旦 敬介「アフリカの愛人」(180枚)
森内俊雄「道の向こうの道」
新潮 2017年5月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2017/04/07 |
---|---|
JANコード | 4910049010570 |
定価 | 特別定価998円(税込) |
◆アフリカの愛人[一八〇枚]/旦 敬介
旅は人に何を与え、何を奪うのか。赤道直下で出会ったK介と元難民アミーナ。二人の奇妙な逃避行はアフリカの現実と精霊に彩られる。
◆道の向こうの道/森内俊雄
情緒不安は蝶に似ていた。飛翔が素早く、捕えるのはむつかしい――。自伝的青春記、完結篇。
◆公園へ行かないか? 火曜日に/柴崎友香
世界からアイオワに集った作家37人の共同生活。「わたし」と仲間達の遠出は思わぬ展開に。
◆種字/円城 塔
命がけで唐へ渡り、筆とソフトウェアを作る留学僧。彼が見出した「即字成仏」思想とは。
■■ 連載小説 ■■
■光の犬(二十一)[連載完結]/松家仁之
■格闘(三)/高樹のぶ子
■エリザベスの友達(七)/村田喜代子
■野の春(八)/宮本 輝
■ミライミライ(十二)/ 古川日出男
■TIMELESS(十三)/朝吹真理子
■荒れ野にて(二十四)/重松 清
■新潮
・ドラマの神様は細部に宿る/岡室美奈子
・デザインの流儀/坂本伸二
・Web小説というもの/柞刈湯葉
・僕はハトになりたかった/林 雄司
・大丈夫、たいしたことじゃない/山本卓卓
◆第50回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】 ●大澤信亮 ●川上未映子 ●鴻巣友季子 ●田中慎弥 ●中村文則
□□ 特別対談 □□
◆小説家の名誉と恍惚/筒井康隆+松浦寿輝
[付録]筒井康隆を圧縮する=短篇50精選(松浦寿輝)
昭和初期へのノスタルジアから人類滅亡の未来まで。世界をぶち壊して見えるものとは?
◆理不尽な世界と人間のために/宮部みゆき+津村記久子
無力で傷つけられながらも人は生きる。残酷な世界と対峙し物語を紡ぎ続ける作家の対話。
◆「稔りの飽和」の静かな重み/平野啓一郎
――古井由吉『ゆらぐ玉の緒』を読む
◆暗殺と
――村上春樹『騎士団長殺し』を透視する
◆「僕」も「私」もやれやれできない/上田岳弘
――村上春樹『騎士団長殺し』を読む
◆どこを見ても記憶がある/岩川ありさ
――多和田葉子『百年の散歩』論
◆冥府魔道のキャデラック/矢作俊彦
――追悼・鈴木清順
■編集者 漱石[第四回・一四〇枚]/長谷川郁夫
■批評の魂[第十六回・連載完結]/前田英樹
■小林秀雄[第四十三回]/大澤信亮
■地上に星座をつくる/石川直樹
第五十一回・最涯てという入口
■見えない音、聴こえない絵[第一五一回]/大竹伸朗
■本
・奥野修司『魂でもいいから、そばにいて――3・11後の霊体験を聞く』/彩瀬まる
・宮内悠介『カブールの園』/藤井 光
この号の誌面
立ち読み
編集長から
旅立つ理由を探す旅――
旦敬介「アフリカの愛人」
◎旦敬介「アフリカの愛人」(一八〇枚)は〈旅〉をめぐる物語だ。ジャーナリストのK介は妻の転職にともない赤道直下のケニアに移住、首都ナイロビで若く美しい黒人女性アミーナと出会った。国連の諸機関が置かれる現代の植民地主義の最前線で「甘美な泥沼」にはまったK介は、妻の目を逃れて愛人と逃避行に出る。極東の先進国からふらふらケニアにやってきたK介とウガンダ内戦を逃れて難民となったアミーナ――まったく異質な旅を経て出会った奇妙な二人組の〈旅先での旅〉を待ち受けていたのは、マジカルな精霊であり、植民地主義と部族主義が混交する大陸の現実だ。だが、『旅立つ理由』(読売文学賞受賞)の著者がそこで立ち止まるわけがない。読者は本作を通じて、人が旅することの真の意味が発見される瞬間を体験するだろう◎筒井康隆と松浦寿輝、宮部みゆきと津村記久子、それぞれの初対談では、作家という部族同士だから語り合える〈母語〉が存分に弾けた。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。