筒井康隆「川のほとり」 岸 政彦「大阪の西は全部海」
三国美千子「骨を撫でる」(一三〇枚)
新潮 2021年2月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2021/01/07 |
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JANコード | 4910049010211 |
定価 | 特別定価1,200円(税込) |
◆川のほとり/筒井康隆
最愛のひとり息子・筒井伸輔、二〇二〇年に死す――時空を超えた再会を描く感動掌篇!
◆骨を撫でる[一三〇枚]/三国美千子
逃れえぬ河内の土地と血縁の業。三島賞受賞『いかれころ』の世界を突き詰めた野心作。
◆大阪の西は全部海/岸 政彦
生まれてこないって、どういうこと? 脳内の声と対話し、私は自分の人生を引き受ける。
◆FICTION 06 黄金の馬車/山下澄人
仲間の死、劇団の苦境、作家デビュー。記憶は混濁しつつ、今この瞬間に向かって流れ込む。
◆プリニウス(七十四)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆天使も踏むを畏れるところ(八)/松家仁之
◆曼陀羅華X(十二)/古川日出男
◆全然(十八)/滝口悠生
◆漂流(二十)/町田 康
◆チェロ湖(二十二)/いしいしんじ
◆ビッグ・スヌーズ(三十五)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(五十九)/重松 清
■■ 新潮 ■■
◆チベットの「いま」を描き出す――ペマ・ツェテンの芸術世界/大川謙作
◆日本語への帰郷/イナン・オネル
◆変な女/河村敏栄
◆コロナ狂想曲変ト長調/宮沢孝幸
第53回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
◆家族と敗戦 江藤淳論/先崎彰容
善悪が吹っ飛んだ時代に、母と隔離され幼年期を過ごした江藤は、深刻な危機に陥った。
◆戦時下の生を描く[講演]/黒沢 清
たとえ戦争中でも、人間は自由と幸福の追求を諦めない。『スパイの妻』のテーマを語る。
◆霧のなかのルイーズ・グリュック/今福龍太
喪失の影にこそ希望は宿る。ノーベル文学賞の栄誉へ至る、アメリカスの女性詩人の系譜。
◆#SAVEtheCINEMAとは何か、何を目指しているのか/馬奈木厳太郎
◆『豊饒の海』論(三)[短期集中連載]/平野啓一郎
◆能十番 日英現代語訳/いとうせいこう ジェイ・ルービン
第六回・高砂
◆コロナの認識論(最終回)/養老孟司
◆あの頃何してた?(最終回)/綿矢りさ
【リレーコラム】Passage――街の気分と思考(19)
◆サンクトペテルブルク/レニングラードの冬の日/柴崎友香
◆半分のチョコレート/谷崎由依
◆OH MY GOD/エリイ(Chim↑Pom)
第十六回・海は二つの扉を押し開いて母の胎から溢れ出た
◆大楽必易――わたくしの伊福部昭伝(四)/片山杜秀
◆小津安二郎(六)/平山周吉
◆保田與重郎の文学(二十七)/前田英樹
◆小林秀雄(七十一)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第九十二回・伊勢を歩く
◆見えない音、聴こえない絵/大竹伸朗
第一九一回・記妄憶想
■■ 本 ■■
◆星野智幸『だまされ屋さん』/石原 燃
◆石川直樹『地上に星座をつくる』/滝口悠生
◆仲俣暁生『失われた「文学」を求めて 文芸時評編』/矢野利裕
この号の誌面
立ち読み
編集長から
筒井康隆「川のほとり」
◎文芸はかけがえのない人の死を悼み、文章の中に死者を蘇らせてきた。だから、筒井康隆「川のほとり」が、二〇二〇年に五十一歳の若さで逝去した筒井氏の一人息子にして気鋭画家・筒井伸輔氏との「再会」を描いた時、筒井氏は文芸の根源に素手で触れたのではないか。死後の世界を信じていない語り手は夢のなかでも覚醒している。この再会が自分の意識の産物であることを知っている。にもかかわらず、息子と語り続けずにはおれないのだ。喋り終えたら、夢が覚めてしまうから。「父さん」「おう」「母さんは元気」「元気だよ」――原稿用紙にして一〇枚の掌篇である。だが、筒井氏の想像力が至上のかたちで滴った、これは特別な作品だ◎三国美千子「骨を撫でる」(一三〇枚)は、デビュー作「いかれころ」で三島由紀夫賞を受賞した三国氏のめざましい成長を示す。岸政彦「大阪の西は全部海」は、大阪という特別な街とそこに暮らすひとの息吹を鮮やかに捉えてみせた。
編集長・矢野 優
松家仁之「天使も踏むを畏れるところ」 主要参考文献
(この小説は史実に基づいて書かれていますが、登場人物はすべて架空の人物です。)
- 『建設省二十年史』建設省二十年史編集委員会(社団法人建設広報協議会)
