黒川 創「ウィーン近郊」(200枚)
対談 佐々木 敦+高橋源一郎「小説という『ジャンルX』」
新連載 片山杜秀「大楽必易――わたくしの伊福部昭伝」
新潮 2020年10月号
(毎月7日発行)
発売日 | 2020/09/07 |
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JANコード | 4910049011003 |
定価 | 1,100円(税込) |
◆ウィーン近郊[二〇〇枚]/黒川 創
この街に四半世紀住み続けてきた兄は、帰国の予定がありながら、なぜ自死の道を選んだのか。兄と報せを受けた妹の、人生の軌跡。
◆一日の終わり/藤野可織
◆聖都創造[新連載第三回]/天童荒太
◆プリニウス(七十一)/ヤマザキマリ+とり・みき
■■ 連載小説 ■■
◆天使も踏むを畏れるところ(四)/松家仁之
◆曼陀羅華X 2004(八)/古川日出男
◆全然(十四)/滝口悠生
◆チェロ湖(十九)/いしいしんじ
◆ヒロヒト(二十三)/高橋源一郎
◆ビッグ・スヌーズ(三十一)/矢作俊彦
◆荒れ野にて(五十五)/重松 清
■■ 新潮 ■■
◆遅いからだ/ハラサオリ
◆粒を見る/増村十七
◆壁と戯れ、声と運命/松原俊太郎
第52回《新潮新人賞》予選通過作品発表
第53回《新潮新人賞》応募規定
【選考委員】大澤信亮/小山田浩子/鴻巣友季子/田中慎弥/又吉直樹
◆【対談】小説という「ジャンルX」/佐々木 敦 高橋源一郎
一体全体、小説とは何なのか? 詩・批評との比較の果てに、新たな定義が立ち上がる!
◆小説、最も甚だしい錯覚/鴻巣友季子
――佐々木敦『これは小説ではない』を読む
◆【新連載】大楽必易――わたくしの伊福部昭伝/片山杜秀
20代の若者が70代の現代音楽家の許に通い詰めて聞いた言葉により綴る――画期的評伝!
◆小津安二郎[新連載第三回]/平山周吉
◆コロナの認識論(四)/養老孟司
◆あの頃何してた?(四)/綿矢りさ
◆能十番 日英現代語訳/いとうせいこう ジェイ・ルービン
第四回・井筒
【リレーコラム】Passage――街の気分と思考(15)
◆マニラ 子供たちの路上/柴崎友香
◆ある散歩/谷崎由依
◆OH MY GOD/エリイ(Chim↑Pom)
第十三回・にんげん
◆保田與重郎の文学(二十四)/前田英樹
◆小林秀雄(六十八)/大澤信亮
◆地上に星座をつくる/石川直樹
第八十九回・クーラーはつけない
◆見えない音、聴こえない絵(一八九)/大竹伸朗
■ 本 ■■
◆村上春樹『一人称単数』/河合俊雄
◆石原 燃『赤い砂を蹴る』/今福龍太
◆川端康雄『ジョージ・オーウェル』/小山太一
◆柴崎友香『百年と一日』/阿久津隆
◆スティーヴン・ミルハウザー『ホーム・ラン』/小山田浩子
この号の誌面
立ち読み
編集長から
黒川創「ウィーン近郊」(二〇〇枚)
◎黒川創「ウィーン近郊」(二〇〇枚)は、ひとりの死者をめぐる、残された者たちの物語だ。舞台はウィーン。この街に四半世紀住み続けてきた兄・西山優介の突然の自死の報せを受け、妹・奈緒は幼い息子とともに現地に駆けつけた。兄は帰国予定があり、しかも当日にはウィーン空港にまでたどり着いていたのに、なぜ……。だが、その「なぜ」を著者は安易に描くことを決してしない。奈緒や日本大使館領事の視点、関係者の言葉、兄が暮らしたオーストリアの歴史などを重層的に交え、ある在外邦人の死を繊細に弔うのだ。死者の肖像画を(背景もあわせて)丁寧に描くのだ。黒川氏の成熟した筆致に目を瞠った◎高橋源一郎+佐々木敦「小説という『ジャンルX』」は、批評する小説家と初小説を書いた批評家の濃密な対話。新連載・片山杜秀「大楽必易――わたくしの伊福部昭伝」は、日本を代表する現代音楽作曲家に私淑した片山氏にしか書けない決定的評伝になるだろう。
新潮編集長 矢野 優
松家仁之「天使も踏むを畏れるところ」 主要参考文献
(この小説は史実に基づいて書かれていますが、登場人物はすべて架空の人物です。)
- 『建設省二十年史』建設省二十年史編集委員会(社団法人建設広報協議会)
- 『現代建築をつくる人々』浜口隆一・村松貞次郎(KK世界書院)
- 『皇居造営 宮殿・桂・伊勢などの思い出』小幡祥一郎
- 『昭和天皇と田島道治と吉田茂 初代宮内庁長官の「日記」と「文書」から』加藤恭子(人文書館)
