吉本ばなな「ミトンとふびん」
古川日出男「三たび文学に着陸する――古事記・銀河鉄道の夜・豊饒の海」
新潮 2019年3月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2019/02/07 |
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JANコード | 4910049010396 |
定価 | 947円(税込) |
◆ミトンとふびん/吉本ばなな
かけおちのように
◆[掌篇三作]ひきだし火事/さかさ率/うろの中の天
黒田夏子
季節とともに幼年のあそびは変わりゆく――ひきだしに詰まった、人生の過ぎ去りし光陰。
◆バルコニー/加藤秀行
彼女の部屋で、彼女と文字を移し換える。翻訳という行為が映し出す、青年の生の手触り。
◆白人たち/ジェン・シルヴァーマン 訳・解説:藤井 光
独りよがりな正義感から、白人上流階級らしさを捨てようと足搔く夫婦の行きつく先は?
◆チェロ湖[新連載第二回]/いしいしんじ
◆蠅[新連載第三回]/瀬戸内寂聴
お遍路の鈴の音が鳴る町で少女は成長する。少女の目が世界の実相を鮮やかに映し出す。
◆わたしが行ったさびしい町(3)イポー[新連載第三回]/松浦寿輝
バス旅行でマレー半島縦断という思いつき。私は自堕落なバックパッカーに転落した。
◆プリニウス[移籍新連載第三回]/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆ビッグ・スヌーズ(十四)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(三十九)/重松 清
第51回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/川上未映子/鴻巣友季子/田中慎弥/中村文則
【特別文芸批評】
◆三たび文学に着陸する/古川日出男
――古事記・銀河鉄道の夜・豊饒の海
今文学たる日本文芸の始点。流転を生きる少年小説。運命を駆動させた最期の四部作――。大崩壊後のビジョンを提示する予言的文学論。
■■ 対談 ■■
◆鶴見俊輔とは何者だったのか?/黒川 創+片山杜秀
断片から流れを作り様相を捉える。党派に縛られず柔軟に人を見る。思想界の巨人の実像。
◆追悼・梅原 猛 仙童遷化/中沢新一
◆狂気の静けさ/アピチャッポン・ウィーラセタクン 訳:金子 遊
◆昭和の終わり、平成の終わり/三輪健太朗
――手塚治虫没後三十年に寄せて
◆声――フランスと日本と(二)/福田和也
◆保田與重郎の文学(六)/前田英樹
◆これは小説ではない(十)/佐々木 敦
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第七十一回・せとうち初詣
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一七一回・金魚とマッチ棒
■■ 新潮 ■■
◆取材は恋愛に似ている/相澤冬樹
◆インスタグラム時代のホリー・ゴライトリー/山崎まどか
◆昨年/伊舎堂 仁
◆2018年はnoteで日記を売って食っていける時代になっていた/岡 映里
■■ 本 ■■
◆鴻巣友季子『謎とき『風と共に去りぬ』』/小沼純一
◆大城立裕『あなた』/岸 政彦
◆大竹伸朗『ナニカトナニカ』/椹木野衣
◆チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』/鈴木みのり
◆岡崎乾二郎『抽象の力』/福永 信
この号の誌面
立ち読み
編集長から
古川日出男「三たび文学に着陸する」
吉本ばなな「ミトンとふびん」
◎古川日出男「三たび文学に着陸する――古事記・銀河鉄道の夜・豊饒の海」は驚くべき文芸評論だ。書き出しはこうだ。「ビジョンを見たい。なぜならば私は書きつづけたいからだ。書きつづけられるのか? これを切実に考える。時勢(時局?)に絶望しているがゆえに考える」。いま私たちが生きる時代状況(「何もかもが大崩壊している」)に強烈な危機感を抱いた文学者は、古川日出男は、『古事記』完成から『豊饒の海』完結=三島自決までを「日本文学」の巨大な塊として幻視し、さらに宮沢賢治を加えた星座を(銀河鉄道に同乗して?)旅しながら、文学の生存の可能性を探る◎吉本ばなな「ミトンとふびん」は、厳寒のヘルシンキを舞台に、避けがたい「ふびんさ」を抱えながら生き続けていく人類に捧げた頌歌◎ジェン・シルヴァーマン「白人たち」(藤井光訳)は「マジョリティによるマイノリティへの共感という名の収奪」(訳者解説)を主題とした刺激的な短篇だ。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。