- 『現代建築をつくる人々』浜口隆一・村松貞次郎(KK世界書院)
- 『皇居造営 宮殿・桂・伊勢などの思い出』小幡祥一郎
- 『昭和天皇と田島道治と吉田茂 初代宮内庁長官の「日記」と「文書」から』加藤恭子(人文書館)
- 『ワシントンハイツ ―GHQが東京に刻んだ戦後―』秋尾沙戸子(新潮文庫)
- 「工芸ニュース」1949年6月号 商工省工芸指導所(技術資料刊行会)
- 『皇室建築 内匠寮の人と作品』監修 鈴木裕之(建築画報社)
- 『日本の建築 その芸術的本質について I』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『日本の建築 その芸術的本質について II』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『侍従長の遺言 昭和天皇との50年』徳川義寛 聞き書き・解説 岩井克己(朝日新聞社)
- 『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕(中公新書)
- 『私のなかの東京』野口冨士男(文藝春秋)
- 『完本 皇居前広場』原武史(文春学藝ライブラリー)
- 『東京都市計画物語』越澤明(ちくま学芸文庫)
- 『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』武村雅之(鹿島出版会)
- 『外濠 江戸東京の水回廊』法政大学エコ地域デザイン研究所編(鹿島出版会)
- 『建築の心と技 村松貞次郎対談集――1』(新建築社)
- 『建築をめぐる回想と思索 キサデコールセミナーシリーズ2』聞き手・長谷川堯(新建築社)
- 『硫黄島クロニクル 島民の運命』全国硫黄島島民の会
- 『建築探偵の冒険』藤森照信(ちくま文庫)
- 『昭和天皇実録 第十一』宮内庁(東京書籍)
- 『秩父宮 昭和天皇弟宮の生涯』保阪正康(中公文庫)
- 「新建築 1982年7月臨時増刊 桂離宮」(新建築社)
- 『宮殿をつくる』高尾亮一(求龍堂)
- 『皇居』入江相政(保育社)
- 『入江相政日記 第五巻』入江為年監修(朝日文庫)
- 『侍従とパイプ』入江相政(中公文庫)
- 『こんなに面白い東京国立博物館』新潮社編 東京国立博物館監修
- 『探検! 東京国立博物館』藤森照信・山口晃(淡交社)
- 『カイコの病気とたたかう』鮎沢啓夫(岩波科学の本)
- 『皇后陛下傘寿記念 皇后さまとご養蚕』宮内庁協力(扶桑社)
- 『フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル』明石信道 文・実測図面 村井修 写真(建築資料研究社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 満洲樺太』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 「芸術新潮」2008年8月号「大特集 北京」(新潮社)
- 『完訳紫禁城の黄昏』上・下 R.F.ジョンストン 中山理 訳 渡部昇一 監修(祥伝社)
- 『漱石紀行文集』藤井淑禎 編(岩波文庫)
- 『吉田謙吉が撮った戦前の東アジア 1934年満洲/1939年南支・朝鮮南部』塩沢珠江=著 松重充浩=監修(草思社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 朝鮮台湾』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 『満洲朝鮮復刻時刻表 附台湾・樺太復刻時刻表』日本鉄道旅行地図帳編集部[編](新潮社)
- 『火と水と木の詩 私はなぜ建築家になったか』吉村順三(新潮社)
- 『日本の近代をデザインした先駆者 生誕150周年記念後藤新平展図録』(財団法人東京市政調査会)
- 「芸術新潮」2006年8月号「全一冊 韓国 未知の美と出会う旅」(新潮社)
- 『図説 満鉄 「満洲」の巨人』西澤泰彦(河出書房新社)
- 『満洲鉄道まぼろし旅行』案内人・川村湊(ネスコ 文藝春秋)
- 『韓国の民家』張 保雄著 佐々木史郎訳(古今書院)
- 『建築の前夜 前川國男論』松隈洋(みすず書房)
- 『前川國男 賊軍の将』宮内嘉久(晶文社)
- 『一建築家の信條』前川國男 宮内嘉久編(晶文社)
- 『日本建築宣言文集』藤井正一郎・山口廣編著(彰国社)
- 『皇居に生きる武蔵野』毎日新聞社社会部写真部編(毎日新聞社)
- 『天皇と侍従長』岸田英夫(朝日文庫)
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?

文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。