新潮新書
何ごともよく動く年に
2024年が明けました。竜の年というのは何ごとにつけ物事がよく動き、権力にも変動の多い年だといわれます。アメリカの大統領選挙、戦争、パンデミックや温暖化のように世界的なニューストピックにはなりにくいものの、水面下で静かに進行している病があります。「10代のメンタル」がそれで、現在が史上最悪という声もあるそうです。
便利で快適なライフスタイルを追い求めてきたはずなのに、一体どうしてなのか、70万部超のベストセラー『スマホ脳』の著者アンデシュ・ハンセン氏は、その理由を、日進月歩で進化していく技術とは裏腹に、ヒトの脳は1万年前にサバンナで暮らしていた頃と何ら変わっておらず、とにかく生き延びるため、刺激があるたびにいちいち反応しては不安になるのだといいました。
1月新刊『メンタル脳』はハンセン氏が、そんな「自分の脳との付き合い方」をやさしく教える待望の書。ユニセフによると、現在10代の7人に1人がメンタルヘルスに何らかの問題を抱え、アメリカでは「国家的危機」と警鐘が鳴らされているとか。日本でも高校生の30%、中学生の24%、小学4~6年で15%が中等度以上のうつ症状に悩まされているとの報告があり、人間関係、成績、SNSなど、10代女子がうつにかかる割合は男子のじつに3倍にものぼるそうです。メンタルという待ったなしの世界的危機を前に、一人一人が何をできるのか、心が少し軽くなる処方箋です。
1990年代、メディアの王様とうたわれたテレビも今やその栄光に翳りが見えています。2020年に初めて広告収入トップの座をネットに譲り、以降もその差は広がるばかり。若者から「オワコン」と軽んじられ、全国の地上民放局20社が赤字(2022年度)。下り坂に入ったテレビ界はこの先どうなるのか、メディア戦略はどうあるべきか――『テレビ局再編』(根岸豊明・著)では、在京キー局と地方局の元経営幹部がテレビの歴史を振り返りながら、2030年~2040年代の放送界の未来を予想します。
ランキングは用いる指標しだいで様々に変わるものですが、「どこが優秀な農業県なのか」を割り出したのが『日本一の農業県はどこか―農業の通信簿―』(山口亮子・著)。主な指標にしたのは、都道府県の農業産出額を農業関連に投入された予算額で割り出した数値で、これによって、その県の農業の「コスパ」が分かります。その結果、北関東にある意外な県が「日本最強の農業県」であることが判明。それ以外にも労働生産性や土地生産性、大規模農家への土地集積率などから見たランキングも算出。カロリーベースの自給率や補助金付けの産業構造など、日本農業全体の問題も浮き彫りにした傑作レポートです。
恐竜学者が最もギクリとする質問、それが「いちばんつよいきょうりゅうは?」という無邪気な子どもの問いです。誰でも思い当たるのはティラノサウルスですが、何せ6600万年前に絶滅した生きものたち、巨大な体、骨をも砕く強靭なアゴ、ボルト並みのスピード――でも、かれらに迫る手掛かりは「化石」のみなのです。『最強の恐竜』(田中康平・著)では、発掘を重ね、計測し、理論とアイデアを駆使することで様々な謎が解き明かされます。気鋭の恐竜学者がユーモアを交えて綴る、キング・オブ・キング決定記です。
一宗教団体であるにもかかわらず、創価学会は政権与党である公明党の後ろ盾として、国家の政策を左右する存在になりました。しかし、国民の7人に1人が会員ともいわれる巨大勢力であるにもかかわらず、その全容はあまりにも知られていません。『完全版 創価学会』(島田裕巳・著)では、発足以降の歴史、急拡大の背景と公明党の役割、そして池田大作という絶対的なカリスマ亡き後、いったいどこへ向かうのか、客観的な研究者の視点から明快に読み解きます。
末尾ながら、本年も新潮新書をどうぞよろしくお願いいたします。
便利で快適なライフスタイルを追い求めてきたはずなのに、一体どうしてなのか、70万部超のベストセラー『スマホ脳』の著者アンデシュ・ハンセン氏は、その理由を、日進月歩で進化していく技術とは裏腹に、ヒトの脳は1万年前にサバンナで暮らしていた頃と何ら変わっておらず、とにかく生き延びるため、刺激があるたびにいちいち反応しては不安になるのだといいました。
1月新刊『メンタル脳』はハンセン氏が、そんな「自分の脳との付き合い方」をやさしく教える待望の書。ユニセフによると、現在10代の7人に1人がメンタルヘルスに何らかの問題を抱え、アメリカでは「国家的危機」と警鐘が鳴らされているとか。日本でも高校生の30%、中学生の24%、小学4~6年で15%が中等度以上のうつ症状に悩まされているとの報告があり、人間関係、成績、SNSなど、10代女子がうつにかかる割合は男子のじつに3倍にものぼるそうです。メンタルという待ったなしの世界的危機を前に、一人一人が何をできるのか、心が少し軽くなる処方箋です。
1990年代、メディアの王様とうたわれたテレビも今やその栄光に翳りが見えています。2020年に初めて広告収入トップの座をネットに譲り、以降もその差は広がるばかり。若者から「オワコン」と軽んじられ、全国の地上民放局20社が赤字(2022年度)。下り坂に入ったテレビ界はこの先どうなるのか、メディア戦略はどうあるべきか――『テレビ局再編』(根岸豊明・著)では、在京キー局と地方局の元経営幹部がテレビの歴史を振り返りながら、2030年~2040年代の放送界の未来を予想します。
ランキングは用いる指標しだいで様々に変わるものですが、「どこが優秀な農業県なのか」を割り出したのが『日本一の農業県はどこか―農業の通信簿―』(山口亮子・著)。主な指標にしたのは、都道府県の農業産出額を農業関連に投入された予算額で割り出した数値で、これによって、その県の農業の「コスパ」が分かります。その結果、北関東にある意外な県が「日本最強の農業県」であることが判明。それ以外にも労働生産性や土地生産性、大規模農家への土地集積率などから見たランキングも算出。カロリーベースの自給率や補助金付けの産業構造など、日本農業全体の問題も浮き彫りにした傑作レポートです。
恐竜学者が最もギクリとする質問、それが「いちばんつよいきょうりゅうは?」という無邪気な子どもの問いです。誰でも思い当たるのはティラノサウルスですが、何せ6600万年前に絶滅した生きものたち、巨大な体、骨をも砕く強靭なアゴ、ボルト並みのスピード――でも、かれらに迫る手掛かりは「化石」のみなのです。『最強の恐竜』(田中康平・著)では、発掘を重ね、計測し、理論とアイデアを駆使することで様々な謎が解き明かされます。気鋭の恐竜学者がユーモアを交えて綴る、キング・オブ・キング決定記です。
一宗教団体であるにもかかわらず、創価学会は政権与党である公明党の後ろ盾として、国家の政策を左右する存在になりました。しかし、国民の7人に1人が会員ともいわれる巨大勢力であるにもかかわらず、その全容はあまりにも知られていません。『完全版 創価学会』(島田裕巳・著)では、発足以降の歴史、急拡大の背景と公明党の役割、そして池田大作という絶対的なカリスマ亡き後、いったいどこへ向かうのか、客観的な研究者の視点から明快に読み解きます。
末尾ながら、本年も新潮新書をどうぞよろしくお願いいたします。
2024/01