羽田圭介「滅私」(230枚)
山下澄人「FICTION 05 サンパヤ テレケ」
新作詩+インタビュー 谷川俊太郎「いきていて」
新潮 2020年9月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2020/08/07 |
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JANコード | 4910049010907 |
定価 | 特別定価1,060円(税込) |
◆滅私[二三〇枚]/羽田圭介
物を持たず、記憶はHDDに格納――ミニマリズムに没頭する男を、1枚の写真が究極の捨てへと導く。現代の虚無を照射した快作!
◆FICTION 05 サンパヤ テレケ/山下澄人
ちゅうが死んだ――谷で共に過ごした旧友が。現世の外へ出るための、常識破壊のレッスン。
◆いきていて[新作詩]/谷川俊太郎
【インタビュー】「米寿の詩人は静かに、「本当の事」を申し立てている」
聞き手・構成 尾崎真理子
◆詩人ちゃん・キル・ミー(五)/最果タヒ
◆ハルピン駅/瀬戸内寂聴
◆聖都創造[新連載第二回]/天童荒太
◆天使も踏むを畏れるところ[新連載第三回]/松家仁之
■■ 連載小説 ■■
◆曼陀羅華X 2004(七)/古川日出男
◆全然(十三)/滝口悠生
◆漂流(十六)/町田 康
◆チェロ湖(十八)/いしいしんじ
◆ヒロヒト(二十二)/高橋源一郎
◆ビッグ・スヌーズ(三十)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(五十四)/重松 清
第53回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
◆マスクの時代の仮面/今福龍太
抵抗者は顔を覆い連帯する。コロナ下の規律から
◆BLMによせて/佐久間裕美子
――再編される歴史のストーリーライン
◆追悼・岡井隆 時こそはわがしづけき伴侶/三枝昻之
◆未だ名がない世界/椹木野衣
――高山羽根子『首里の馬』を読む
◆小津安二郎[新連載第二回]/平山周吉
◆コロナの認識論[新連載第三回]/養老孟司
◆あの頃何してた?[新連載第三回]/綿矢りさ
【リレーコラム】Passage――街の気分と思考(14)
◆遅さを選ぶ/西 加奈子
◆正解を知らない私の答え/水原希子
◆OH MY GOD/エリイ(Chim↑Pom)
第十二回・何十年経ってもこの“今”が続いた場合
◆保田與重郎の文学(二十三)/前田英樹
◆小林秀雄(六十七)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第八十八回・動けば繋がる
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一八八回・アジサイと土佐文旦
■■ 新潮 ■■
◆自粛とクロアゲハ/石原 燃
◆彫刻という名前/小田原のどか
◆これからの大劇場演劇/矢野誠一
■■ 本 ■■
◆渡部直己『日本小説批評の起源』/安藤礼二
◆金原ひとみ『パリの砂漠、東京の蜃気楼』/長島有里枝
◆中原昌也『人生は驚きに充ちている』/樋口泰人
◆山下澄人『月の客』/古谷利裕
◆磯崎憲一郎『日本蒙昧前史』/與那覇 潤
この号の誌面
立ち読み
編集長から
羽田圭介「滅私」(二百三十枚)
◎人はなぜ物を所有し、しかもとめどなく溜め込んでしまうのだろうか? この人間の根源的な習性に疑義を呈し、可能な限り物を持たない人たちがいる。より良く生きるために、持たないこと。それは単なる生活習慣を超えた思想でさえあるだろう。羽田圭介氏の「滅私」(二百三十枚)の主人公・冴津はまさにそんな人物だ。不所有のライフスタイルを売りにしたサイト「身軽生活」を運営し、ライターをしている。相性のいい恋人もいる。だが、いつしか冴津の周囲に不穏な影が忍び寄るのだ。それは、彼が身軽になるために捨てた最大の物、そう、「過去」だった……巧みなストーリーテリングで描かれる冴津の命運から目が離せない。物質欲と情報欲が拮抗する現代文明への問いかけにも充ちている。ぜひ御一読を◎米寿を迎え、最新詩集『ベージュ』(小社刊)を刊行する谷川俊太郎氏に、新作詩六篇を書き下ろしていただいた。尾崎真理子氏によるインタビューも併せて掲載。
新潮編集長 矢野 優
松家仁之「天使も踏むを畏れるところ」 主要参考文献
(この小説は史実に基づいて書かれていますが、登場人物はすべて架空の人物です。)
- 『建設省二十年史』建設省二十年史編集委員会(社団法人建設広報協議会)
- 『現代建築をつくる人々』浜口隆一・村松貞次郎(KK世界書院)
- 『皇居造営 宮殿・桂・伊勢などの思い出』小幡祥一郎
- 『昭和天皇と田島道治と吉田茂 初代宮内庁長官の「日記」と「文書」から』加藤恭子(人文書館)
- 『ワシントンハイツ ―GHQが東京に刻んだ戦後―』秋尾沙戸子(新潮文庫)
- 「工芸ニュース」1949年6月号 商工省工芸指導所(技術資料刊行会)
- 『皇室建築 内匠寮の人と作品』監修 鈴木裕之(建築画報社)
- 『日本の建築 その芸術的本質について I』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『日本の建築 その芸術的本質について II』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『侍従長の遺言 昭和天皇との50年』徳川義寛 聞き書き・解説 岩井克己(朝日新聞社)
- 『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕(中公新書)
- 『私のなかの東京』野口冨士男(文藝春秋)
- 『完本 皇居前広場』原武史(文春学藝ライブラリー)
- 『東京都市計画物語』越澤明(ちくま学芸文庫)
- 『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』武村雅之(鹿島出版会)
- 『外濠 江戸東京の水回廊』法政大学エコ地域デザイン研究所編(鹿島出版会)
- 『建築の心と技 村松貞次郎対談集――1』(新建築社)
- 『建築をめぐる回想と思索 キサデコールセミナーシリーズ2』聞き手・長谷川堯(新建築社)
- 『硫黄島クロニクル 島民の運命』全国硫黄島島民の会
- 『建築探偵の冒険』藤森照信(ちくま文庫)
- 『昭和天皇実録 第十一』宮内庁(東京書籍)
- 『秩父宮 昭和天皇弟宮の生涯』保阪正康(中公文庫)
- 「新建築 1982年7月臨時増刊 桂離宮」(新建築社)
- 『宮殿をつくる』高尾亮一(求龍堂)
- 『皇居』入江相政(保育社)
- 『入江相政日記 第五巻』入江為年監修(朝日文庫)
- 『侍従とパイプ』入江相政(中公文庫)
- 『こんなに面白い東京国立博物館』新潮社編 東京国立博物館監修
- 『探検! 東京国立博物館』藤森照信・山口晃(淡交社)
- 『カイコの病気とたたかう』鮎沢啓夫(岩波科学の本)
- 『皇后陛下傘寿記念 皇后さまとご養蚕』宮内庁協力(扶桑社)
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。