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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

19回目の創刊記念ラインナップ

 新年度が始まりました。ちょうど一年前、マスクのせいで新入社員の顔が覚えられないという話をしましたが、社内で新人研修にいそしむ彼ら彼女らの顔はいまだマスクに隠れ、ほとんど表情が窺えません。ここ3年、見慣れた光景とはいえ、顔と名前と属性が一致してようやく同僚の一人として認識されると考えたら、やはり残念な気がします。
 創刊19年目を迎えた4月新刊、『日本人の承認欲求―テレワークがさらした深層―』(太田肇・著)は、コロナ禍で普及したリモートワークのもと、管理職と社員のディスコミュニケーション、新入社員の離職率アップなど、在宅うつや孤独感効率性の裏にひそむ様々な問題について分析。日本的な企業と労働者に特有のやりがい意識、承認欲求を浮き彫りにします。好評の前著『承認欲求の呪縛』に続き、組織経営研究の第一人者による「働き方改革」の新提案です。
「燃える闘魂」の代名詞で知られるアントニオ猪木は、一昨年暮れにデビュー60年目を迎えました。闘病の様子を記録したNHKのBS番組も注目を集めましたが、『アントニオ猪木―闘魂60余年の軌跡―』(瑞佐富郎・著)では、伝説のモハメド・アリ戦はじめ数々の死闘を戦い抜いた軌跡、さらに異色の政治家としての猪木を徹底解剖。プロレスファンでなくとも何か気になってしまう「山師」の存在は、昭和を象徴するレジェンドと言っても過言ではありません。
 そして今月のイチ押しは、現代を代表する知性による異色の対話、『不倫と正義』(中野信子三浦瑠璃・著)です。人はなぜ不倫をするのか、脳科学者である中野氏が生物学の立場からヒトの本能に関して語れば、人はなぜ他人の不倫をバッシングするのか、三浦氏は政治や歴史など、社会科学からその変容について語ります。女性同士のざっくばらんな会話の中にも鋭い指摘と知識が盛り込まれた、目からウロコの「不倫トーク」です。試し読みはこちら
2022/04