天童荒太「いまから帰ります」(150枚)
特集 あいちトリエンナーレ・その後
新潮 2020年2月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2020/01/07 |
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JANコード | 4910049010204 |
定価 | 特別定価1,200円(税込) |
◆いまから帰ります[一五〇枚]/天童荒太
あの地で働く男たちの一夜に起こった奇跡とは? 震災後日本のエッジを照射する新境地。
◆カロンテ/吉本ばなな
ローマ、最高の親友が死んだ街――失われた存在を求め、再生を希う「私」は旅に出た。
◆水のにおい/桐野夏生
老母の死をきっかけに、母と娘の複雑な関係は静かに移ろう。取り残された愛憎の行方。
◆かれのこえ/町屋良平
彼女はその演奏を聴き、これから恋をして、失恋することがわかってしまった気がした。
◆渦巻き/日和聡子
私はどこに行き着くのだろうか? 作品完成を追い求める画家の、渦巻く意識の運命劇。
◆掌篇三作/黒田夏子
◆ミチノオク 第二回 貞山堀/佐伯一麦
◆パリ十五区/松浦寿輝
◆プリニウス(六十五)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆全然(六)/滝口悠生
◆漂流(十)/町田 康
◆チェロ湖(十二)/いしいしんじ
◆ヒロヒト(十六)/高橋源一郎
◆ビッグ・スヌーズ(二十三)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(四十七)/重松 清
第52回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
【特集】あいちトリエンナーレ・その後
◆次にバトンを渡すために/津田大介
◆賽は投げられた/小田原のどか
◆芸術のポリティカル・プラクティス/藤井 光
◆声枯れるまで/ホンマエリ(キュンチョメ)
◆〈反歌〉についてのノート/高嶺 格
◆
◆Jアート・コールセンターの試み/高山 明
◆アート界の“規制”事実/小泉明郎
◆私的、表現の不自由/市原佐都子
◆いつかボイコットをするかもしれない誰かのために/田中功起
◆The Clothesline――様々な抗議のかたち/モニカ・メイヤー(田村かのこ訳)
◆ボイコットをボイコットする――トリエンナーレの齟齬/椹木野衣
◆決定的瞬間の記憶/野田康文
――芥川龍之介『藪の中』の時空間
◆色にあらず/佐久間裕美子
――差別する、差別される日本人
◆石牟礼道子と渡辺京二/米本浩二
不器用な魂の邂逅(2)
【リレーコラム】Passage――街の気分と思考(7)
◆ベルリン 記憶の街/柴崎友香
◆レジデンシー・イン・京都/谷崎由依
◆OH MY GOD/エリイ(Chim↑Pom)
第五回・乳と蜜の流れる地
◆保田與重郎の文学(十六)/前田英樹
◆水戸学の世界地図(四十六)/片山杜秀
◆小林秀雄(六十)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第八十一回・全身検査
◆見えない音、聴こえない絵(一八一)/大竹伸朗
■■ 本 ■■
◆小林エリカ『トリニティ、トリニティ、トリニティ』/卯城竜太
◆高尾長良『音に聞く』/小沼純一
◆古市憲寿『奈落』/平山周吉
◆平倉圭『かたちは思考する』/福永 信
■■ 新潮 ■■
◆スモーク・オン・ザ・ウォーター、アンド・ファイア・イン・ザ・スカイ。/田口賢司
◆レシピをめぐる冒険/遠藤雅司
◆犬と散歩をした話/高瀬隼子
この号の誌面
立ち読み
編集長から
天童荒太「いまから帰ります」
特集 あいちトリエンナーレ・その後
◎天童荒太「いまから帰ります」(一五〇枚)は、震災後を生きる人たち、「復興」にかかわる人たちの複数の生を立体的に描き出した。主人公は高校時代に震災を体験し、親族を喪い、今は福島で除染作業に従事する青年。現場には様々な出自、国籍の就労者がいる。当然、彼らには家族や大切な人がいて、一人一人が切実に生きている――その生の複数性の実感を作者は真摯に掴みだす。映画監督・伊丹万作の一節「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」(「戦争責任者の問題」)が引用されているように、だます者/だまされる者への怒りを作者は抱えているだろう。だが同時に、いまだ心の傷の癒えない者、無念の死を遂げた者を慈しむ思いが作者の筆を突き動かしているのだ◎特集「あいちトリエンナーレ・その後」では、津田大介芸術監督ほかの当事者を中心に貴重な寄稿・談話を得た。刻一刻と新事態が出現する「表現の自由」は文芸誌の問題でもある。
新潮編集長 矢野 優
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。