中央公論文芸賞&島清恋愛文学賞&本屋大賞ノミネート! 山本文緒著『自転しながら公転する』が待望の文庫化。
「お別れの言葉は、言っても言っても言い足りない――」。2021年10月に58歳で急逝した山本文緒さん。ある日突然膵臓がんと診断され、余命宣告を受けてから、夫とふたり暮らす日々のことを書き続けた闘病日記、『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』が先日刊行され、静かな話題を呼んでいます。
そんな山本さんが最後に遺した長編小説『自転しながら公転する』が、このたび新潮文庫になりました。
母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えません。職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。母の具合は一進一退。正社員になるべき? 運命の人は他にいる? と、都はつねに悩んでいます。
そんな等身大の30代の女性の悩みに寄り添うように、揺れる心を優しく包んでくれるこの物語は、多くの読者を勇気づけ、圧倒的な支持を得ました。そして、2021年の本屋大賞にノミネートされ、中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞も受賞しました。
『恋愛中毒』『プラナリア』など、数多くの名作を世に遺した山本さんの新作は残念ながらもう読めません。しかし、本を開けば、そこで山本さんの言葉に出会うことができます。『自転しながら公転する』には、山本さんの時に鋭く、時に優しい、大きな包容力のあるメッセージがあふれています。
2022年11月15日 今月の1冊