千葉雅也「デッドライン」(230枚)
特集 江藤淳 没後二〇年
新潮 2019年9月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2019/08/07 |
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JANコード | 4910049010990 |
定価 | 特別定価998円(税込) |
◆デッドライン[二三〇枚]/千葉雅也
線上で僕は悩む。動物になることと女性になることの間で。哲学者から小説家への鮮やかな生成変化。21世紀の『仮面の告白』、誕生!
◆われもまた天に/古井由吉
考えてみれば、私は若い人たちにとって、また会えるかどうかの人間である。改元の初夏。
◆行列/津村記久子
「あれ」を見ないのは人生の損――。十二時間に及ぶ大行列に、社会の縮図が浮かび上がる。
◆暗い林を抜けて[一二〇枚]/黒川 創
愛という言葉を必要とするとき、たぶん私たちは、すでに、それを失いかけているのだ。
◆全然[新連載第二回]/滝口悠生
◆消えた墓場/瀬戸内寂聴
◆シャトー=シノン/松浦寿輝
◆プリニウス(六十一)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆漂流(七)/町田 康
◆チェロ湖(八)/いしいしんじ
◆ヒロヒト(十一)/高橋源一郎
◆ビッグ・スヌーズ(十九)/矢作俊彦
第52回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
◆特集 江藤淳 没後二〇年
【講演】戦後批評の正嫡 江藤淳/上野千鶴子
【講演】江藤淳になりたかった/高橋源一郎
【評論】妖刀の行方/福田和也
【対談】ジェントルマンの野蛮な批評/苅部 直、平山周吉
【新連載】OH MY GOD/エリイ(Chim↑Pom)
第1回“不道徳な病”
■■ リレーコラム ■■
Passage――街の気分と思考(3)
◆ダブリンの声/柴崎友香
◆靴と指ぬき/谷崎由依
◆嶽本野ばらは気高き理想という旗を掲げる――『純潔』論/川本 直
◆保田與重郎の文学(十二)/前田英樹
◆これは小説ではない(十六)/佐々木 敦
◆水戸学の世界地図(四十二)/片山杜秀
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第七十七回・高所順応の旅
◆見えない音、聴こえない絵(一七七)/大竹伸朗
■■ 新潮 ■■
◆写真には写らない赤/尾崎世界観
◆情念のモンスターを手なずける/相馬千秋
◆二一世紀トルコ、イスタンブールのモスク事情/宮下 遼
◆「かなわない」その後/植本一子
◆橋本治さんの恵み/仲俣暁生
■■ 本 ■■
◆金原ひとみ『アタラクシア』/彩瀬まる
◆ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』/いしいしんじ
◆綿矢りさ『生のみ生のままで』/江南亜美子
◆町屋良平『愛が嫌い』/大前粟生
◆小川洋子・堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』/小竹由美子
◆柴崎友香『待ち遠しい』/メレ山メレ子
この号の誌面
立ち読み
編集長から
同性愛・哲学・生存
千葉雅也「デッドライン」
◎千葉雅也「デッドライン」(二三〇枚)は、現代日本の知的シーンを牽引する哲学者の初小説だ。冒頭から読者は度肝を抜かれるだろう。舞台は、ゲイたちが一夜のパートナーを求めて集うハッテン場。まるで「珊瑚の周りに形成される生態系」を魚が回遊するように、主人公の青年は男を求め/男に求められ、闇のなかをクルーズする。主人公は大学院に進んだばかりの若き学生でもある。哲学と格闘し、苦悩している。哲学の徒にとって、思考することは生きることと同義だ。そして主人公にとって、ゲイであることも生きることと同義なのだ。この二つの生存の主題が融合した瞬間、日本文学の新境地というべき作品が誕生した。その悦びを読者と共有したい◎特集「没後二〇年 江藤淳」では、上野千鶴子氏と高橋源一郎氏の講演を収録。さらに、福田和也氏の評論、苅部直氏と平山周吉氏の対談を掲載する。没後二〇年を迎えた今、知の巨星を再発見していただきたい。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。