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特集【恋人の聖地】原田マハ/大沼紀子/千早 茜/窪 美澄/柴門ふみ/三浦しをん/瀧羽麻子

小説新潮 2012年12月号

(毎月22日発売)

943円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2012/11/22

発売日 2012/11/22
JANコード 4910047011227
定価 943円(税込)

特集【恋人の聖地】

「サラダ記念日」の例を引くまでもなく、惹かれ合う二人にとっては、どんな小さな出来事も特別になる。大したことのない日常も毎日が記念日だし、一緒に行動すればすべてがメモリアルプレイスだ。一人で訪れた土地でも、相手を想った瞬間があれば忘れがたい場所となるだろう。

人の数だけ思い出があるように、恋愛の数だけエピソードがあり、その舞台がある。北は北海道から南は九州まで、様々な風景ではぐくまれた、七つの恋人たちの物語。

◆原田マハ/幸福駅 二月一日(北海道帯広市)
――黒いコートに黒い帽子。吹雪の中現われたその人は、夢を運んできてくれた。でも、またきて、とはなぜか言えなかった

◆大沼紀子/たわいもない祈り(千葉県富津市)
――飲み仲間から、突然海へのお誘いが。とまどう佑未子だったが、煮え切らない関係に終止符を打ちたい思いもあり……

◆千早 茜/しらかんば(長野県南佐久郡佐久穂町)
――もう二十年近くも前、白樺の林で出会った女の人。長い髪に白い肌。女神と思っていたその人が今、目の前にいるのか

◆窪 美澄/たゆたうひかり(長野県諏訪郡下諏訪町)
――残業して終電で帰り、コンビニのビールをあおる日々。久々に帰った故郷で見かけた元同級生のことは、記憶にもなかった

◆柴門ふみ/テレビ塔の奇跡(愛知県名古屋市)
――高校時代、幼なじみからプロポーズされた歌奈子。東京で就職し、慌しい生活に追われる彼女が故郷で再会したのは……

◆三浦しをん/聖域の火(広島県廿日市市)
――豆腐好きの天狗が住むというだけの理由で、弥山を選んだ。週末ごとの旅は、正直辛い。でもやめられない理由があった

◆瀧羽麻子/トキちゃん(熊本県阿蘇市)
――本当は彼女と旅行するはずだったんだ。それが、なんで、ばあちゃんと――阿蘇の山中で、時間がゆっくり巻き戻る

【新連載スタート】
◆平岩弓枝/私家本 椿説弓張月
――滝沢馬琴の出世作に、当代随一の作家が新たな命を宿す。時を越えて、弓の名手・源為朝の活躍奇譚、いよいよ幕開け!

【好評連載小説】
赤川次郎/月光の誘惑
飯嶋和一/星夜航行
熊谷達也/海峡の絆 最終回
今野 敏/宰領 隠蔽捜査5
佐々木 譲/獅子の城塞
柴田よしき/底のないポケットVI 名前のない古道具屋の夜
白川 道/神様が降りてくる
新城カズマ/島津戦記
杉山隆男/メイのいない五月
仙川 環/マテリアル・ライフ
西村京太郎/十津川警部 新宮に徐福伝説の謎を追う 最終回
野中 柊/波止場にて
はらだみずき/ここからはじまる
藤田宜永/風屋敷の告白 還暦探偵
誉田哲也/ドンナ ビアンカ 最終回
向田邦子 原作 烏兎沼佳代 構成/続・寺内貫太郎一家
山本一力/べんけい飛脚

【連載エッセイ】
北村 薫/うた合わせ
酒井順子/地震と独身
佐藤 優/落日の帝国 プラハの憂鬱
高山なおみ/今日もいち日、ぶじ日記
中野 翠/いちまき ある家老の娘の物語
ペリー荻野/ちょんまげ ザ・バトル
宮城谷昌光/随想 春夏秋冬
山田詠美/熱血ポンちゃんから騒ぎ

次号予告/編集後記

編集長から

いざ、「巡礼」の旅へ
「『この味がいいね』と君が言ったから七月六日はサラダ記念日」という歌が、今でもスタンダードとして例に挙がるのは、誰でも「わかる!」と共感する普遍性を備えているからだろう。
 どんな些細なことでも、親密な二人の間ではすべてが特別になるし、一方通行の想いであっても、思い入れが強ければ、すべてがメモリアルだ。
 場所にも同じことが言える。どんな場所でも、二人にとって特別な出来事があれば、そこは「聖地」となる。何事も起こらず、密かな決意をしただけだって構わない。
 おそらく、誰にでもそういう経験や場所の一つや二つはあるのではないだろうか。今回の特集は、七つの風景を舞台に、七つの恋愛模様をお届けする。読めばきっと、小説の舞台を訪ねてみたくなるのはもとより、同時に、自分にとっての「聖地」巡礼をしてみたくなるかもしれない。


小説新潮編集長 新井久幸

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小説新潮とは?

 小説新潮は戦後まもない一九四七年に創刊されました。以来、文学史に名をとどめる作家で、小説新潮に登場したことのない名前を探すほうが困難なほど、数多の文豪、巨匠、新進気鋭による名作、名シリーズが誌面を飾ってきました。

 時代は変わり、新しい作家、若い書き手も次々に現れます。変わらないのは「小説を読む楽しみ」を大切にすること。現代小説、時代小説、ミステリー、恋愛、官能……。ジャンルにこだわらず、クオリティの高い、心を揺り動かされる小説を掲載していきます。

 小説と並ぶ両輪が、エッセイと豊富な読物です。小説新潮では、毎号、ボリュームのある情報特集や作家特集を用意しています。読み応えは新書一冊分。誰かに教えたくなる情報が、きっとあります。

 目指すのは、大人の小説、大人の愉しみが、ぎっしり詰まった雑誌です。経験を重ね、人生の陰翳を知る読者だからこそ楽しめる小説、今だからこそ必要とされる情報を、ぎっしり詰め込んでいきたい。

 言葉を換えれば、「もうひとつの人生を体験する小説誌」。時には主人公たちの息遣いに寄り添い、またある時には人生の新たな側面を見つけるささやかなヒントになれば――そう願っています。
 ほんの少しかもしれませんが、小説新潮で毎月の生活がきっと変わるはずです。

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