オンライン上でしか顔を合わせられない在校生たち。同じように、教室で出会う機会をうばわれてしまった人は、きっと少なくないでしょう。
 だからこそ伝えたい、教室、あるいは教室ではない場所で学ぶすべての人への著者からのメッセージが、この「あとがき」に込められています。ぜひとも、九つの名品とともにお読みいただければうれしいです。

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2020年07月25日   今月の1冊
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