- 『ワシントンハイツ ―GHQが東京に刻んだ戦後―』秋尾沙戸子(新潮文庫)
- 「工芸ニュース」1949年6月号 商工省工芸指導所(技術資料刊行会)
- 『皇室建築 内匠寮の人と作品』監修 鈴木裕之(建築画報社)
- 『日本の建築 その芸術的本質について I』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『日本の建築 その芸術的本質について II』吉田鉄郎 薬師寺厚訳(東海大学文化選書)
- 『侍従長の遺言 昭和天皇との50年』徳川義寛 聞き書き・解説 岩井克己(朝日新聞社)
- 『日本軍兵士──アジア・太平洋戦争の現実』吉田裕(中公新書)
- 『私のなかの東京』野口冨士男(文藝春秋)
- 『完本 皇居前広場』原武史(文春学藝ライブラリー)
- 『東京都市計画物語』越澤明(ちくま学芸文庫)
- 『関東大震災 大東京圏の揺れを知る』武村雅之(鹿島出版会)
- 『外濠 江戸東京の水回廊』法政大学エコ地域デザイン研究所編(鹿島出版会)
- 『建築の心と技 村松貞次郎対談集――1』(新建築社)
- 『建築をめぐる回想と思索 キサデコールセミナーシリーズ2』聞き手・長谷川堯(新建築社)
- 『硫黄島クロニクル 島民の運命』全国硫黄島島民の会
- 『建築探偵の冒険』藤森照信(ちくま文庫)
- 『昭和天皇実録 第十一』宮内庁(東京書籍)
- 『秩父宮 昭和天皇弟宮の生涯』保阪正康(中公文庫)
- 「新建築 1982年7月臨時増刊 桂離宮」(新建築社)
- 『宮殿をつくる』高尾亮一(求龍堂)
- 『皇居』入江相政(保育社)
- 『入江相政日記 第五巻』入江為年監修(朝日文庫)
- 『侍従とパイプ』入江相政(中公文庫)
- 『こんなに面白い東京国立博物館』新潮社編 東京国立博物館監修
- 『探検! 東京国立博物館』藤森照信・山口晃(淡交社)
- 『カイコの病気とたたかう』鮎沢啓夫(岩波科学の本)
- 『皇后陛下傘寿記念 皇后さまとご養蚕』宮内庁協力(扶桑社)
- 『フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル』明石信道 文・実測図面 村井修 写真(建築資料研究社)
- 『日本鉄道旅行地図帳 歴史編成 満洲樺太』監修 今尾恵介・原武史(新潮社)
- 「芸術新潮」2008年8月号「大特集 北京」(新潮社)
- 『完訳紫禁城の黄昏』上・下 R.F.ジョンストン 中山理 訳 渡部昇一 監修(祥伝社)
- 『漱石紀行文集』藤井淑禎 編(岩波文庫)
バックナンバー
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雑誌から生まれた本
新潮とは?
文学の最前線はここにある!
人間の想像力を革新し続ける月刊誌。
■「新潮」とはどのような雑誌?
「新潮」は日露戦争の年(1904年)に創刊された、百歳を超える文芸誌です。現役の商業文芸誌としては世界一古いという説があります(ただし第二次大戦中は紙不足のため数号、関東大震災のときは1号だけ休刊)。その歴史の一端は小誌サイト内にある〈表紙と目次で見る「新潮」110年〉でご覧ください。
■革新し続ける文学の遺伝子
もちろん古いことと古臭いことはまったく別です。百余年にわたり、たえず革新を続けてきたことこそが「新潮」の伝統であり、その遺伝子は現編集部にも確実に引き継がれています。ケータイ小説やブログ、あるいは電子配信、電子読書端末まで、いまだかつてない〈環境変動〉がわたしたちの生に及びつつある今、時代精神を繊細に敏感に感じ取った小説家、批評家たちが毎月、原稿用紙にして計1000枚以上(単行本にして数冊分)の最新作を「新潮」を舞台に発信し続けています。
■日本語で表現されたあらゆる言葉=思考のために
デビュー間もない20代の新人からノーベル賞受賞作家までの最新作がひとつの誌面にひしめきあうのが「新潮」の誌面です。また、文芸の同時代の友人である音楽、映画、ダンス、建築、写真、絵画などの領域からも、トップクラスの書き手、アーティストが刺激的な原稿を毎号寄せています。文芸を中心にしっかりと据えながら、日本語で表現されたあらゆる言葉=思考の力を誌面に結集させたい――それが「新潮」という雑誌の願いです。