上田岳弘「塔と重力」(230枚)
幻の自筆エッセイ発掘 原 節子「手帖抄」(1946年)
新潮 2017年1月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2016/12/07 |
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JANコード | 4910049010174 |
定価 | 947円(税込) |
◆塔と重力[二三〇枚]/上田岳弘
二十年前の震災で生き埋めになった男に「人類の未来」と「ただ一人の女性への思慕」が憑依する。新鋭が全想像力を賭けた超飛翔作!
◆検問所幻想/高村 薫
孤独な守衛の男は、夢想の世界に住んでいる。
◆かいぶつたちのいた夏[特別原稿]/阿部和重
◆新字/円城 塔
謎の文字四四巻を作った遣唐使、その外交術(インテリジェンス)。
◆「ナンパされた」話[特別原稿]/水村美苗
◆老冲乃花[写真]/荒木経惟
◆一瞬の共同性を生きる[特別原稿]/星野智幸
◆街々、女たち/滝口悠生
女を泊めてから、別れた妻へ向う意識の宛先。
◆あなたが彼女にしてあげられることは何もない[戯曲]/岡田利規
カフェで女が一人呟くのは天地創造の物語。
◆世界を変えるために[対談]/保坂和志 山下澄人
◆情熱か受難か 谷川俊太郎[評論一五〇枚]/尾崎真理子
「本当の事を言おうか」「詩は滑稽だ」国民的スター詩人の軌跡と十年間の沈黙の謎を追う。
□□ 幻の自筆エッセイ発掘 □□
◆手帖抄(一九四六年)/原 節子
◇解説・「手帖抄」――日本人を叱る原節子/石川 巧
◇躍動する原節子の魂/石井妙子
「日本再建はそこからだとわたしは云ひたい」没後一年、戦後への想いが今、開封される。
◆高井有一さんを悼む/加賀乙彦
■見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一四七回・居場所岬
■本
・木村友祐『野良ビトたちの燃え上がる肖像』/杉田俊介
・坂口恭平『現実宿り』/日和聡子
■■ 連載小説 ■■
■黎明期の母(十二)[連載完結]/島田雅彦
■野の春(四)/宮本 輝
■ミライミライ(八)/古川日出男
■光の犬(十七)/松家仁之
■ペインレス(十九)/天童荒太
◆第49回《新潮新人賞》応募規定
この号の誌面
立ち読み
編集長から
The Times They Are A-Changin’
◎ボブ・ディランの代表曲「時代は変る」は、ジョン・F・ケネディの大統領就任演説にヒントを得たものだという。一九六三年の録音から一ヶ月も経たないうちにケネディは暗殺されたのだが……。それから半世紀以上の時が過ぎ、イギリスのEU離脱決定やアメリカ大統領選など、二〇一六年の世界を揺るがせた数々の出来事を思うと(そう、ディランのノーベル文学賞受賞も)、あるいは〈人間〉の概念を変容させかねない人工知能の加速度的進化に触れると、あらためて「時代は変る」と思わざるをえない。この時代の激動に、文学は、想像力は、追いつけるだろうか?◎上田岳弘「塔と重力」(二三〇枚)を発表する。二〇一三年の新潮新人賞デビュー以来、超未来と惑星外までを遠望する人類誌に挑み続ける気鋭が、想像力のスケールのみならず、深度において飛翔を遂げた。二〇一七年、小誌は創刊一一三年目を迎える。書き手とともに、読者とともに、新しい一歩を踏みだす。
新潮編集長 矢野 優
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。