今月号の表紙は宮部みゆきさん。
波 2017年9月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2017/08/28 |
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JANコード | 4910068230973 |
定価 | 102円(税込) |
[宮部みゆき『この世の春』刊行記念特集]
乾 緑郎/時代小説によくぞこのテーマを
千街晶之/暗雲と春風
[宿野かほる『ルビンの壺が割れた』刊行記念特集]
村上貴史/刺激に満ちた破格のデビュー作
[公開往復書簡]
宿野かほる×担当編集者/覆面デビュー、なぜですか?
町田そのこ『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
大矢博子/企みと希望に満ちた世界
諏訪哲史『岩塩の女王』
松浦寿輝/可能と不可能のはざまで
古川真人『四時過ぎの船』
小山田浩子/問い直す視野
[燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』刊行記念対談]
燃え殻×大槻ケンヂ/大人にだってフューチャーしかない
古谷田奈月『望むのは』
三浦天紗子/大切なのは、本当の姿を見ること
谷村志穂『移植医たち』
海堂 尊/一刀彫りで描かれた傑作医療小説
ダイアナ・キャンダー、牧野 洋/訳『STARTUP スタートアップ―アイデアから利益を生みだす組織マネジメント―』
堤 孝志/スタートアップを“疑似体験”できる本
中西裕人『孤高の祈り―ギリシャ正教の聖山アトス―』
野町和嘉/時代を超えた祈りの原像
岡本和明、辻堂真理『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』
岡本和明/心霊手術で消えた親父のウオノメ
[対談]
柴田元幸×早助よう子/村上柴田翻訳堂の楽しみ方
[特別企画]
平松洋子/銀の皿――新潮社社食の半世紀(中)
[神楽坂ブック倶楽部イベント詳報!]
[講座]鳥海 修/あなたは今、どんな書体で読んでいますか?【後編】
[新潮クレスト・ブックス 2017-2018]
[インタビュー]
トーン・テレヘン、長山さき/訳『おじいさんに聞いた話』
トーン・テレヘン、長山さき/訳/ハッピーエンドのお話はないの?
ただいま翻訳中!
ローレン・グロフ、光野多惠子/訳『運命と復讐』2017年9月刊行予定
光野多惠子/結婚という名の壮大なる悲喜劇
[新潮選書50周年特別企画]
選書著者が答える「私にとって選書とは何か?」
大澤真幸『山崎豊子と〈男〉たち』(新潮選書)
[対談]大澤真幸×平尾隆弘/『山崎豊子と〈男〉たち』をめぐって
川本三郎『「男はつらいよ」を旅する』(新潮選書)
[対談]川本三郎×佐藤蛾次郎/「源ちゃん」が語る「寅さん」
阿南友亮『中国はなぜ軍拡を続けるのか』(新潮選書)
五百旗頭 真/誠実で衝撃的な中国論
中島岳志『親鸞と日本主義』(新潮選書)
釈 徹宗/「親鸞と保守思想」という重い課題
オマル・エル=アッカド『アメリカン・ウォー』上・下(新潮文庫)
三橋 曉/再びの南北戦争を描く暗黒郷(ディストピア)小説
藤沢周平『橋ものがたり』(新潮文庫)
杉田成道/現在にも通じる時代劇
【コラム】
とんぼの本編集室だより
伊丹十三「再び女たちよ!」
宮崎香蓮/新潮文庫で歩く日本の町 最終回
戸部田 誠(てれびのスキマ)『笑福亭鶴瓶論』(新潮新書)
戸部田 誠(てれびのスキマ)/「鶴瓶というバケモノ」の正体
【連載】
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第49回
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第18回
野村 進/多幸感のくに 第10回
津村記久子/やりなおし世界文学 第40回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第90回
戌井昭人/煙たかろう、さのよいよい 第9回
谷川ゆに/境界紀行 たましいの行方をさがして 第6回
佐藤賢一/遺訓 第21回
編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月号の表紙は宮部みゆきさん。
◇今月号の表紙は宮部みゆきさん。「30歳」「40歳」という言葉は、今年で作家デビュー30周年を迎えられたため。記念作『この世の春』の下巻のカバー画(こよりさんの絵)にコメントを添えて頂きました。
◇黒澤明監督の「天国と地獄」について、小林信彦さんは「試写室で観た時は、まだ、ずっとこういう黒澤映画が観られると思い、幸せだった。それでも、『姿三四郎』から20年間、楽しませてもらったのだ。ありがとう」(『ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200』)と書き(「こういう黒澤映画」というのは、観客に有無を言わせぬ豪腕娯楽映画のこと)、落語に詳しいある評論家は「文楽にしろ円生にしろ、落語家が本当にいいのは二十年」と言い、山本夏彦さんはもっと厳しくて、「のぼり坂が三年、のぼりつめて三年、くだり坂が三年、〆て十年続けばいいほうである」と喝破しました。
◇そんな中で、30年もの間、面白くて凄みのある小説を書き続けた宮部さんの作品群の偉容は際立つのですが、今回の『この世の春』は、絶頂期の山本周五郎のようであり、最も勢いがあった頃のスティーヴン・キングのようでもあり、結局はすぐれて〈宮部みゆきの最新形〉でしかない名作です。それこそ黒澤明が「七人の侍」について語った「ビフテキの上にバターをぬって蒲焼きをのせた映画を目指す」という有名なセリフを思い出させるような〈がっつり系〉にして、かつ心揺さぶられる感動作。
◇多くの方に、宮部さんの例えば『理由』を読んだ部屋、『魔術はささやく』を読んだ旅、『火車』のラストにアッと言った週末、『模倣犯』や『ソロモンの偽証』をぐいぐい読み続けた日々、といった思い出があると思います。わたしは田舎で父親の三回忌の法事を縫いながら『この世の春』を読み継いだこの夏を忘れそうにありません。
◇漱石『三四郎』曰く、「小さんは天才である。(略)彼と時を同じうして生きてゐる我々は大変な仕合せである。今から少し前に生れても小さんは聞けない。少し後れても同様だ」。みなさんも、そんなふうに思える作家をそれぞれお持ちでしょう?
◇平岩弓枝さんは今号休載、宮崎香蓮さんは最終回です。
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バックナンバー
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。