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金が人を駆り立て、金が人を狂わせる――犯罪小説の金字塔


 ある日、実家にあなたを名乗る何者かが窮状を訴える電話を掛けてきた。見知らぬ番号の電話に出たところ、いきなり怪しげな投資話を持ちかけられた。
 ――そのようなご経験がある方も多いと思います。古来より、たくみな話術で人を騙し、金品や不動産を奪い取る詐欺が絶えたことはありません。

 次々と話題作を世に送り出し続け、昨年上梓した『機龍警察 白骨街道』も高く評価された月村了衛さんが長編のテーマとして選んだのは、詐欺。
 巨大詐欺集団・横田商事に在籍した過去を封印し、ひっそり生きてきたサラリーマン、隠岐隆。ある日、彼はその"亡霊"因幡充に足首を捕らえられ、嫌々ながら再び修羅の世界に戻ってゆく。だが、隠岐には、秘められた詐欺の大才があったのです。
 隠岐と彼をこの世界へと引き込んだ男、因幡。ふたりの詐欺師が金銭と権力を得て成り上がってゆく様を中心に据えながら、この作品をさらに豊かなものにしているのは、個性的な登場人物たちです。余命幾ばくもない小役人。強面ながら経済に強いヤクザ。国士気取りの投資家。どうにも信用できない部下。蔦のように隠岐に絡みつく、ある女......。
 山田風太郎賞受賞の犯罪巨編『欺す衆生』。騙されたと思って、頁を開いてみてください。予測不能のラストがあなたを待っています。

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2022年03月15日   今月の1冊
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