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その詩は、いまも私たちのとなりに。谷川俊太郎がさいごに編んだ文庫詩集が刊行。


 虚空に詩を捧げる/形ないものにひそむ/原初よりの力を信じて(「詩の捧げ物」)。
 2024年11月13日、詩人・谷川俊太郎さんが逝去されました。最新文庫『ベージュ』は、谷川さんがさいごに編んだ文庫詩集であり、単行本刊行時に未収録の作品から谷川さんが自ら掲載する詩を選び書き下ろしを加えた作品でもあります。
 日本人の想いを代弁し、寄り添い、共にうたい、声を上げつづけた詩人、谷川俊太郎。本作には声優の斉藤壮馬さんの解説が収録されています。
「かつて子供だったあのころ、言葉以前の感覚で確かに感じていたあの世界のきらめきを、ぼくはこの詩たちから間違いなく感じとったのだ。それは誰にも譲れないぼくだけの宝物であり、ぼくだけの詩なのだ」(「解説」より一部抜粋)
 生前、斉藤さんの解説をお読みになった谷川さんは「とても面白かったです、ありがとう」という言葉をのこされています。
 また、装幀のウサギのモデルは、谷川さんが晩年傍に置かれていたぬいぐるみです。「アバターとかあるでしょ。これ、そういう感じで。こういうものがあるほうがいいんですよ、年寄りは」。そうおっしゃっていた谷川さんについて、尾崎真理子さんは『詩人なんて呼ばれて』(新潮文庫)の中でこう書かれています。「そうか、子ウサギにこころを乗せれば、いつでも、どこまでも、バーチャルな旅に出られる。それが詩人。......凄い」。
 谷川さんがこころを乗せた子ウサギは、いま谷川さんの遺した詩集のうえで、谷川さんが「顔は割といいんですよね」と言っていた印象的な黒い瞳で、まっすぐに前を見つめています。
 その詩は、いまも私たちのとなりに――。谷川さんが遺したことばのおくりものを、新潮文庫よりお届けいたします。

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2024年12月15日   今月の1冊
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