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岸政彦「図書室」(130枚)
高橋弘希「アジサイ」
ヘミングウェイ未発表小説
【特集】差別と想像力――「新潮45」問題から考える

新潮 2018年12月号

(毎月7日発行)

947円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2018/11/07

発売日 2018/11/07
JANコード 4910049011287
定価 947円(税込)

図書室[一三〇枚]/岸 政彦
私は思い出す。大阪の片隅を男の子と歩いた、あの冬の日のことを。ふたりは人類滅亡後・・・・・の世界で何を見たか? 静かに光る人生の瞬間。
【芥川賞受賞第一作】
アジサイ/高橋弘希

妻が家を出てから、庭にアジサイが咲いた。「理由」を探す男を侵す、甘い匂いと狂気。
◆ドレスセーバー/大前粟生
京都の鴨川デルタでは人が遭難し、私はそれを救助する。新世代の想像力、小誌初登場!
◆続アイオワ日記/滝口悠生
ハリケーンの警報が鳴っても、危険の感度は作家の出身国に紛争があるかによって違う。
◆ヘミングウェイ未発表小説
「中庭に面した部屋」/訳・解説 今村楯夫

パリ解放の日の戦地体験を描きながら、生前の発表を著者が禁じた幻の作品、遂に公開!
■■ 連載小説 ■■
■ヒロヒト(五)/高橋源一郎
■ビッグ・スヌーズ(十一)/矢作俊彦
■■ 新潮 ■■
◆ベジ/ノンベジ話二題/石井遊佳
◆「小林秀雄」間奏/大澤信亮
◆粉々になった自我と漂流物/大竹昭子
◆マイブラザー瀬川昌久/柳樂光隆
◆静かな分岐点/星野概念
◆『流転の海』全九巻徹底調査中/堀井憲一郎
□□ 特集 □□
差別と想像力――「新潮45」問題から考える

■危機を好機に変えるために/星野智幸
■回復に向けて/中村文則
■すべてが嫌だ/桐野夏生
■平成最後のクィア・セオリー/千葉雅也
■言葉のあいだの言葉/柴崎友香
■「見えない世界」の外へ/村田沙耶香
■権威主義・排外主義としての財政均衡主義/岸 政彦

◆犬とエスキモー
――エトガル・ケレット、日本からの視察団と語る
/エトガル・ケレット 構成・訳 秋元孝文

特別な歴史。内在する圧倒的な差異。何から何まで日本と違う国からの刺激的メッセージ!
◆数多くの〈五月〉の後に/四方田犬彦
68年、あの興奮の日々から50年。回顧的情熱に満ちたパリから、無関心を装う国を考える。
◆そして、言語から生命へ[連載完結]/森田真生
フレーゲ、ウィトゲンシュタインから人工知能・人工生命へ。人の思考をめぐる旅、完結!
【宮本輝『流転の海』シリーズ完結記念】
◆敗戦後の日本で「父」となる男を描く
――宮本輝『流転の海』論/田中和生
◆巨大なる未完のテーゼ
――『流転の海・第九部 野の春』を読む/助川幸逸郎
◆保田與重郎の文学(四)/前田英樹
◆終わらない植民地コロニー――新しい宮沢賢治(8)/今福龍太
◆これは小説ではない(八)/佐々木 敦
■地上に星座をつくる/石川直樹
第六十九回・母の首飾り

■見えない音、聴こえない絵(一六九)/大竹伸朗
■■ 本 ■■
◆高橋源一郎『今夜はひとりぼっちかい?』/大澤 聡
◆平野啓一郎『ある男』/大澤真幸
◆辛島デイヴィッド『Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち』/加藤典洋
◆レベッカ・ソルニット『説教したがる男たち』/ブレイディみかこ
◆吉田修一『国宝』/渡辺 保
第51回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】●大澤信亮 ●川上未映子 ●鴻巣友季子 ●田中慎弥 ●中村文則

この号の誌面

立ち読み

編集長から

記憶の文学と生命の数学

岸政彦氏による小説「図書室」(130枚)を巻頭に掲載する。岸氏が幅広い読者を得た社会学者(沖縄、生活史等)であることは、しかし、作品を前にひとまず忘れよう。主人公は大阪の築40年の団地にひとり暮らす50歳の女性。片手に孤独、片手に自由。彼女が回想する少女時代の記憶の断片は、やがて一筋の瑞々しい水脈となり、そして最後には大河として、50歳の彼女の眼前で劇的に迫り上がるのだ。「小説家」岸政彦の飛躍作が誕生した◎森田真生氏が小誌で継続してきた数学と人間=言葉をめぐる思索が、今回「そして、言語から生命へ」として完結した。2歳半の息子の遊びと学びを眺めることから始まる思考の軌跡は、フレーゲ、ウィトゲンシュタイン等への考察を経て、人工知能以後の新しい人間像へと至る。小誌は「文芸誌」としてその可能性を探求しつつ、同時に「文明誌」でありたいと思っている。森田氏の論考により、その願いがある形で実現したことを喜んでいる。

「新潮」編集長・矢野 優

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。

■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。

■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。

■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。

雑誌主催・共催・発表誌の文学賞