古川真人「窓」[200枚]
第31回 三島由紀夫賞発表
対談 橋本 治 + 松家仁之
新潮 2018年7月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2018/06/07 |
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JANコード | 4910049010785 |
定価 | 特別定価998円(税込) |
◆窓[二〇〇枚]/古川真人
住宅街に漂う死臭。福祉施設での凄惨な事件。この忌むべき世界から障害者の兄の魂を守るため、窓を閉めるべきなのか。気鋭の飛翔作!
◆NŌ THEATER/岡田利規
世の中は、僕に対する需要はない。地下鉄ホームに幽霊の姿を幻視する、能・狂言の現在形。
◆風船/田中慎弥
小説に書いた故郷の知人の名で手紙が届く。女と別れた作家を襲う罪の意識と死の衝動。
◆100年後のこと/藤野可織
◆『流転の海』全九部完結
野の春(連載最終回)/宮本 輝
執筆三十六年、自伝的大河小説、完結。熊吾一家の逃れえぬ「宿命」を描く壮絶な終幕!
■■ 連載小説 ■■
◆ビッグ・スヌーズ(六)/矢作俊彦
◆格闘(十七)/高樹のぶ子
◆荒れ野にて(三十七)/重松 清
◆第31回三島由紀夫賞発表
【受賞作】無限の玄(一部掲載)/古谷田奈月
【選評】辻原 登/高村 薫/川上弘美/町田 康/平野啓一郎
【受賞記念インタビュー】死が繰り返される世界へ
◆第51回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】●大澤信亮 ●川上未映子 ●鴻巣友季子 ●田中慎弥 ●中村文則
◆われわれはなぜこんなところにいるのだろう
橋本 治 松家仁之
小説はいかに「時代」を書きうるか。最高作『草薙の剣』を発表した稀代の作家が語る。
◆「普遍」の探究/森田真生
普遍への情熱――数学を支える無形の精神はいかに形成され、壮大な宇宙を生み出したか。
◆享楽せよ、と仕立て屋はいう/渡邉大輔
――『ファントム・スレッド』小論
P・T・アンダーソン監督最新作に絡む
◆目覚めよと呼ぶ声がする/清水良典
――天童荒太『ペインレス』を読む
◆鶴見俊輔伝[最終回・一八〇枚]/黒川 創
「もうろく」のなかに、未見の領域がある。戦後を生き抜いた哲学者の老境を読み解く。
◆これは小説ではない(三)/佐々木 敦
◆小林秀雄[第五十六回]/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第六十四回・再会のカトマンズ
◆見えない音、聴こえない絵(一六四)/大竹伸朗
■■ 新潮 ■■
◆ナボコフの「あやまち」/秋草俊一郎
◆本に連れられて/内田洋子
◆卓上の絵画、画家の随筆/近藤恵介
◆針と溝/齋藤圭吾
◆サイトブロッキングが殺したのは誰か/水野 祐
◆この中では誰もが平等である/宮崎大祐
◆『動物の声、他者の声』余滴/村上克尚
■■ 本 ■■
◆ヤン ヨンヒ『朝鮮大学校物語』/岸 政彦
◆多和田葉子『地球にちりばめられて』/管 啓次郎
◆原田宗典『〆太よ』/田中和生
◆岸 政彦『はじめての沖縄』/ミヤギフトシ
◆神里雄大『バルパライソの長い坂をくだる話』/柳原孝敦
この号の誌面
立ち読み
編集長から
宿命のライフワーク
宮本輝『流転の海』完結
◎本号にて、宮本輝氏の連載「野の春」が完結する。氏が三十六年余をかけた自伝的大河小説『流転の海』全九部がついにフィナーレを迎えるのだ(第二部以後は小誌連載)。三四歳で第一部を書き始めた宮本氏は七一歳までの作家生命を本作に捧げた。真のライフワークだ◎主人公・松坂熊吾は宮本氏の父がモデルだ。中国の戦場をくぐりぬけた熊吾は、焦土から立ち上がった戦後日本を、事業の成功と失敗を繰り返しながら生き抜き、そして最後に致死的な病に倒れる。貧困や熊吾の女性問題に苦しむ妻はアルコールに溺れ、自殺未遂を起こしながらも、病弱の息子・伸仁(もちろん宮本氏がモデル)を大学生にまで育てあげた。この彼らの逃れがたい「宿命」。その意味で、本作が描いたのは戦後を生きた庶民の精神史であり、さらに戦後日本の肖像画なのだ◎確信する――この特別な小説が、百年後の読者にさえ、私たちの生を伝えてくれることを。『流転の海』完結を祝したい。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。