村上 龍「MISSING 失われているもの」
(500枚一挙掲載)
新潮 2020年1月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2019/12/07 |
---|---|
JANコード | 4910049010105 |
定価 | 特別定価1,250円(税込) |
◆MISSING 失われているもの[五〇〇枚一挙掲載]/村上 龍
この女優に付いていってはいけない――混乱と不安の世界に迷い込んだ小説家は母の声に導かれ、記憶の迷宮・東京を彷徨い続ける。『限りなく透明に近いブルー』から一筋に続く創造の軌跡。その果ての感動的終章=復活!
◆落ちない岩/角田光代
黄金色の岩の前で私は祈る――でも、何を? ミャンマーの聖地への十七年ぶりのひとり旅。
◆アンコンシャス/金原ひとみ
しかしこのどう猛なものの正体はなんだ――。女の意識下に横たわる本質を露わにした快作。
◆蛇口[新作詩]/谷川俊太郎
◆詩人ちゃん・キル・ミー[新連載詩]/最果タヒ
◆はらから[後篇]/瀬戸内寂聴
◆コネマラ/松浦寿輝
◆プリニウス(六十四)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆全然(五)/滝口悠生
◆チェロ湖(十一)/いしいしんじ
◆ヒロヒト(十五)/高橋源一郎
◆ビッグ・スヌーズ(二十二)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(四十六)/重松 清
【新連載】
◆石牟礼道子と渡辺京二/米本浩二
――不器用な魂の邂逅
水俣病と『苦海浄土』。闘争=創造の運命的同志ふたりの激動の生を追う画期的W評伝。
【特別対談】
◆宮沢賢治の気流に吹かれて/真木悠介 + 今福龍太
世界の「図」と「地」を反転させ、地球史規模の思考へ。魂の湖が呼応する記念碑的対話。
【連載再開・第二部】
◆小林秀雄 第五十九回/大澤信亮
【特別エッセイ】
◆センチメンタル・ジャーニー2/水村美苗
あるいは、『続 私小説 from left to right』
◆アクションとポイエーシス/東 浩紀
◆内向の系譜/福嶋亮大
――古井由吉から多和田葉子へ
◆文学はショパンの夢をみるか?/かげはら史帆
――町屋良平『ショパンゾンビ・コンテスタント』論
◆ズラされつづける身体性/町屋良平
――千葉雅也『デッドライン』論
【リレーコラム】Passage――街の気分と思考(6)
◆「漁港の肉子ちゃん」その後/西 加奈子
◆ファミリー・ランドスケープ/水原希子
■■ 本 ■■
◆吉田修一『逃亡小説集』/赤松利市
◆山田詠美『ファースト クラッシュ』/佐久間裕美子
◆又吉直樹『人間』/山下澄人
第52回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
この号の誌面
立ち読み
編集長から
村上龍氏大型長編
五〇〇枚一挙掲載!
村上龍氏の五〇〇枚にも及ぶ大型長編「MISSING 失われているもの」を一挙掲載する。
主人公の小説家は、なぜ「混乱と不安しかない世界」に迷い込んだのか? その予兆はあった。主人公は制御しがたい抑うつや不眠に悩み、カウンセリングを受けていたのだ。そして、ひとりの女優との再会が迷宮の扉を開けた。視界すら曖昧で奇妙な世界のなかで、主人公を導くのは「声」だ。女優の声。そして懐かしい母の声。主人公の意識のなかに母の声が響く。「わたしはずっとあなたのそばにいたかった」「あなたの想像は、あなたの現実より強い」――。作品全体が精神そのものであるような壮大な声の迷宮を、小説家はひたすらさまよい続ける。その強度は圧倒的だ。
終章「復活」の雷鳴のような衝撃について、あえて詳述はしまい。だが、断言しよう。本作は『限りなく透明に近いブルー』以来、村上氏の四十四年間の創造の軌跡において、決定的に重要な作品である。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。