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今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

様々なホンネのかたち

 なかなか本音を口にしづらい世の中になった、とよくいわれます。理由は様々あるでしょうが、その一方で、ネットやSNS上では、よく考えられた意見から単なる誹謗中傷までが日夜あふれかえっています。「とくダネ!の小倉さん」と言えば、人によって好き嫌いは分かれても、言いたいことを言う名物MCとして3年前までフジテレビの「朝の顔」でした。ときに失言や炎上騒ぎがあっても22年間にわたって司会者をつとめ、回数や期間ともに最多・最長記録を達成、放送史にその名を刻みました。
 2月の新刊、『本音』(小倉智昭・著、古市憲寿・著)には、その小倉さんのホンネが満載です。「三途の川を見たことで人生観はどう変わったか」、「吃音の少年がいかにして実況のプロになれたのか」、「『とくダネ!』はいかにして生まれ、燃え、終わったのか」の三部構成で、局アナからフリーに転身した後の貧乏暮らし、ワイドショーの顔となってからの多忙ぶりと近頃のテレビへの思い、がんとの闘病から死生観まで、ずけずけ質問をくりだす古市さんに、小倉さんがどんどん答えます。
起死回生―逆転プロ野球人生―』(中溝康隆・著)は、折れる寸前のメンタルと身体を奮い立たせてどん底から這い上がり、新天地で栄光をつかんだプロ野球選手たちを追ったスポーツノンフィクション。突然の戦力外通告、不本意なトレード......「俺はまだやれる」「このままでは終われない」。小林繁、西本聖、野茂英雄、栗山英樹、下柳剛ら、逆境でこそ輝いた30人の男たちの鮮やかな逆転物語は、スポーツの枠を超えて人を感動させるものがあります。
1日10分の哲学』(大嶋仁・著)は、ファスト教養、タイパ主義や生成AIが持てはやされる今だからこそ、自分の頭で考えるための「知の鍛え方」。比較文学の碩学がフランスの思想家ヴォルテールの『哲学事典』をモデルに、やさしく読みやすい断章スタイルで、誰でもどこからでも読めるエッセイ集にまとめました。知的欲求は人間に生来的に備わったものだと言われます。哲学や思想って何だか難しそう、そういう人にこそ効く一冊です。
モフモフはなぜ可愛いのか―動物行動学でヒトを解き明かす―』(小林朋道・著)は、2007年以来続くロングセラーシリーズ『先生、〇〇が××しています!』(築地書館)で知られる鳥取環境大学の小林朋道教授が、謎だらけのヒトの行動を動物行動学の視点から解き明かします。モフモフしたものが可愛い理由から、いじめや自爆テロなど物騒なものまで、動物なのに謎だらけのヒトの本性に迫ります。
2024/02